「3時10分、決断のとき」 - 2009.08.23 Sun

今回はリメイクで、オリジナルの「決断の3時10分」を見ていたから、話として新鮮さはないかなと思ったが、そんなことはなかった。
新しく話を追加して、ふくらませたり、変えたりしていて、飽きずに楽しく観ることができた。
おおまかなストーリーは上記オリジナル作品タイトルをクリックして読んでいただければ、と思う。
特に効果的なのが、やはりラストの改変。ドラマティックに変わった。
リメイクがオリジナルと同じ終わり方をするのは、オリジナルを知っている観客には、いまひとつ面白くない。本作は、うまく変えていた。
私などは、えっ、こうなるの!? と驚き、まんまと感動させられてしまった。
いちばんグッときたのは、駅へ向かう途中のダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)のセリフ。というか告白。
ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)は、それを聞いて「わかったよ」と考えを変えるのだが、私は、このダンのセリフに泣けた!
順風満帆な人生で挫折を知らない人間、それなりに人生経験を積んでいない人間、人の苦しみを思いやれない人間には、心に響かないセリフかもしれない。
となれば、悪党団のボスであるウェイドだが、人間味は、ある。
そしてオリジナルと大きく違うのが、ダンの息子の存在感。
オリジナルでは、2人の息子は家に残るので、護送の道中に息子は関わってこない。だが、今回は長男が父親についてくる。
これがラストに効いてくる。
ラストで息子がその場にいるといないとでは、大違いなのだ。
泣かせてくれるぜ、ほんとに。
男には、やらなきゃいけないときがある。これを痛感。
リメイクとしては素晴らしい出来。傑作だと思う。

左から、ドク・ポッター(アラン・テュディック)、ダン・エヴァンス(クリスチャン・ベイル)、ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)、バイロン・マッケルロイ(ピーター・フォンダ)、グレイソン・バターフィールド(ダラス・ロバーツ)
(c) 2007 Yuma, Inc. All Rights Reserved.
ウェイドが捕まるのが、間抜けに見えるかもしれないが、これはオリジナルでも多少、不思議な気はした。
でも、捕まっても、結局は逃げられる、という余裕があるからこそ、と考えればいいだろうか。
ラストだって、ちゃんと馬がついてくるもんね。(このシーンは、かっこよく決まったなー!)
2回も脱走したと言っているし、その気になれば、きっと途中からでも逃げられるんだよ、ヤツは。
ラッセル・クロウは、オリジナルのグレン・フォードと比べると、やはり狂暴(笑)。だが、それは相手が彼を怒らせたときだけ。母親を侮辱されて許さないところなどは、すっかり私は彼の味方な気分。
クリスチャン・ベイルの悩める演技は、もはや得意分野か!
戦争で片足を失った(義足か?)という設定を新たに加えて、オリジナルのヴァン・へフリンよりも複雑な人間像に。
借金があり、土地を追われそうになっている情けなさで、長男から尊敬されていないあたりも、強く打ち出されている。
それが、ダンが護送の仕事の完遂にこだわる、大きな動機付けになるのも、オリジナルとは一味違う。
エヴァンス家の息子が前面に出たぶん、オリジナルと比べると、奥さんの出番がなくなった。大きな意味でマリリン(・モンローさん)関連だった映画「ベティ・ペイジ」のグレッチェン・モルなんだけどなあ。

ダン(クリスチャン・ベイル)と、アリス・エヴァンス(グレッチェン・モル)
(c) 2007 Yuma, Inc. All Rights Reserved.
ピーター・フォンダが出ているのも、オールドファンには、うれしいところか。私には思い入れはない俳優だが。
ベン・フォスター演じる、ウェイドの子分チャーリーの冷徹で独特な個性も見もの。護送に加わったお医者さんなどとともに、オリジナルにはない魅力だ。
脚本が、うまくできているし、さすが、「17歳のカルテ」(1999年)、「ニューヨークの恋人」(2001年)、「“アイデンティティー”」(2003年)などの秀作を生み出してきたジェームズ・マンゴールド監督! といえる。
(8月22日 新宿ピカデリー)
3:10 TO YUMA
2007年 アメリカ作品
監督 ジェームズ・マンゴールド
出演 クリスチャン・ベイル、ラッセル・クロウ、ローガン・ラーマン、ベン・フォスター、グレッチェン・モル、ヴィネッサ・ショー、ピーター・フォンダ
参考:3時10分、決断のとき@映画生活

評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
ほんとよかったです!
>えいさん
じつは、あまり期待していなかったので、なおさら「よかった感」がありました。
あのあとの音楽、までは意識していませんでした。無意識には感じていたかもしれませんが。
口笛と馬! しゃれてるし、クールで最高のエンディングですよね!
ボーさん★
おおーー!!ほんとだ、すごく良かったんですね。
オリジナル観たボーさんの感想気になってたけど
えいさんもボーさんもお気に召したとは
よほどうまく作ったリメイク。
成功ですね!
わたしはフツウだったけど好みの問題だったので(笑)
違うエンディングも興味深く観られて、楽しめるとは
リメイクとして、最高ですよね♪
>migさん
よかったですよ~。
リメイクのお手本みたいな出来ですね。
リメイクが、いい映画というのも珍しいような。
監督の思い入れがあるオリジナルらしいので、作るのには力が入ったでしょう。
好みは、しょうがないですよね~。
最高でした
TBありがとうございます。
本当に最高でしたね、大好きですコレ。
チャーリーというキャラクターが、ウェイドに忠実だったのも、物語を一層スリリングで面白くしていたと思います。
本作のポスター初めて見ました。
なかなかカッコ良いですね。
こんばんは♪
>このダンのセリフに泣けた!
お父さん役が似合いそうにない!あのクリスチャン・ベイルが言うんですよー!そしてウェイドの「わかった」泣かせますよ!
馬もついてくる。さすが「オレの馬」だ

>となひょうさん
チャーリーは、オリジナルにはない強烈なキャラクターでした。
ボスに忠実だったのに、あんなことに…。彼にしてみれば理不尽ではありますよね。
ポスターは内容と、あまり合ってなくて、「イメージ」ですね。
>あんさん
ポスター、かっこいいですよねー。
こんなシーンは映画にありませんけど、チャーリーですかねえ。描かれるのは主役じゃないといけないんじゃ?
適当にイメージで描いたような気もしますが…。(笑)
やっぱり泣けるでしょ、あの場面は。
ラストの汽車を追いかける馬も、印象的でした。口笛が聞こえるんかい!とも思いますが、そんなのは、ささいなことなんですよねー。
ほら、ね。
マンマ・ミーアも良いですけどね、たまには男の映画もみなくっちゃあ。
「男ごころに男が惚れて・・・」なんて、浪曲っぽいですけど、やっぱり単純なワタシら男でないと感じ方が異なる映画もございますからね。
この映画なんか、東映ヤクザ映画の高倉健と池辺良みたいでしたよ。。。
「赤い河」のジョン・ウェインとモンゴメリー・クリフトもこんなでしたね。
「ワイルド・バンチ」(ペキンパー監督)の「最後の殴りこみ」もそう。これなんか男臭さで一週間ほど臭いが取れないです。
この間の想像ゲームから、ベイルの役を誰かがやったら、と想像しているのですが、あんまり思いつきません。
クロウの役は沢山思いついて楽しいのですがね・・・。
かろうじて、ジェフ・ブリッジスぐらいでしょうか。
つまりベイルは難しい役をよくやってると思いますね。
>lalakiさん
結果オーライ、大オーライでした!(笑)
「赤い河」「ワイルド・バンチ」などは好きですよ。「ワイルド~」の、一列になって戦いに臨んで歩いていくところなんて、かっこいいですよねー。
ベイルの演じた、複雑な気持ちをもった役、他に、どんぴしゃな役者はパッと思いつきませんね。できそうな人は多いだろうけど、ぴったりなのは。
4年に一度はリメイクを。
こういった良いストーリーは、「忠臣蔵」と同じですから、オリンピック・イヤーごとにリメイクしてほしいものです。
その時の旬の役者でね。
ジョニー・デップとか、クライブ・オーウェンとかもね、この映画で観てみたいものです。
で、考えたあげく(←誰かたのんだんか!)、ベストのキャスティングを発表させていただきます(←誰もたのんごらんわ!)。
親分ウェイド:ウィリアム・ホールデン(晩年のね)
牧場主ダン:ジェームズ・メイスン(「邪魔者は消せ」の頃の)
ウェイドの子分頭:スティーヴ・マックィーン
監督:ジョン・ヒューストン
頭の中でこの映画は上映中となってます・・・。
>lalakiさん
DVDも「誰だれが演じた版」が、ずらりと並んだりして、客の好みで借りていったりして?
理想の(?)キャスティング、
往年の大物たちが。
メイスンは渋いです。私はイメージが、はっきり浮かばないですねえー。
良かったです!
TB、コメントありがとうございました!
オリジナルの記事を読ませて頂いて、ボーさんあまりリメイク版に興味がないのかな~と思いましたが、とても気に入られたようで良かったです♪
>順風満帆な人生で挫折を知らない人間、それなりに人生経験を積んでいない人間、人の苦しみを思いやれない人間には、心に響かないセリフかもしれない。
ああ~~、解りますわっ!!
男女の違いに関わらず、ダンの吐露にはグーッと胸がえぐられる思いがしました。
若い頃は何も感じなかったけど、色んな経験をして視野が広がり、様々な立場で物事を見れるようになる…
歳を重ねるって、こう言うことでもあるんですね…
息子とか家族とか仲間とか、脇にまで拘った結果、熱い(厚い)物語になったようです。
最近は喰われてたベイルの株が上がったので、公開が遅れたのは幸い(?)だったかも(笑)
>オリーブリーさん
オリジナル版はユニークだとは思ったのですが、昔の西部劇らしく簡単にまとまっていたので、これをそのままリメイクだと、どうなのかなという思いもありました。
が、今回のリメイクは肉付けが素晴らしかったですね。
順風満帆~の文章は、偉そうなこと書いてるな、とも思って、そのままにするか、どうしようか考えた部分ですが、そう思っていただくと有難いです。
やはり、ベイルの役のほうが、客には分かりやすく感動させて受けるので、得だったかもしれませんよね。
遅くなりました!
なぜだかこの作品を観て、
とかく「食われている」といわれるクリスチャンの作品選びが、
実は本当に彼の好む役どころであったのだと確信を持ちました。
暗く深いところで傷ついた男を演じてきた彼の真骨頂。
あの告白のシーン。。ヤラレマスよね~。
余裕のラッセルは最後まで美味しかったですね~。
男として、自分にない「父」としての生き様を息子に―というところに賭ける設定がグッときたラストでした!
>kiraさん
ベイルの、いろんな役柄を見ると、悩める子羊な(?)複雑な心の持ち主キャラを積み重ねてきてます。
彼の好みといえそうですよねー。
ラッセルも、お似合いの役で、かっこよく決めてくれました。絵を描くのは、オリジナルにはなかったように思いますが、人間に幅が出るし、ラストの愛馬との関係など、そういう追加部分もよかったです。
コメント&TBありがとうございます♪
もう一方の主人公は死ぬことなんてカケラも思わない、したたかな男でしたけど。それも男の本性でもあるんでしょう。
いや、いい映画でした。
間違えました(^^;
スミマセン、消していただけるとありがたいです(^_^;)
>kiyotayokiさん
配役もキマっていて、ナイス・リメイクでした。
TBは、また挑戦してみてくださいな。
こんばんは☆彡
女ですが男泣きでした(笑)私もラストのダンの告白に
グッときました(ノ_・。)
ラッセルはそれほど好きな俳優さんではないのですが(^^;
このラッセル、カッコよすぎ~~魅力的な悪党でした
(笑)一方のベイル、こう言う苦しい?役が好き?(笑)
だし似合いますよね^^二人とも良かった♪
ヘンリーフォンダが好きでしたので(ふるっ!笑)息子の
ピーターの出演は嬉しかったです♪
とにかく大好きな作品です!もしかしたら、今のところ
今年のベスト1かも~~♪
>ひろちゃんさん
おおっ! 今年のベスト1になりそうな勢いなんですか!
私は…もう「マンマ・ミーア!」に、ほぼ決定してますが。
2人とも、いい役に恵まれましたよね。周囲の俳優も、ばっちり。
ヘンリー・フォンダがお好きだと、息子もOK!?
私は観ていて気づかなかったのです。(苦笑)
なんにしても、出来のいい映画だと思います!

護送中、ちょっとずつ二人の心が通い合う演出がいいですね。なんで今俺に言うんだ?みたいなセリフもいいです。
DVDが出たらまたじっくり観たいですね。
>かもめんさん
女優がメインじゃないから期待してなかった(笑)のですが、やられました。
記憶が薄れているので、「何で今俺に言うんだ?」と言われても、「何で今俺に言うんだ?」と思ってしまいます。(爆)
どんなシーンだったっけ。。。
子分の命の重さ
オリジナルもご覧になってるんですね、
そちらの記事も拝見させてもらいました!
本作、ボーさんは男泣きするくらいに感動したんだ~
私も、ダンの告白はすごくジ~ンと来ました。
父としての誇りを見せたいという気持ちは理解できましたよ。
それに対して、ウェイドが子分をやってまでも、
ウェイドに肩入れしたのが、どうも納得いきませんでした。
付き合いの長さ深さ、子分の命はそんなに軽くないはず・・・
>YANさん
はい、よくできたリメイクだなと思いました。
いろいろ盛り込んで、盛り上げて、感動もありで。
ボスは、あの子分を以前から好きじゃなかったような気がします。仕事には大いに役立つから、そのままにしといたけど。
心を通わせた男を、無情に殺した子分に対して怒りがあったのは、もちろんですが、ボスの座を抜けるための、他の子分への意思表示でもあったかもしれませんね。もう俺は、悪党団は、やめる!(なーんて?)
子分チャーリー
でも忠実だし(多分チャーリー側には同性愛的な気持ちがあったんじゃないかな)
腕は立つしで、側近にしておかせた、みたいな。
チャーリーの持ってた銃に自警団のマークが入ってるのを見て、撃ってましたよね?
つまりそれが、何らかの理由で逆鱗に触れたんじゃ?と思ったんですが(&ダンを撃った事)
警察は撃つのに自警団はダメってのも筋が通らないしなぁ・・・(--;
>わさぴょんさん
自分はワルのボスだけど、チャーリーとは違う人種というか(印象が、いまや、あいまいなんですけど)。
チャーリーがボスを、どこまでも助けようとするのは、たしかに、嫌いだったら出来ないといえる…かな?(記憶薄)
自警団のマークは気づいてなかった…。自警団って誰だっけ(笑)
ウェイドの胸に去来する思いは・・・・これからも器のある男に出会い 対決するでしょうね。
リンク先ありがとうございました。下手な言い回しのコメントですので ご了承ください。
>特に効果的なのが、やはりラストの改変。ドラマティックに変わった。
リメイクがオリジナルと同じ終わり方をするのは、オリジナルを知っている観客には、いまひとつ面白くない。本作は、うまく変えていた。
私などは、えっ、こうなるの!? と驚き、まんまと感動させられてしまった。
それなら 往年の西部映画のファンの方たちにも 理解して 認めてもらえますね。
ウェイドのダンに対する思いは何だったんでしょうか・・・?
ひとりの 人間の器のある男としてみたのは間違いないでしょうね。
ただ それでも ウェイドは 仲間は 皆殺しにしたとはいえ 強盗家業をやめるつもりはないでしょうね。
<ラストだって、ちゃんと馬がついてくるもんね。(このシーンは、かっこよく決まったなー!)>
平穏な生活なんて いまさらウェイドにできるワケないでしょうし、 悲しいかな・・・死んだダンとの出会いだって 心を通わせることができたとしても その出来事すら 彼にとって 出会いと別れの繰り返しの人生の1ページにすぎない。
どうせ うまく逃げ仰せたであろうし また流れ者の裏家業を続け その過程で 新たなライバルのガンマンたちと出会い 対決してゆく。むろんその中には ダンのような 強い信念や 譲れない思いを背負った男の器のあるヤツも とうぜん出てくる。
町の安全を守る保安官にしろ、同じ強盗家業のならず者 はたまた 自分の首を狙う賞金稼ぎ・・・ どの立場のライバルにしろ いづれ ウェイドを銃で対決して 葬り去る者が現れる・・・・。
しょせん・・・自分の思うがままに生き 荒野に 悪党らしく屍さらすのが ウェイドの人生にとって幸せなのかもしれない。
>zebraさん
というか、あんまり覚えていないので、あやふやな思いもありますが。
という短いコメントで、すみません。
観たときに、これほど感激しているなら、また見てもいいのかなあと、我ながら考えますね。
コメ&TBありがとうございました
私が引っかかってしまったのは、ダンと息子の親子の対比として、ウェイドとプリンスの関係が描かれているのかなぁと思って観ていたので、あっけなく切り捨てたのがショックだったんですよね~。
プリンスはボスのところしか行き場がなくて、父親か兄貴のように敬愛していたんじゃないかと思うと、悪党でも可哀想で…。
ウェイドが嫌っていたかどうかは気付きませんでしたが、やっぱり悪党でもボスなら最後までボスとして行動してほしい派なので。
>宵乃さん
西部の強盗団みたいなものは、だいたいにおいて、荒くれ者が集まっただけの集団が多かったでしょうから、個々をいたわるような振る舞いは少ないんだろうなーという頭が先入観としてあるので、私は違和感なく観たのだろうなと、振り返って考えるのでした。(一文が長いよ)
「明日に向って撃て!」のブッチとサンダンスの友情などは、珍しい例外なのかなと。
トラックバック
http://bojingles.blog3.fc2.com/tb.php/1622-80a3ebfe
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
ぼくは「わかった」の後、音楽が流れるところで大興奮。
映画的高揚感とはこのこと。
あの口笛と馬もよかったです!