「ゴーン・ベイビー・ゴーン」 - 2009.03.14 Sat
スティーヴン・キングが2007年の映画で第2位に選んだことで、私はこの作品を知ったのだが、日本では、ついに映画館では上映されず、今回DVDでの観賞となった。

パトリックとアンジーの探偵コンビ。幼女行方不明事件の捜査を依頼される。
(c) Buena Vista Home Entertainment, Inc.
原作は、デニス・レヘインの小説「愛しき者はすべて去りゆく」。レへインといえば、クリント・イーストウッドが監督した「ミスティック・リバー」(2003年)を思い出すが、今回も、ずっしり重いテーマを含んだ作品だった。
俳優のベン・アフレックが監督したというのが、まず興味深いところだった。彼の初監督作だ。主演が弟のケイシー・アフレックなので、身内で、こぢんまりと作っちゃったのかと心配もしたが、まるで、そんなことはなかった。
アメリカ・ボストンで起きた幼女失踪(しっそう)事件を、パトリック・ケンジー(ケイシー・アフレック)とアンジー・ジェナーロ(ミシェル・モナハン)の探偵カップルが追う。
警官のレミー(エド・ハリス)、ニック(ジョン・アシュトン)と協力しながら捜査していくうちに、誘拐犯人と思われる男に呼び出されるが…。
失踪した子どもの母親ヘリーン(エイミー・ライアン)は、麻薬漬けで自堕落な生活を送り、子育てにふさわしくないような印象がある女性。
子どもに優しくない環境、最近よく言われるネグレクト(育児放棄)などの問題を扱った映画でもある。
ラストでは、「どちらが正しいことなのか」という難しい選択を突きつけてくる。
エイミー・ライアンは「チェンジリング」では、病院でクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)を励ます女性の役で、いい演技を見せていたが、本作でも素晴らしかった。
ケイシー・アフレックは、若く頼りなさそうなところもあるが、クールでタフな面も持ち合わせている。この町で探偵をやってきているんだぞ、という気持ちが、にじみ出ているのだ。だらだらと平板に喋るように聞こえるのだが(なまりのせいもあるのか?)、それが、いい味になってくる。
エド・ハリス、警部役のモーガン・フリーマンも相変わらず、うまい。ハリスの役なんて、考えてみれば、下手をすると笑えそうなほどの悲哀というか皮肉な終着点を迎えるし。
「M:i:Ⅲ」や「ボーン・スプレマシー」のミシェル・モナハンもいいし、とにかく、出演者みんなが、いいのだ!
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子どもがいなくなり、メディアにコメントする母親。 (c) Buena Vista Home Entertainment, Inc. |
原作の舞台でもあるボストンでロケをして、現地の人たちも多数出演しているそうで、それも実に効果的。
「ゴーン・ベイビー・ゴーン(GONE BABY GONE)」というのは、映画ではヤクの売人が、捜査に来たパトリックたちに対して言うセリフの一部。
GONEはGOの過去分詞。いなくなってしまった(行ってしまった、失われてしまった)、ということですね。セリフは、
“And if that girl only hope is you, well, I pray for her, 'cause she's gone, baby, gone.”
字幕では「もう少しマシな捜査をしろ。さもないと、その子は助からん。おしまいさ」
吹替えでは「その子を捜せるのがお前だけなら、うまく行くように祈る。消えちまったんだからな、完全に」
何が起きるのか、見ていて、ひりひりと締めつけられるような緊張感をもたらすシーンもある、ハードボイルドな傑作。
いい意味で手慣れた感じがないうえ、リアルに徹したことで、初監督が好結果に出た一作だと思う。
劇場未公開になったのは残念だが、考えさせられる重い映画が好きな方には、ぜひDVDなどで見てほしい。
(3月14日)
GONE BABY GONE
2007年 アメリカ作品
監督 ベン・アフレック
出演 ケイシー・アフレック、ミシェル・モナハン、エイミー・ライアン、エド・ハリス、ジョン・アシュトン、エイミー・マディガン、タイタス・ウェリヴァー、モーガン・フリーマン
参考:ゴーン・ベイビー・ゴーン@映画生活
評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
そういや
>miyuさん
監督オンリーだったのも結果的に良かったですよね!
熱があるので短くシツレイします、、、、
これ、そういえばスティーブンキングの2007年2位ですか☆
なかなかいつも好み合います♪
DVDスルーで埋もれちゃうのはもったいない映画ですよねー、、、、
>migさん
だいじょうぶですか!
プレミアで外待ちしてたから…(それは、ずいぶん前の話?)
暖かくして早く休んでくださいね。
migさんちでレンタル始まってたのを知ったのですよ。ありがとうございます。
私も、きっと年間でも上位にあげますね、これは。
お久しぶりです
この映画は観たのですが 開始10分で全部わかってしまい しかも全部知ってるような気がしてなりませんでした。
そして気づきました。
原作を読んでいたのです…。
ミステリでこれは致命的ですよね。
でもいい映画でした。
>プリシラさん
勘がよすぎ、と思ったら、原作を読まれてましたか。
それは、デジャブ感いっぱいでしたでしょう。
何も知らずに見始めたら、そんなこともありそうですね。
いい感じの出来で、1回見たあとに、吹替え音声に変えて、かなりの部分を見直してしまいましたよ。
ズッシリと
ベン・アフレック監督作、という肩書きが
逆に損してるんじゃないかと思えるほどスゴイ作品でした。
(何気にベンに失礼)
私なら、相棒の彼女の意見のほうに絶対賛成ですけどね・・・
>わさぴょんさん
これは、いいハードボイルド、サスペンス、探偵映画です。
監督って、やってみれば、できる場合が結構あるんだなー、と思いました。(ベンに非常に失礼)
私は、いまだに判断に迷いますねえ。
ハードボイルドな傑作でしたよね~
これは原作もいいんだと思います。シリーズ物のお話で、他の作品を読みましたが、超~面白かったもの!
ハードボイルド&サスペンスって感じでしたが、興奮しながら読めました(笑)
ベン・アフレックは監督としての才能がありそう・・・
また映画を撮って欲しいです!
>由香さん
おお! シリーズの本、読みました?
映画から本へ興味が行って、実際に読まれるのは、由香さんの素晴らしいところですね!
私も気が向いたらチャレンジしようかな。
ベンちゃん、きっとまた、いい材料があれば作るんじゃないかと思います。期待してましょう。
年末ですね・・・
ブログ冒頭のツリーやイルミネーションの画像、とっても美しい~
だけど私のような主婦にとっては、ああ年末か~って
すごく気ぜわしくなります。いつまでも子供でいたい☆
ところで、この作品、けっこう評判がいいですね。
私も期待せずに観たら、ズシッと重くて渋くて、グッときました。
どちらが正しいのか、正解が無いので、やり切れなさが残りますね。
ベン・アフレック監督2作目の「ザ・タウン」より良かったです。
>YANさん
ありがとうございます。気ぜわしいかもしれませんが、ほら、まわりに目を向けてみれば、イルミネーションが…。自分ちに飾るのもいいかも?
いい作品でしたよね。
子どもは幸せにしてあげたいけど、犯罪がからむと…という難しいテーマ。
「ザ・タウン」は見ていません。見るかどうかも…?
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良かったんでしょうね。
完全に監督業に専念できましたでしょうしね~。
とっても良かったです。