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2023-10

「アンチクライスト」 - 2011.05.07 Sat

ラース・フォン・トリアー監督は素直すぎる。表現が行き過ぎたとしても、自分の思うところを映画に留めずにはいられないのだろう。

狙って、やっているのか。そうではないと思うが、たとえ、そうであっても彼の作品を見るのはスリルだ。

蠢き

結果的に、つまらなかったとしても、並みの映画とは違って、それなりに心はざわめくものがある。…または、心をざらつかせるものがある。

トリアーの過去の作品すべてを見ているわけではないが、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は見事なもので、それから注目するようになった。
ほかにはない映画。何はともあれ、その点は貴重だと思う。映画の山の中に、決して埋もれない作品群。普通じゃないから、見ておきたいのだ。
「ダンサー~」は衝撃度はもちろん、ミュージカルとしても見過ごせないものだった。

性

その後、数本を経て、2009年作の「アンチクライスト」。
すぐに公開にならなかったのは、映画を観れば納得。よく日本で劇場公開してくれたものだ。

冒頭の美しいモノクロスローモーション場面で、性(生)と死、ドラマの柱になる観念が、さっそく「対称的」に提示されている。
トリアー監督は、うつ病の自己治療的な意味もこめて映画を製作したらしいが、このストーリー、彼の頭の中をさらけだしているようなものではないのだろうか。
いったい、この人は、どんなことを考えているのか、と観客は楽しめばよろしい。でも、楽しむどころか嫌悪を抱く観客もいるから、難しい。

森

森は恐ろしいところ、というのは、たぶん西洋ではよく言われていることだと思う。
夫は子どもを事故で失って精神的に参っている妻を、森の中の小屋に連れていった。これは…やばい、と思いましたよ。
しかも夫は、妻とまったく違って、子どもを失ったことが平気なのかと思えるくらいに普通にしているように見える。
これは、いかんのじゃないですか。妻、キレますよ? キレないまでも不信、やがて憎しみの心が生まれてきてもおかしくない。

やがて妻の仕事の研究内容がわかったり、動物がしゃべったり(このシーン好き! 画像を載せました。画像じゃ、しゃべってるのかどうかわからないですが。こういう、ハッタリ、インパクトが強いのが私は好きなのさ)、どんぐりが騒音状態で屋根に落ちたり、もう、神経、ざわめくなったって無理です。

予言

狂気へ向かう妻。
そそりたつものを見て、阿部定みたいなことをしなかったのは男としては幸いだが、なぜ、あそこから血が噴き出したのかが、よくわからない。暗喩か?
ちょんぎらなかったのはいいが、そのかわり、ほかの部分にとんでもない痛いことをしてくれる。男を足止めしたいから、だろうけれど、その方法は、まさに常識はずれもいいところ。

そのうち、冒頭のシーンで隠されていた真実が、映像で現され、そうか、そういうことだったのか、そりゃ深刻にもなるよ、とわかる。
それで彼女は自分の性を、あれだけ嫌悪もするように…。

脅威

ラストのアンチクライストの文字、t が雌をあらわす印の♀になっていた。
反キリストならば、悪魔のようなものか。女性がキリストに敵対するものだったり、悪魔だったりするのか?
そして、下山する男と反対に、登ってくるもの。
意味深である。なんとなくわかったようで、わからないようで。

何考えてんの、トリアーさん。
でも、3人の賢者のバリエーション(?)とか、アダムとイブかい?とか、いろいろと、ちりばめられていそうな意味(寓意)を想像することもできて、刺激的だったよ。結局あんまりわかんないけど。

不通

最後に、触れないわけにはいかない。
シャルロット・ゲンズブールさんの演技は、すごすぎる。(次回作もトリアー監督と組むって!?)


All pictures (c) Zentropa Entertainments 2009

(3月5日 シアターN渋谷)

終末

ANTICHRIST
2009年 デンマーク・ドイツ・フランス・スウェーデン・イタリア・ポーランド作品
監督 ラース・フォン・トリアー
出演 シャルロット・ゲンズブール、ウィレム・デフォー

参考:アンチクライスト@ぴあ映画生活
「アンチクライスト」の映画詳細、映画館情報はこちら

好き度☆☆☆☆(4点。満点は5点)

● COMMENT ●

予告編を見てみましたが、かなりの問題作のようですね。
タイトルがタイトルだけに、キリスト教との関わりも深いのでしょうか。
それにしても、ウィレム・デフォー、年をとりませんね。




シャルロットファンの僕ですが、観るのが正直怖いです。

つーか、僕の生息地域にはまずかからない映画のような気もする。

>kiyotayokiさん

こんばんは。
精神的なところにも重い題材があるのですけれども、センセーショナルには違いないです。
また、ヨーロッパの多くの国では、どうしてもキリスト教は切り離せないのでしょうね。映画で描かれると私などには、わかりにくいのですが。
デフォーさん、昔から、あんな顔だったような…(しわが増えただけ? 笑)

>takさん

こんばんは。
トウキョーでも数館しか、かかってないはずです。
いやー、ファンなら見届けないと! 追いかけてでも…?

ベスト10から飛んできました。おもしろそう!レンタルになってくれるかなあ。見たいです。

>とーふさん

ありがとうございます。
10本中、これに反応がきましたか。賛否両論、受け入れ派、嫌悪派、まっぷたつな問題作ですよ。
9月7日発売予定なので、レンタルにもなるでしょう。

ボーさん、こんにちは!

これを映画館で観たとは、心がさぞ ざわめいたでしょうね~

何を意味しているのか分かり辛かったです。
頭の中に???が飛び交うんだけれども、
衝撃の展開に驚き、映像の美しさに驚き、
しっかりと心がざらつきました。

>YANさん

おはようございます!
はじめ、スマホのメールでコメントを見て、何の映画かな~?と思いましたが、これでしたか!
いや~、こんな、きわどい映画でも、レンタルあるんですね。(そりゃそうか)
トリアーからは目が離せません。

お久しぶりです(^^)

冒頭のシーンで隠されていた真実・・・・なんだっけ^^;

>結果的に、つまらなかったとしても、並みの映画とは違って、それなりに心はざわめくものがある。…または、心をざらつかせるものがある

これすごく納得です!
そうそう、そういうのを求めてるんですよ!
いくら面白いと言われても、他にはない「何か」がなきゃツマラナイんですよね~

で今作、内容を理解したとは言えませんが(´Д`)
間違いなく私の心に杭を打ち込んでくれました・・・

>わさぴょんさん

うわー! おひさしや!
おはようございます。お元気ですかっ!

隠されていた事実とわっ!
私も記憶が薄れましたが、お母さん、落ちるのを見てた(危ないと気づいてたけどエッチしてたから止めにいかなかった)ふうでなかったですか?

そう! スペシャルなモノが見たいわけです。そういう意味では、ホラー系に行きたいところもあるのですが、普通(?)の映画優先で、手が回らないんですよねえ。


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☆☆(2)…NOT SO GOOD.ちょっとなあ…。
☆(1)…BAD!いいかげんにせい!
という感じ。★を0.5点とします。星5つは、ほとんどつけませんから、4.5点なら最高と言えます。 自分にとって面白いかどうかが重要で、世間の評判や、意義がある映画である等々は重要視しません。
好きだなあと思ったら3.5点に星が到達。


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(忘れた)。


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