「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」 - 2009.02.21 Sat
新しい生活を求めて冒険しようとした夫婦(もしくは妻)がたどった道は、どうなっていったのか。

フランクとエイプリル、若い夫婦の行き先は…
(c) 2008 Dreamworks, LLC.
ケイト・ウィンスレットとレオナルド・ディカプリオが夫婦の役。「タイタニック」(1997年)以来の共演だという。うん、あの映画では、まさにゴールデン・カップルだったよねえ。ほんと、久しぶり。
郊外の町の中、レボリューショナリー・ロードに住居を構えた家族。
フランク(ディカプリオ)は家から車に乗り、(どこかに車を置いてから)列車に乗って都会の職場に行く。同じようなスーツ姿の男たちが大勢。この通勤風景が、今の私などにも重なって見えた。
私は車は乗らないし、スーツは着ないけど、なんだか昔も今も、変わらないなあと。
妻エイプリル(ウィンスレット)と、しっくり行っていないせいも少しはあるのか、フランクは会社の女の子と浮気をする。(この彼女、有名なエリア・カザン監督の孫娘ゾーイ・カザン。孫が女優さんなんて、はじめて知って、びっくり。映画人の血は争えないというやつでしょうか。)
自分が所属する市民劇団の出来にも失望したエイプリルは、満たされない気持ちを引きずるが、一家でパリに移住して自分が働き、夫には、しばらく働かなくてもいいから、本当にやりたいことを探してもらう、というアイデアを思いつき、フランクに話を持ち掛ける。
彼も賛成し、2人の計画は進むかのように見えた…。

こんなシーンがあったっけ?
(c) 2008 Dreamworks, LLC.
非常に濃密な、感情がぶつかりあい、離れあうようなドラマを堪能させてもらった。
いちばん、やっかいなのは、エイプリルが感じている閉塞感というのか、田舎で主婦をやっているだけで終わりたくない、という気持ちだろうか。
まわりの多くの主婦は、たとえ不満があっても、その生活を続けているのだろうが、エイプリルは違った。
今の時代だったら、都会に出てキャリアウーマンになっているかもしれない。
少し精神を病んでいるという隣人が、夫婦それぞれの思いをズバズバと言い暴く。彼は、まったくもって、そういう役どころで登場している。
エイプリルの気持ちは察することができる。このままじゃ、だめだ。なんのために生きているのか。もっと生きる充実感を得たい。などと少しでも感じたことがある人ならば、彼女に多少なりとも共感するのではないか。
ただ、子どももいる家庭を作れば、そこに生きがいを見出していくものではないかともと思うが、エイプリルはそうではなかった。フランクにも、そんな部分はある。
子どもたちが家庭内にいてもおかしくないのに見かけないというシーンの多さは、いかに夫婦の人生に子どもの存在感が薄いかを表わすものと受け取っていいのだろう。
彼女の焦燥感や葛藤も、夫としての考え方も含めた彼の思いも分かる気がする。(私は未婚なので「気がする」というところどまり。)
エイプリルは、今の生活と折り合いをつけることはできなかった。ずっと満たされないままで来た、さまざまなものが、夫との決定的な喧嘩を最後に、コップから水があふれだすように崩壊してしまったという感じか。
不動産屋の一家、隣人の友人夫婦の存在感も、お見事。
こういう、シリアスで人間の内面に踏み込んだタイトなドラマも、いいね。もちろん、出来がよければ、だが。
ラストシーンも秀逸。パーフェクト!と心の中で言ってしまったほど。

隣人の友人夫婦ミリーとシェップ。子どもたちに無視される夫のシーンが印象的だった。
(c) 2008 Dreamworks, LLC.
ケイト・ウィンスレットは、まずゴールデングローブ賞で主演女優賞をとったが、レオ君も主演男優賞をとって、決しておかしくないはず。2人とも素晴らしい演技だった。
どこか舞台劇の感覚に近い印象もあった。
レボリューショナリー・ロード (革命家通り)から起こった、夫婦の革命の顛末(てんまつ)。
(2月14日 渋谷シネパレス2)
REVOLUTIONARY ROAD
監督 サム・メンデス
出演 ケイト・ウィンスレット、レオナルド・ディカプリオ、キャシー・ベイツ、キャスリン・ハーン、デヴィッド・ハーバー、ゾーイ・カザン
参考:レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで@映画生活

評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
う~~ん(笑)
>ひろちゃんさん
お春ちゃん(エイプリル)に多少同情的なボーです。
そうですよね、子どもが生きがいと感じている奥様が見たら、共感はできにくいと思いますよ~。子どもより自分、ですもん。
「めぐりあう時間たち」のジュリアン・ムーアに近いような気もしました。
普通は、あの隣人夫婦のような感じになりますよね。対比の意味でも、いい存在でした。
観て損はないと思える作品であったなら、よかったですね!
おはようございます
私の周りにはジェンダーフリー思想を振りかざす友人がおりまして、彼女の前では主人→夫、嫁→妻、専業主婦→家事従事者と言わねば叱られます(笑)。現代でもジェンダーフリーは賛同を得にくいのに、50年代ならば、なおさらでしょう。ラストシーンは素晴らしかったです!
こんにちは!
結婚して、自己実現の夢と挫折、郊外に幽閉された主婦の孤独、夫婦の葛藤...かなりよく分かる部分もあるのですが。こんな風に考えを煮詰めて、自分も夫も追いつめてしまったエイプリルは可哀想だと思うものの...同情はしません、出来ませんね...。
まぁ、ホントに『結婚』というものを、改めて考えた映画でした。
あの~、ボーさんみたいな未婚の方が観ると...結婚が怖くなりませんか?あたし、それが心配で(笑)
こんばんは!
エイプリルに共感できるかできないかで、評価が分かれるところですが
彼女の求めるものが、家庭ではなくて自分の夢だったんだろうね。
人間にはわりきれないものが多いです。
ほんと舞台劇のように濃密なドラマでしたねー。
>マーちゃん
自分の立場によって、いろいろ考えが変わりそうな映画ですね。
私は、夫も責めたくはないのですよ。つまり誰も責めたくはないという、良い子な立場(?)です。
1950年代は、まだまだ総じて保守的なのでしょうね。
ラストは、それまで脇役だった人がいいとこ持っていったぞ、というのも、してやったり、みたいな気分で。
>あんさん
何の疑惑もない独身のボーです。
ご心配いたみいります。(笑)
結婚は怖いな、というのは、この映画を観るまでもなく承知してますので。
というのは冗談で、だいじょうぶですよ。縁があれば。
エイプリルのような例が本当にあったら、大悲劇ですよね。結婚について考える、きっかけになれば、それも意味がある作品だと思います。
>アイマックさん
ゾーイ(ゾエ)・カザンさん、私もこの映画で観て、あとからキャストを調べて知りました。びっくりです。
そうですね、エイプリルは家庭よりも自分のことをまず考えていました。そうすると、まず家庭を持ったことから間違いだった、となってしまいます。やりきれない話ですよね。
でも、映画として堪能しました!
ケイトがアカデミー賞主演女優賞をとりましたね~
見応えがあり、印象に残る演技をする女優さんになったなぁ~と思っていました。受賞は嬉しいです♪
ですが、この映画のエイプリルには少々辟易しました(笑)
彼女は、得体の知れない焦燥感と葛藤に押し潰されてしまったように見えました。
きっと何処で何をしてもずっと満たされなかったのではないかしら?存在感の薄かった子どもたちが可哀想だったなぁ~
>由香さん
アカデミー賞、違う映画でノミネートでしたが、彼女には、それだけ多くのいい作品があるということですね。
そうですね、エイプリルの融通の利かなさというのか、我の強さというのか…それが悪い方へ行ってしまった印象です。
彼女が満足するのは難しいかもしれませんね。
子どもも、かわいそうですけど…彼、再婚したりするかなあ…? なんて、ふと思ったりして。
こんばんは!
どうもコメントし辛いです(^^;
この作品は普通のラブストーリーを観て感動しようという向きには、
ちょっと不向きな作品ですよね。
結婚し、子供まで居ながら、
それすらどうも自分が望んだ道ではないことに気づかない振りをしてきたヒロインが、
人生半ばでそれに気づく。
「子供も夫もリセットできない。」
だから、ココではない何処かで、新しい夢を掲げてまたごまかしたかった。。
そうせずには生きられなかったのでしょう。
本当に結婚に何を望むのか?
今なら間に合う全ての女性に観て欲しいなぁと感じたものです。
>kiraさん
私は独身ゆえに、身につまされるところもなく、どうしようもなくなっていくドラマと渾身の演技を堪能していたのでした。
エイプリルは、とにかく、自分が何かしたいからには主導権をもつ。自分が働くから、と。夫のために、というポーズも取れる。
他にも、そんな似たような主婦がいたのかどうか…。(いたら、みんな、ほとんど破滅していそうですよね)
結婚を考える一助になりうる映画でしたね。
こんにちは!
それが喧嘩となると鬼のように変化するんだから、国民性も出てましたね。
「めぐりあう時間たち」のジュリアン・ムーアを私も思い出しました。
これは一般的な主婦じゃなくて、少数派の主婦、
家庭や子育てに生きがいを感じられない人の話と見ました。
自己実現したいなら自分が外で仕事をするとか、女優の勉強を真剣にするとか、
他にもやり様があったのにと思います。
>YANさん
ええ、いくら美しくても、仲良くないんじゃ困りますよね~。
自分の気持ちを、どうしようもできない場合…これも困った問題。
やっぱり、思い込みの激しさがあって、間口が狭いとでもいうのか、いま考えると、彼女の問題はそういう点でもあるかと思いました。
こういう重た~い映画も、かなり好きでっす!
エリア・カザンの孫娘でしたか!!
そうか~子供という存在の影の薄さを表してるんですね!
私自身、子供に振り回される毎日ですが
残念ながら「子育てが生きがい」という訳ではなく・・・
こんな母のもとに生まれてしまった子供には誠に申し訳ないですが
そういう人間もいるのです。。。
なのでエイプリルのような「特別な有能感」とはまた違いますが
周囲との相容れなさ・疎外感を感じる所は共感できたりして
かなり「わかるわぁ~。キッツイわぁ~。」な作品でありました(--;
>わさぴょんさん
子が生きがい、などというのは、誰もが抱く考えとは限らないと思います。人間ですから、いろいろです。それはそれでいいんですよ、きっと。
この映画、既婚の方が見ると、やはり私とは違う感情が出るのでしょうねえ。
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エイプリルに批判的な奥様
ブロガーです(笑)
エイプリルの気持ちがまったくわからないわけでもないのですが、
私は子供が産まれてから子供が生きがいみたいなところがあるので、
彼女に共感でなかったんだと思います。彼女にも子供への愛情は
あったと思いますが、母性よりも、もっと大事なものがあった
のかもしれませんね。今の時代なら、確かにキャリアウーマンという
道もあったと思いますが、エイプリルにとっては、時代も悪かった
のかもしれません・・・
好きとはいいがたい作品でしたが、鑑賞して良かったとは思った作品でした。
そうそう、舞台劇を観ているような感じもしました^^
比較で?いたような隣人夫婦、現在でも、だいたいがああいう夫婦が多いのではないでしょうか?(笑)