「アクロス・ザ・ユニバース」 - 2008.08.14 Thu
そして、やっと観た。よかった。よかったよ~!
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(c) 2007 Revolution Studios Distribution Company,LLC. All Rights Reserved. |
ストーリーは、ベトナム戦争や公民権運動(アメリカの黒人たちが平等な地位を求めて起こした運動で、運動のシンボル的存在のキング牧師は有名。映画でも彼のニュースが出てくる。)をからめて、若者たちの恋と人生を描く、割合とオーソドックスなもの。
1960年代が舞台なので、なんで? 古いなあ、と思う人もいるはず。
でも、考えてみると、ビートルズが活躍したのも1960年代が中心。その曲は、歌詞も含めて、1960年代の空気がフィットして、物語を作りやすかったのかもしれない。
ビートルズの曲を、どのように使うのか。つまり、歌詞がストーリーに合うように持ってこられるのか。ビートルズの曲そのままではなく、どのような編曲をしているのか。その点は大きな興味が生まれる。
そして、それは、とても上手くいっていたと思う。それ自体がパワーをもつビートルズの曲を使うのは、下手をすると、曲だけが目立ってしまう恐れがあるのだが、それが違和感なくストーリーの中に溶け込んでいる。
ビートルズの、どの曲が、どんなふうに使われるか、これから映画を観るから知りたくないという方は、この先、読まないほうが。
“Girl”「ガール」で始まり、怒涛(どとう)の33曲が洪水のように押し寄せる!(輸入盤のデラックスエディションには31曲入ってるのだが、あとの2曲は何だっけ! すごく知りたい!)
CDを初めて聴いたとき、ジュード(ジム・スタージェス)の歌声が巻き舌っぽいというか、ねちょっとした(?)曲もあるのに気づいたが、それも個性で、すぐ慣れる。
映画では、プルーデンス役のT・V・カーピオ(テレサ・ビクトリア・カーピオ。私がまったく知らなかった女優さんである)が歌う“I Want to Hold Your Hand”「抱きしめたい」で、まず泣けた。チアガールの格好で、片思いな気持ちを歌っているのだが、彼女の少しハスキーの入った声が切なくて、きれいで素敵だ。
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ルーシー(エヴァン・レイチェル・ウッド)の素直できれいな歌声も好き。“Hold Me Tight”「ホールド・ミー・タイト」、“It Won't be Long”「イット・ウォント・ビー・ロング」の楽しさ、“If I Fell”「恋におちたら」の透明感にある美しさ…。
私は、男性ボーカルより女性ボーカルのほうが好きな傾向にあるが、今回も同じ。そのなかでも、ラブソングの美しさが心にしみた。
ビートルズを知っているとニヤニヤしてしまうネタも多い。箇条書きにしてみると…。
・給料係のおじいちゃんが、64歳…と言った。「64歳になったら」という曲“When I'm Sixty Four” 「ホエン・アイム・シックスティー・フォー」を、おじいちゃんが歌い出すんじゃないかと思った。(が、歌わなかった…。)
・大家さんでもあるセディがマックス(マックスウェル)を見て「ハンマーで人を殺しそう…」などと言った。“Maxwell's Silver Hammer”「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」という曲があるのだ。
・ドクター・ロバート(演じるのは、U2のボノ)の名前自体が曲名“Doctor Robert”「ドクター・ロバート」からで、一行のバス旅行はビートルズのテレビ映画「マジカル・ミステリー・ツアー」みたい。
・ビートルズが行なった屋上ライブをやっている。
ほかにもあると思うけど、思いださないので、とりあえず、こんなところで。
テイモア監督の面目躍如たる、映像の面白さ。
いちばん面白いのは、徴兵検査の場面で“I Want You (She's So Heavy)”「アイ・ウォント・ユー」を使ってくる。
あなたが欲しい、というラブソングのはずが、おまえを「兵隊に」欲しい、という意味にしたアイデア。カリカチュア(風刺化)された検査者と兵隊候補者の集団ダンスは、軍隊の規律をも感じさせて皮肉いっぱい。
She's So Heavy(彼女は、すごくヘビーだぜ)という歌詞の部分に来ると、なんと自由の女神を背負う。彼女は重い(ヘビー)! 自由のために?祖国のために?戦う兵隊。これは、すごい表現。
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“Strawberry Fields Forever”「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」では、ジュードがイチゴ(ストロベリー)を壁に刺して並べる。(作り物の赤い)果汁がたれてきて、まるで血を流すようなビジュアル。ジュードの心のうちを表現し、アート的でもあり、センスの良さにうなる。
ミスター・カイト(演じるのはコメディアンのエディ・イザード)が“Being for the Benefit of Mr. Kite!”「ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト」を歌う場面は、サーカス風で遊び心満載だ。
他にも、“Dear Prudence”「ディア・プルーデンス」での青空などの表現、コラージュ風映像、仮装…ユニークな映像には見飽きることがない。
サルマ・ハエックも、セクシー看護師で特別出演。観ているとき、気づかなかった…。
ラストは、もろに私好み。ベタなんだけど、いいよね。
ジュードが“All You Need Is Love”「愛こそはすべて」を歌ったとき、私は「ムーラン・ルージュ」でユアン・マクレガーがこの歌を歌ったのを、ちょっと思い出していた。
愛がすべて。これはやはり、メッセージとしてもガツンとくる内容です!
そしてエンドロールは、ボノが歌う“Lucy in the Sky with Diamonds”「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」。ヒロインがルーシーだから、絶対この曲はあると思ってた。最後にやってくれた。
ビートルズが好きなら、曲の斬新な生まれ変わり方や懐かしさに感動し、ビートルズを知らないなら、新しい曲を知る喜びがあったり、どこかで耳にしていて、あ、これもビートルズの曲なんだ!と新たに知ったりできるのではないか。
長くなったけど、ずっと読んでくれた方には感謝。All my loving, I will send to you.です。
もう1回、観に行きますよ。
(8月10日)
ACROSS THE UNIVERSE
2007年 アメリカ作品
監督 ジュリー・テイモア
出演 エヴァン・レイチェル・ウッド、ジム・スタージェス、ジョー・アンダーソン、デイナ・ヒュークス、マーティン・ルーサー・マッコイ、T・V・カーピオ
関連記事:
「アクロス・ザ・ユニバース(2回目)」
「アクロス・ザ・ユニバース(3回目)」
「アクロス・ザ・ユニバース(4回目)」
参考:アクロス・ザ・ユニバース@映画生活、ウーマン・エキサイト・シネマ
評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
No title
>まおさん
(あ、そういえば、アバの「マンマ・ミーア」もそのうち公開されますか…。)
もちろんビートルズは、だいたい全部知ってるはずなので、興味も大きかったのです。
でも、見ていて乗れない方もいると思いますよ。そういう方は合わないので、しょうがないんですね。
これも半年後(?)のDVDレンタルリストに入れておいてくださいね!
No title
詳説ありがとうございました。
感動が甦りました。
ぼくも“I Want You (She's So Heavy)”「アイ・ウォント・ユー」、
これにはやられました。
No title
今から仕事なのであとでゆっくーり読ませてもらいますね!!
サントラお気に入りで買ってから毎日聴いてまーす♪
No title
TBさせていただきました。
ビートルズの曲の使い方がどれもとても上手くて、この場面でこれを使うのか!という面白さもあり、とても楽しめる作品でした。
I want youは圧巻でしたね。
>えいさん
なんだかんだと書いてたら、長くなってしまいました。
どうせ書くなら、ちゃんと書きとめておきたいということで。
多少ネタばれしてますが…
また、遊びにきてくださいませ!
>migさん
私も買いました、サントラ。31曲入りの限定盤のほう、買いましたか?
ビートルズには、かなわないけど(一部を除いて)…とも思いながら聴いてます!
>ANDREさん
曲の使い方、うまかったですね。歌詞がストーリーに、ぴったりしていました。
マッカートニーより、レノンの曲のほうが多かったなあ、なんてことも考えました。
また遊びにきてくださいね!
No title
読ませて頂きました!
すごい、やっぱりファンの人の洞察力は素晴らしいですねー^^
>ビートルズが行なった屋上ライブを再現
そうだったんですね、
もう全編に渡る曲づかいのうまさに唸ります。
ビートルズの曲は不滅だけど
こんな新しいアレンジ、もう大好きですよ~。
そうそう、あとからサントラの出ラックバージョンある事を知って、
HMVで見つけたときは急いでて、パッと手に取って買っちゃったの、、、、
早まりました(泣)
どうしようデラックス版、欲しいよ~っ。
>migさん
ビートルズ好きの弊害で、どうしても、オリジナルのほうがいいなと思うことが多いんですよね。
私は山野楽器で、通常盤と限定盤が並んで置いてあったので、2バージョンあるのを知ったので、ラッキーでした。しかも限定盤は1枚しかなかったんです。(あとで補充したかもですが。)
限定盤を買って、通常盤は売っちゃうというのは、いかが?(笑)
はじめまして!
TBでは何度かお世話になっていますが、コメントは初めてです。
この映画良かったですねぇ。
"Dear Prudence"の青空好きでした!
私ももう一度見に行きたいと思ってます。
>maru♪さん
私は、3枚目の前売券をゲットしました。週末に3回目を観に行きますよ~。
めったにパンフレットも買わない私が、パンフとCDを買ってしまうとは…。
もしかしたら、今年ナンバー1映画になるかもです!?
斬新な
とても見応えありましたね。
でも、斬新なのにちゃんとハマってるのがスゴかったです。
どの曲のアレンジも違和感なく感じました。
ビートルズはやっぱり生まれる前から聴いてる感じですからね。
もう体に染み付いちゃってますね。
>miyuさん
楽しみにしていて、期待に応えてくれたとなると、これはもう、スゴイです。拍手。
万人受けはしませんけど…。
●
ボーさん、何と3回もご覧になったのですね!
おっしゃるとおり、自由の女神像の重さ・・・。
この表現すごく良かったです。
『I Want you』も良かったですね。
>とらねこさん
シネカノンでは9月5日までなので、土日以外観に行けない私は、もう観られないのですが。
こういうのを、「はまる」というんですね。ハマリましたー。
「ムーラン・ルージュ」「マルホランド・ドライブ」以来です、3回以上観に行ったのは。
「アクロス・ザ・ユニバース」良さそうですね。
「アクロス・ザ・ユニバース」良さそうですね。ボーさんが3回も観に行かれたなんて、益々、観たくなりますね。
全編、ビートルズナンバーなんて、ぜひ観たいところです。
結構、ビートルズ好きで聴いてました。
岡山では上映はないようなので、DVD鑑賞になりますが、必ず観ますよ。
こういう時、東京にお住まいの方って、いいな~って思いますね。
>チェズさん
それは残念ですね。都内でも上映劇場は3か所くらい?
東京の近くにいて、よかった…。
これほどハマッたのは、やはりビートルズ好きというのが、基本ですね。
麻薬みたいなものです。…やったことありませんけど!
No title
なるほど、これはもう一回観たくなる映画ですね♪
隣に座ってた女性は、始まってすぐに鼻をすすり始めたところをみると、リピーターだったんですね、きっと(^^
>kiyotayokiさん
始まってすぐに泣くなんて…素晴らしい人だ…!
観るほどに、ストーリーの見事な流れが分かります。ほとんど完璧です。私には。
いい映画、作ってくれましたよ~。テイモア監督っ!&出演者など関係者の皆さん!
やっと観ました
さすがに細かい部分までよ~く観てますね~
いかにこの作品が好きか、熱さが伝わってきました。
曲がいいのはもちろんの事、映像も負けずに独創性がありましたね。
「I Want You」の使い方は一番意外性があって面白かったです。
この作品、ボーさんに教えてもらって良かったです★
>YANさん
全部読んでいただきまして。
映像は、この監督らしい独創性ですね。
いまは「マンマ・ミーア!」病にかかっていますが、そのうち、これもまた見たくなると思います。
すっごくセンスが良かったですよね~
でも徴兵の「Iwantyou」は
実際の徴兵のポスターで使われているのを写真でみた事があったので
(映画でも使われてた、ポスターの中から手が出てくるアレ)
こうきたか!感は無かったです。
自由の女神がSO HEAVY~には驚きましたけど☆
プルーデンスは曲芸師のリタと上手くいったんでしょうか^^;
彼女はどんどん性別を超越して「妖精」ぽい雰囲気になっていったような。
>わさぴょんさん
センスの光る場面が、けっこうあったでしょう?
おお、実際にあんなポスターがあったんですか。それは知りませんでしたっ。
自由の(女神の)名のもとに戦争という命さえ危険な束縛を…。皮肉たっぷりですね。
プルーデンスは、終盤かなり脇に回った感もあり、どうなったのか。主人公たちに合わせて、ハッピーに考えておくのがいいと思いまーす。
知らない曲も。
ボーさん、3回も観に行ったんですね。
でも、これは劇場で観たかったな~。
結構、知らない曲があったので、ちょっとショックです(笑)
>チェズさん
見ていただきまして、うれしいです。
知らない曲がありましたか。私が(たぶん)全曲知っているほうが珍しいかもしれないですね。
そろそろ再見してみたいかも。
ビートルズの曲にあまり思い入れがなかったので、適当な感想になってしまいました。好みに合わないのと良し悪しは違いますもんね。本当に申し訳ない…。
>いちばん面白いのは、徴兵検査の場面で“I Want You (She's So Heavy)”「アイ・ウォント・ユー」を使ってくる。
ここは素直に面白かったです。風刺も効いていたし、ダンスもしっくりきて。宣伝にも使われていたシーンだったんですね~。
>宵乃さん
好みはそれぞれで、違わないほうがおかしいのです。
理由なく悪意でけなすのでない限り、ほかの方がどう思うのかは興味がありますから。
やっぱり、ビートルズ好きかどうか、が根本にくる映画だとは思うのですよ。私なんて、曲だけでも感激しちゃいますから。
全く同感でした。
敢えて付け足せば、【対位法的な見せ方の多さ】です。
Hold Me Tightでは米国と英国の恋模様、Let It Beではベトナム戦争の死者と公民権運動の死者、I Want Youでは徴兵検査とプルーデンスの恋心、Revolutionではデュードの抗議行動への怒りとルーシーの自分への慰め。或いは、Helter SkelterとAcross the Universeの二曲による対位法的場面構成もありました。
>デラックスエディションには31曲入ってるのだが、あとの2曲は何だっけ!
自信を持って、インストのFlyingとA Day in the Lifeと言おうと思いましたが、Flyingはどうも入っているようですね。
>オカピーさん
対位法的な見せ方、多かったかもしれませんね。大好きな映画とはいえ、さすがに数年たつと、はっきり分かりませんが、そうした見せ方の連続にも心をつかまれたのは確実です!
観賞2回目の記事も読んでいただいたでしょうから(?)分かったと思いますが、入っていない2曲は、A Day in the Life と She Loves You です。
映画を再見したくなったのは、もちろんですが、サントラCDも聞きたくなりました。
テレビでは放送されていなかったのですね。
私、どこで見たんだろう?動画配信か何かだったかな?
2年前に(乗り継ぎの都合で)リヴァプールを通った時、博物館でジョンとヨーコさんのエキシビジョンをやっていました。何の下調べもしていませんでしたが、見学しました。無料だったのでf^_^;
その展示だけではなく、リヴァプールにいるというだけでもう、テンション上がり過ぎてしまい、冷静になるために腰を降ろした場所が!映画にも出てきました。
「A day in the life 」の前奏のみ流れていて「♪ l read the news...」のニュース(新聞)だけ出てくるシーン…主人公も「よっこいしょ」と腰掛けていた…だったかな?
最近↑の展示は六本木でも開かれたそうです。入館料が何と2600円‼︎
ビートルズを聞き始めた頃「Come Together 」とか、何が良いのか分からず、カセットテープだったので(←あ、歳が…)早送りして聞いたりしていました。しかし今はおっしゃる通り「あ、あの曲が! と流れてきただけでも」口ずさんでしまいますね。
当時はポールさんの嫁になる(ほど好きになる)なんて、考えもしませんでした。しかし今は…すみません、おノロケになってしまう♡
今年の自宅隔離中(LockじゃなくてRockdown)に作っちゃったらしい曲も、素敵です♡
毎週楽しみにしている「ビートルズ10」というラジオ番組も、聞き始めてから、早いもので10年以上になりました(๑˃̵ᴗ˂̵)
この映画を見た翌日「ワン・デイ 23年のラブストーリー」を見ました。最後まで同じ役者さんであることに気付かず「どっかで見た人だなぁ」と…
←アン・ハサウェイではないですよ。
>モぺ改め「謎の」ミトンさん
ロケ地も感慨がありそう。
私だったら、やはり、ハリウッドのマリリンゆかりの地めぐりとか?
ポールくんったら、まだ曲をつくるんですか!?
「ビートルズ10」なんて、はじめて知りましたわ。ずうとるび10じゃないですね?
ジム・スタージェス、ちょいポールっぽいといえば、いえるのでは? 声の傾向も。
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ビートルズファンにはたまらないのはもちろん…という感じですね。
33曲もだなんてすごい~、ボーさんは全部知っている曲でしたか?
つらい時代背景もありますが、うーん、面白そうです!