「フロスト×ニクソン」 - 2010.10.28 Thu
フロストにとっては、ニクソンから真実の言葉を言わせたいということよりも、フロスト自身の名声を上げたい思いのほうが大きかったのではないか。
イギリス出身の彼が、アメリカという大きな舞台で活躍したい気持ちは、彼の言葉に表れていた。

ニクソン(左)対フロスト(右)。
(c) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
以下ネタばれ気味に。
3回に分けて行われたインタビュー、初めのうちは百戦錬磨のニクソンに翻弄されて、いいところがなかったフロスト。
ある夜、ニクソンがフロストに電話をかけてくる。そのあとフロストは、資料を懸命に調べ出すのだ。
このターニングポイントは何なのだろう。ニクソンは、なぜ電話をかけたのか。そのことがフロストに火をつけたなら、ニクソンにとっては余計なことをしたものだ、ということになる。
電話をしてまで徹底的に敵をたたこうとした? それで沈没する相手もいるし、逆の相手もいる。
ニクソンは電話をしたことを覚えていないと自ら言っていたが、果たして?

にこやかに現役みたいに手を振ってます。うしろで見ているフロストは苦笑い?
(c) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
ニクソンを演じたフランク・ランジェラは、ニクソンの政治家としてのしたたかさをうまく出して適役。顔は似ていないけど。
フロスト役のマイケル・シーンも、一見、軽そうなテレビショー司会者に合っていた。
軽薄なテレビの男と、なめてかかったニクソン側は、思いがけない落とし穴にあった、という感覚だろうか。
ただ、ニクソン自身は、心のどこかで、洗いざらい話してしまいたい、という気持ちがあったのではないだろうか。
結局、話してしまっても、完全に政界への復帰の道が閉ざされただけで、ほかには、たいしたダメージはなかったのでは?
それまで彼が自分の口から言わなかっただけで、ほかの世界中の人には、なんとなく、わかっていたことなのだから。
映画としては、政治がどうの、というよりは「対決」のエンターテインメントになっていて面白い。
舞台で演じた主役ふたりが、そのまま映画に出演したので、演技としても安定したものが楽しめた。

ニクソンの腹心の部下を演じたのは、ケヴィン・ベーコン。好演。
(c) 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
(10月23日)
FROST/NIXON
2008年 アメリカ作品
監督 ロン・ハワード
出演 フランク・ランジェラ、マイケル・シーン、レベッカ・ホール、ケヴィン・ベーコン
参考:フロスト×ニクソン@ぴあ映画生活

好き度☆☆☆★(3.5点。満点は5点)
● COMMENT ●
弊記事までTB有難うございました。
>オカピーさん
ランジェラというと、私も映画名としては「ドラキュラ」を思い出しました。
貫禄のある演技してますねえ。
ドキュメンタリーっぽいのは、関係者のインタビューが、たまに入るところですね。
あれは私は、なくてもいいのではないかと思いましたが、周囲の人々がどう思っていたかを少し補完したい、ということかなと考えました。
いつの時点の話か、というのは気になりませんでしたよ。
でも素直に認めたくないから覚えてないなんて。。。
今作、もっと退屈かと思ってたのに、意外に引き込まれました♪
>わさぴょんさん
しゃべってしまえば、気が軽くなるぞ、吐いちまえよ。と刑事にカツ丼でも差し入れられたのでしょうか。(笑)
ウォーターゲート事件に詳しくなくても、楽しめました。
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何だか別人のようです。僕も髪の毛がすっかり薄くなりました(笑)。
映画のほうは当方も割合評価の高い☆☆☆★を出しましたが、その割に文章では色々文句を言っています。
二人の丁々発止の対決は見応えがある一方で、疑似ドキュメンタリーの手法を一部に用いたのが気に入らなかったんです。あれで却っていつの時点の視点なのかぼけてしまった感がありましてね。
僕の周囲はそんなことは大したことではないと仰る人が多いですが、どうも性格的に気になるもので(笑)。