「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 - 2009.02.26 Thu
ベンジャミンは、人とまったく違う人生だったけど、それでも、一所懸命生きていた。

メイクと特殊撮影の技術は驚異的。なんでブラピが小さいの?
(c) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved.
老人のような赤ちゃんに生まれて、年々見かけが若返っていくという、ありえない設定なのは、どうしたってこれは、究極的には「人生の見かけなんか関係ない、人は与えられた情況のなかで、いかに生きるかが重要なのだ」という話に思える。書いてみれば、ありふれたことだけれど。
167分という長い映画。しかも劇的に盛り上がるポイントが少ない、こうした作品は、苦手な人もいるだろうけど、私は本作は飽きなかった。
老人のように見える子ども。老人が暮らす施設に拾われたのは幸運だった。周囲がお年寄りばかりだから、平和に過ごすことができただろう。
デイジー(子ども時代を演じるのがエル・ファニング。成長後はケイト・ブランシェット)と知り合ったベンジャミン(ブラッド・ピット)。船に乗ることになった彼は、デイジーと手紙をやりとりする約束を交わす。
寄港先での恋があったり、戦争があったり。

ケイト・ブランシェットも少女時代から老年まで演じた。この人には、うまい女優と感心するしかない。
(c) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved.
気がついたのは、ベンジャミンの死生観というのか、他人の死を前にしての冷静さだ。達観といってもいいだろうか。
きっと彼は老いて生まれて、何年も生きられないと言われた幼い頃から、死を身近に考えて、それが自分のものであれ他人のものであれ、静かに受け入れる心ができていたのではないか。
そんなふうに、なりたいものだ。なんとなく。
変わった男の人生を追うというと「フォレスト・ガンプ 一期一会」(1994年)を思い起こす。…と思ったら、同じ脚本家だったんですね。
ベンジャミンが子どものときは、背も小さくなっていて、映画の特撮技術には相変わらず驚かされる。
映画の最初のほうで、ベンジャミンの育ての母親クイニー(タラジ・P・ヘンソン)がいう言葉で、この映画の主張の一部ともいえそうな名言が2つあった。
英語は映画サイトの“The Internet Movie Databese” から。訳は、だいたい、こんなところか?という意訳で。なんとなく意味が違ったら、ごめん。
You never know what's comin' for ya.(この先、何が起きるかなんて分からないさ)
Everyone feels different about themselves one way or another, but we all goin' the same way.(人とは違うなんて言っても、結局は同じ道を歩いてるんだよ)
人生を描いた、いい映画は、いろいろあれども、この映画も、また、そのなかの1本となった。

ヒロインの子ども時代を演じたエル・ファニング。ダコタとともに姉妹俳優として活躍していくのか。
(c) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved.
また、映画館で本作の予告編を少なくとも2種類見たが、とても感動的な、いい出来で、「予告編大賞」というものがあったら、あげたいものだと思っていた。
そういえば、昔どこかのテレビ局で、映画の予告編だけを集めて放送したことがあると思うが、これ、毎年やってくれないものだろうか。面白いと思うけど。みなさんで、要望の声をあげてみません?
(2月22日)
THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON
2008年 アメリカ作品
監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、ジュリア・オーモンド、エル・ファニング、タラジ・P・ヘンソン
参考:ベンジャミン・バトン 数奇な人生@映画生活

評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
こんばんは♪
>あんさん
コメントに訪問する前に、いらっしゃっていただきまして有難うございます。
私、予告編で泣けてましたよ。
最後まで、あの2人は一緒だったですね。うらやましい。
名言、映画でどんな訳だったか正確に覚えてないので、違ってたら申し訳ありません。しかも、ちょっと直しました!(って、噛みしめてからじゃ遅いですか?)
おはようございます。
>人生の見かけなんか関係ない、人は与えられた情況のなかで、いかに生きるかが重要なのだ
と、同じ様な事を私も思いました。そして今、自分が出会っている人を大切に思いたくなる映画だと思いました。
この映画は、年が結構いっている義母と観に行ったのですが、ラスト近くに、彼女がどんな顔をして見ているのか気になってしまいましたが、そっと横を向く勇気さえもありませんでした。
去りゆく人に、見送る人。いろいろな思いが押し寄せてきて、結構号泣モードで見てしまいました。良い映画でしたね。
>kiriyさん
コメントできる映画がなくて私も、ごぶさたしています。
お義母さまと観に行かれたのですか。いい映画と思ってくれていたら、いいですね。
私も、毎度ながら涙を流しておりました。
人生って、あらためて感じますが、人との関わりが大きいものですね。というか、自分自身の他は、他者しかないわけで…当たり前のことかもしれませんが。
観て良かった映画です。
お邪魔します^^
確かにこの映画の予告編
本編を観てもガッカリさせない作りでしたよね。
予告編を集めた番組って司会が佐野史朗さんだったのでは
ないですよね?σ(^◇^;)
予告編集めた番組、確かに
面白いですね^^
さて、この作品長かったですが、最後まで飽きることは
なかったです^^
人生を応援してくれる映画・・・なるほど、そうですね。
私は心に染み入った作品でもありました(^_-)-☆
>ひろちゃんさん
予告編でいいなと思いながら、直前まで観るかどうか決めていなかったのですよ。感動させようとしてる映画かもと考えて。
でも、よかったです。静かな感動ですね。
佐野史郎さんの司会…うーん、私が覚えているのは司会者がいない番組だったような。
じゃ、賛同者1名! 合計2票!(笑)
おはようございます
アカデミー受賞式を見て、あんなに若くてお綺麗な方だったのだと、びっくりしました。
ボーさん、私、思い出しました。「フォレスト・ガンプ 一期一会」も笑いながら観ていました(笑)。どうか、お許しを。
>マーちゃん
ヘンソンさん、この映画より若いのですよね。
アカデミー賞受賞式は見ていないので、よくわからないのですが。
…もしかして笑い上戸さん? 笑うのは健康的ですし、いいですよね。そういう楽しみ方もありです!
気に入った脚本家
この映画は気に入りました。私もエリック・ロスの脚本と気付きましたので、2日後にまた「フォレスト・ガンプ」を観てしまいました。作品が益々輝いて見えました。
両者の作品に、言葉では言い表し難いのですが、共通する何かを感じました。
気に入りました、エリック・ロス。
>アスカパパさん
硬派だったり大物感があったりする話が得意? 人間の感情がからんだ話も上手ですね。
1945年生まれということで、まだまだ新作、ありそうです。楽しみですね。
先日のアカデミー賞ではスラムドッグ~が8部門も受賞しましたが、、、これもいい映画でしたよね~
とても静かで淡々とした物語でしたが、最初から心にジーンと沁みて、切なかったり、可笑しかったり、、、飽きることなくベンジャミンの人生を見守りました。
何と言ってもベンジャミンの人となりが素晴らしかったです。数奇な人生ながら穏やかで優しい人柄がツボでした。
きっと育ててくれたクイニーの力も大きかったでしょうね♪
>由香さん
アカデミー賞では主要部門で受賞できなかったようですが、相手が上だったのかなあと想像するしかないですね。
静かであまり波乱のない映画でも力があれば、観客は感動します。
体だけでなく心も、幼くして老成しちゃったようなベンジャミンでしたね~。
ストーリーも良かったけど、CGが自然でスゴカッタデス!
小さい体の時は、別の俳優さんが演じて
顔だけブラピと挿げ替えたそうです!
なんか『バトルランナー』でそういうのありましたよね・・・
現実の技術がSFに追いついた~(@@)
うん、老人施設で育ったのはラッキーでしたよね。
父親はソコまで考えて彼をアソコに置いたのでしょうか。
老人顔だから老人施設へ・・・って短絡的な考えだったとは思うけど
結果的には良かったなぁと。
疑問が一つ。
どうして再会した時、息子だと分かったんでしょう?
ずっと見守ってたの?
赤ちゃん以来の再会で、あれだけ成長(?)してからの再会では(15,6年後?)
普通見分けがつかないと思うんだけどなぁ?
ありがとうございます。
うー、そのへん詳しく判断できるほど覚えてないんですけど、やっぱり息子のことは普段から気にしていたと考えたほうがいいでしょうか。
近いところに住んでいたら、なおのこと気にするでしょうしね。
それに、若返る人がいる噂を聞けば、どの人か、自然と顔は知っていたかも。
私もブラピの顔をつけてみたいでっす!(笑)
感動作
私もこれはいい映画だなあと、すごく気に入りました。
>人とは違うなんて言ってみても・・・
これはまさにベンジャミンに当てはまりますね。
人とは逆で若返っていくとは言っても、
結局は、後戻りのできない道を歩いているのは同じ。
その中で達観したように自分の運命を受け入れて、
人との出会いを大切にしていった彼には
教えられるものがありました。
ブラピが本当にいい演技で素晴らしかった~★
>YANさん
いい映画でしょう~。文部科学省(でしたっけ)特選でも、おかしくないです。
私たちみたいな普通の人生だと、運命だから受け入れる、というのは、心づもりとしては、かえって難しいかもしれないですね。
一度の人生、せいいっぱい、やってみないと、もったいないなあと思う(のですが、それを続けるのが大変です)。(苦笑)
ブラピも良かったですねー。
弊記事までTB&コメント有難うございました。
>人は与えられた情況のなかで、いかに生きるかが重要
そういうお話のようでしたね。
我々一般人も限られた時間の中で充実して生きたいものです。
>ベンジャミンの人生観
彼は我々と違って時計が逆に回っている人生ですから、0になった時に死ぬと解っているので、達観した境地になったのでしょうね。
>この先、何が起きるかなんて分からないさ
当たり前ですけど、我々には励みになる言葉ですね。
IMDbで調べたらベンジャミンも同じ言葉を言っていました。僕はすっかり聞き洩らしていましたが(汗)。
それから、ボーさんの訳は大変良いですね。まがりなりにもそちらの勉強をしてきた僕より上手いです。
>オカピーさん
本当に。そんなふうに心得て生きることができたらいいのですが。
死ぬときが分かっているというのは、死生観に影響しないわけにはいかないですよね。
訳、いいですか? ほめていただくと単純に喜びます。ありがとうございます。
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与えられた運命の中を静かに受け入れ、一生懸命に生きるベンジャミンでしたね。
こんなに、一途に1人のひとを愛し続けるなんて、なかなか普通の人生でも出来る事じゃありません。
美しい人生だったと思います。
ボーさんの英訳された2つの名言、改めて読むとよいですね~。噛みしめてます。