「ぼくのエリ 200歳の少女」 - 2010.07.27 Tue
ヴァンパイアものは、もともと好み。怪奇と幻想と、女性が絡んでくればロマンやエロスまで生まれてくる。

(c) EFTI_Hoyte van Hoytema
しかも主人公の男の子が12歳で、思春期に入ったとき。同じ年齢の頃の子と出逢う。
ところが、その子はヴァンパイアだった!
2人の関係の部分と、ヴァンパイアの怖い部分が、うまく、くっついて、ひとつの魅力ある物語になっている。
男の子が、いじめられっ子であることも、性に目覚める頃の年齢であることも、その容姿も、設定としてパーフェクトではないだろうか。
ヴァンパイアの子の、12歳といえば12歳、しかし、どこか老成した感もうかがえる顔立ちにも感心。(メイクの力のせいか?)
「200歳」とタイトルにあるけど、映画の中では言っていない。「12歳くらい」と、その子が自分で言ってはいるが。
多少はホラーのようなシーンがあるけれど、必要最小限にとどまっているし、遊び的な感覚でもあり、ホラー好きには楽しめるといっていい。(私はホラー好きとはいえないけど、楽しい。)
ヴァンパイアの子(年齢としては「子」じゃないけど、見かけ上として、以後「子」と書いておく)が人を襲って血を吸うシーンは、視覚的にも、うまい。上から覆いかぶさったり、見せなかったり。
なかでもいちばん私の好みなのが、建物の上層階の窓際で血を吸って、そのあと相手が落ちていくというもの。これは血を吸う相手にも驚かされるし、ヴァンパイアの子は上の階の窓まで飛んできた(!)わけだし、見た目も怖くて、だから美しい。

(c) EFTI_Hoyte van Hoytema
怖いから美しいというのは、ラスト近くのプールのシーンも同じ。本当は、とても恐ろしいことなのだが、主人公の2人に感情移入しているせいか、美しさすら感じてしまうのだ。
いちばん最後のシーンも、私は、ああ、よかったね、と思ってしまう。その先は苦難があるかもしれないけれど。
この作品は2人の子の関係が基本。
ヴァンパイアの子にとって、生きていくのは大変なこと。助けてくれる人間がいるに越したことはない。ただし、その人間が裏切ったら、それは即時に自分の死を意味する。信頼できる者でなければいけない。
男の子との出逢いは、しかし、そうした打算はなく、男の子のほうもヴァンパイアの子との「きずな」を大事にして、しっかり守ってあげるのだろう。この子は彼にとって、たぶん初めての大切な、心を通わせた相手なのだから。
…と書いてきたが、映画を観た直後の思いを、一部、引っくり返すような事実を、あとで知った。
問題は、ヴァンパイアの子の股間が映り、「ぼかし」が入ること。
私は、あとで調べて「真実」を知ったのだが、もし本当ならば、これを知ると知らないとでは、大違いなのだ。原作では、こうなっている。パンフレットには、こう書いてある。という話がネット上にあり、私はそれを知って驚いたものだ。
感想文も、注意して書いてきた。

(c) EFTI_Hoyte van Hoytema
「ぼかし」の下にあるものを知らず、また、それが何なのかを調べずにいると、この映画は大きな部分で誤解されたままの感想をもってしまうことになるらしい。
「それ」は、日本の映倫の判断では映せないようなものなのか。本物ではなく作り物であっても? 映画の意味を曲解させることになっても?
ただ、それを知っても、映画の「好き度」は変わらない。
原題は「正しい者を入らせなさい」(?)
ヴァンパイアの子が、男の子の家に入れてもらえないと、体じゅうから血を噴き出すというインパクトのあるシーンが出てくる。ヴァンパイアは招待されないと家に入れない、という。
その意味も多少、かけてありそうだし、大きな意味では、(他人にとっては正しくなくても、)自分にとって正しい者、味方になる者を受け入れる、そういうことを指しているような気がする。ヴァンパイアの子にとって、味方を作る(引き入れる)ことは大切なことでもあるし。
(7月24日 銀座テアトルシネマ)

(c) EFTI_Hoyte van Hoytema
LAT DEN RATTE KOMMA IN (LET THE RIGHT ONE IN)
2008年 スウェーデン作品
監督 トーマス・アルフレッドソン
出演 カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー
参考:ぼくのエリ 200歳の少女@ぴあ映画生活

好き度☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
コレもうやってるの?!
絶対観たいです~!!
ボカシのくだり、ちょっと読んじゃったけど、
知ってると知らないとじゃどう変わってくるのかな?
観てのお楽しみ、ですね(^^)
>Rさん
ハリウッド・リメイクしたんだそうです。同じ味は出せないでしょうから、どう仕上げるか興味はありますねえ。
股間は知らずにいたほうがいいです。(変な文)
映画として観る場合、そのシーンが来るまでは観ていないわけですから。
>わさぴょんさん
予告編なんて、どこで!?
北欧らしい、澄んだような、きれいさはありますね。
私は、ネタばれといえるような重大な知識を得たうえで映画を観るのは、どうかと思うので、あとで知るほうがいいのかなと思います。
我が家では、大きくネタばれはしないつもりで書いてますが。
こんにちは。
>kiriyさん
我が家の記事が動機になるとは、うれしいことです! 少しは役にたっているんだなと思えます。
しかも、観てよかったとなれば、なおさらです。
これは、もっと多くの映画館で上映してほしいですよね。
こんにちは~♪
どの回も満員だったのではないかという盛況ぶり。
これなどネットの力とクチコミ効果でしょうか^^
記事では触れていませんが、
ぼかしの件については、エリの再三の「少女」に関する否定的なセリフから
そうかな・・と思っていました。
ラストに関しては、同じ意見です~。
陽のあるうちに活動できる人間が傍にいてくれないと、
寝込みを襲われたりして、ヴァンパイアだってコワイわよね^^;
>kiraさん
ありがとうございます。
映画館が1館だけ(?)だと、どうしても込みますよね。
そうかな、と思いましたか! 勘がいいですねえ!
私が鈍いだけか…。
ヴァンパイア、考えてみると、弱みがある生き物なんですね~。
観ました。
うん。
あのぼかしはいけませんよね。
私もセリフから想像はしたものの、帰ってネット上でそれを知って唖然でした。
なら、余計にぼかしちゃダメじゃん!
好みは分かれるでしょうが、異種間(?)同士の繋がりが切なくもあり応援したくもなるような作品でした。
>オリーブリーさん
観賞、おめでとうございます!
やっぱり唖然でしたか。調べなきゃ分からない、というのは映画としてマズイですよ。
ヴァンパイアと人間の繋がり、味がありますよね。
雰囲気として、おなじみのアメリカなどの映画と違うところも好きです。今年のベスト上位に入りそうな感じです、今のところ。
懐かしかった
真っ白で真っ暗な北欧の景色が、本当に懐かしくて、泣きそうでした。
凛とした大自然の美しさが、オスカーの無垢な姿に重なって、本当に崇高なかんじさえしましたね。
字幕無しで見たので、言葉は全くわかりませんでしたが、心に全部伝わってくる、いい映画だったと思います。
>ノルウェーまだ~むさん
ああ、懐かしいことなのですね。それは映画で素敵な経験をされましたねえ!
あの自然は、映画の大きな力になっていたと思います。北欧ならではの背景があってのドラマ…。
台詞以上に雄弁な映像、表情、空気など、もってますよね。
ぼかし??
またお邪魔します。
この映画、異色のムードですごく良かったです!
この2人に絆を感じたけれど、エリの獣の本能から、
ロマンと言える甘い関係よりも、
生きていくための宿命を背負った関係に思えました。
ぼかしなんてありました?←ボケてるね~私。
真実を知らない私は、勘違い感想文を書いちゃったかな。
>YANさん
ムードいいでしょう?
吸血鬼族が生きるのは大変ですよね。人間にとっては敵といってもいいようなものですもん。
「闇に隠れて生きる」といったら、どこかのアニメソングになっちゃいますが。
ぼかしてたはずですよう~。それともレンタルは違います?
良い映画でした♪
ヴァンパイア役の子は、原節子さんに似ていませんか?
ビジュアルもストーリーも配役もパーフェクトです!
>マーちゃん
ヘンに知っていると、面白さが減ったり、思ってたのと違うじゃないか、と感じたり。
原節子さん…あまりよく知らないし…どうなんでしょう…。
パーフェクトですか! そういう映画に出会えてよかったです!
トラックバック
http://bojingles.blog3.fc2.com/tb.php/1904-4c291a17
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
さすがスウェーデンというか、ハリウッドぢゃ作られなさそうな繊細さにそそられますねー。
股間のくだりはちょっと飛ばしましたw知ってから観たほうがいいのか、知らずに観たほうがいいのかっ!?