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2020-09

「どん底」 - 2008.10.04 Sat

「どうせ、はきだめだ」と言って、土手の下へごみを捨てる人たち。
その下の貧乏長屋に住んでいる人々の、どん底の生活



DVDジャケット
ゴーリキーの原作を、小国英雄と黒澤明が脚色した。
カメラは、長屋と大家の家、その外側の狭い範囲から外へは出ない。舞台劇のような密度。

住人は、遊び人(三井弘次)、役者くずれ(藤原釜足)、泥棒(三船敏郎)、鋳掛屋(東野英治郎)とその女房(三好栄子)、夜鷹(根岸明美)、御家人くずれ(千秋実)…。
泥棒と大家の女房(山田五十鈴)は関係があるが、泥棒は女房の妹(香川京子)のほうに惚れている。
旅の途中のお遍路さん(左卜全)が、しばらく長屋に泊まることになり…。

2時間の間、飽きさせずに、さまざまな人間模様を見せるのは、さすが黒澤というべきか。
原作とは、だいぶ似たような脚本らしいから、原作の力も大きいだろう。

左卜全が、絶望感をもつ住人たちを励ます。どん底の住人たちに、人間らしい考え方や生き方、希望の芽をふりまく役柄か。
しかし、人殺しが起き、裁きの場に証言に立たなければならない心配が出てきたとたん、彼がとった行動は…。
いったい、このお遍路さんは何だったのか。解釈しようとすれば一筋縄では行かず、興味深い。
これは、見た者の考え方次第ではなかろうか。

本番と同じ衣装で、役者たちは何日もリハーサルしたという。
「役に、なりきる」ことを、監督は望んだのだろう。
監督は落語家を呼んで、役者たちに、長屋ものを題材にした落語まで聞かせたという。
そのかいもあって、もう、全員の演技に、隙がないというのか、見事に貧乏長屋の住人らしいのだ。

山田五十鈴の悪女ぶりは堂に入って凄みがあるし、三井弘次の、いまの生活に腹をくくって騒がないような遊び人もいい。酒に体をやられながら再起の夢を捨てず、哀れを誘う役者くずれの藤原釜足もよかった。

お遍路さんのセリフ。「いいかい、おめえさん、どんな人間でも大切にしてやんなきゃいけないよ。だってさ、わしらにゃそれが、どんな人間なのか、何をしに生まれてきたのか、何をしでかすのか、見当もつかねえんだからねえ。ひょっとしたら、その人間はわしらのため、世の中のために、どえれえ、いいことをしに生まれてきたのかもしれないではないか」

社会の底辺のような生活を描いて見せていき、主張がどこにあるのかはわかりづらいが、つらい生活のなかであっても負けずに生きていこう、ということだと私は解釈した。

(9月28日)

1957年作品
監督 黒澤明
出演 三船敏郎、山田五十鈴、香川京子、中村雁治郎、左卜全、三井弘次、藤原釜足、根岸明美、千秋実、東野英治郎、上田吉二郎、三好栄子、清川虹子、田中春男、渡辺篤、藤田山

参考:どん底@映画生活

評価☆☆☆★(3.5点。満点は5点)

● COMMENT ●

No title

ボーさん、こんにちは!
最近、渋い作品が並んでますが、
観直しキャンペーンですか?

これもかなり古いので全く知らないし、
(単に私が無知なんですが)
役者の名前も4~5人分からない人がいます。

黒澤監督の映画にかける熱い思いはやっぱりすごいようで、
役者の役作りでも、手間や時間をかけたんですね~

>YANさん

こんばんは!
いえ、録画したものをガンガン見るパターンだと、私は、こうなるのです。
最近はビデオの不調もあり、録画をあまりしていなかったですが、DVDレコーダーになったので。
昔の映画だと、コメントはしにくいと思いますけど、適当に茶々入れてくださいね。

TB&コメント有難うございました。

黒澤映画は意外と台詞が多いですが、この作品は完全に台詞劇ですね。
大元がゴーリキーの舞台劇ですから当然ですが、演技と台詞の面白さのみで見せるのは黒澤作品では珍しい。
後年の「どですかでん」と一対になる作品でしょう。

>お遍路さん
ロシア文学を専攻した僕の解釈では、あれは無用に希望を与える当時(20世紀初め)の思想家へのゴーリキーの皮肉ではなかったか、と思います。なかなか人生を達観した良いことを仰っていますが。
彼はギャンブラー(遊び人)の現実的な対応こそが下層階級の希望であるとしている、と思われます。

映画版が全く同じであるという保証はありません。^^;

>オカピーさん

本当に、舞台劇だなあと思いながら見ていました。
「どですかでん」は覚えていないので、それはまた楽しみです。

お遍路さん、なるほど。この先ネタばれですが、

私も最後は、あのキャラクターが、すたこら逃げてしまったので、うさんくさく思っていました。
左さんは、どういう立場で演じるか、よく分からなかった、という話もあるようです。

お遍路さん

私も遍路のあの台詞に感動しましたので、DVDを逆転静止して書き留めました。これこそ、この映画のテーマではないかと、、。
当方では西国33箇所や四国88箇所の遍路詣での旅があり、ちょっぴりだけ私も体験していますが、関東にもあるのですね。
老いてきて、多少は信仰心に目覚めたかな?。

>アスカパパさん

思わず巻き戻して書き留めたのは同じですね。それだけ重いセリフだったかと思います。
関東は、私の母は行っています。私も埼玉や日光、神奈川の寺などは、お供しましたよ。

No title

だいぶ前に観ました。
観ていて体が痒くなってきそうな そんな
衣装やセットだと思いました。

山田五十鈴 貫禄がありましたね。
長谷川一夫とコンビを組んでいたころの
映画と全然違いました。

>Nanakonaさん

体がかゆくなるとは面白い考えですね! 私は思いつきもしませんでしたー。
山田五十鈴さんは、すごかった。ああいう女優になれたら、いいでしょうねえ。

もうあと10分長かったらお遍路さんが金さんか、暴れん坊将軍であった事が判明するシーンがあったに違いない。そしてその後もう10分長かったら徘徊している黄門さまを助さん、格さんが迎えにくるシーンがあったに違いない。その後、10分長かったらすっかり三味線弾きになった山田五十鈴の手で役者を破滅に追い込んだ長屋住人全員に血の仕置きがなされるシーンがあったに違いない。延長なしで切りあげたのは流石だ黒澤。

>fjk78deadさん

観客妄想完全版で製作してDVDを販売して、もうけてください。


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