「鳥」 - 2011.12.21 Wed
背景に流れる、いわゆる映画音楽はない。
鳥の声や羽ばたきを電子音でも作り出して、不気味な効果を上げている。音の製作そのものにはタッチしていないようだが、ヒッチ作品にはおなじみのバーナード・ハーマンが監修。

テレビCMで見出されたというティッピ・ヘドレン。もちろん、ヒッチコック好みな金髪だ。(本作のあと、ヒッチコックは「マーニー」〔1964年〕にも彼女を起用している。)
彼女は、男(ロッド・テイラー)に少々やりこめられると、見てらっしゃいとばかりに逆襲(?)を企てる。

社長令嬢という役柄のせいもあるのだろうが、負けん気が強いというか。そのへんが可愛い、と思う男もいるのでしょうけれど。
この「逆襲」、というより、いたずら心イコール恋心へ…というわけだが、そんなやりとりが前半ずっと続く。
鳥の攻撃はないのか!?と思っていると、いきなり! 来るのである。まずは軽く。

教師役はスザンヌ・プレシェット。「恋愛専科」(1962年)などに出演した女優。
ブロンドじゃなくて黒髪のせいか、ヒッチコック映画ではヒロインにはなれないと最初から想像できそう…。結果も…でしたね。
母親役がジェシカ・タンディ。「ドライビングMissデイジー」(1989年)で、80歳にしてアカデミー主演女優賞をとった人。本作でも、いい味を出していますね。
そして娘役はヴェロニカ・カートライト。そうです、「エイリアン」(1979年)で女性乗組員ランバートを演じた女優さん。
ロッド・テイラーは最近の「イングロリアス・バスターズ」(2009年)でもチャーチルを演じているし、今になってみると、すごい配役だ。

予兆に続いて、後半になると、家、小学校、町…と襲われてくる。
ヒロインが集中して襲われるシーンは「サイコ」(1960年)ばりのサディスティックな恐ろしさがある。
襲う理由が分からないのは怖い。あいまいにしたせいで、いろいろと想像できるし、深みも出る。
ラストシーンも、なぜ○○できたのだろうか? と思っちゃうよね。
(12月18日 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

THE BIRDS
1963年 アメリカ作品
監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 ティッピ・ヘドレン、ロッド・テイラー、スザンヌ・プレシェット、ジェシカ・タンディ、ヴェロニカ・カートライト

出たがりヒッチコックは、映画が始まってすぐに登場。
好き度☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
和訳の問題点
昨年でしたっけ、NHKでヒッチコック特集やってくれたので、ユニバーサル版DVD持っているにも拘らず録画しました。そして比較してみたら、日本語字幕のニュアンスが微妙に異なる点に気がつきました。冒頭のペット店でティッピとロッド・テイラーが出会う場面の会話。店員だと勘違いして、細かい注文を入れるシーンです。ユニバーサル版では、「大きすぎてもいけないし、小さすぎてもいけない」となっていますが、NHK版では「熱々すぎてもいけないが、冷たすぎてもいけない」と、和訳が全く違います。つがいの二羽の鳥の状態についての表現ですが、気になったのでユニバーサル版の英語字幕で確認しました。すると、「demonstrative」と書いてましたので辞書を引くと、「愛情などの表現が露わ」となっており、NHK版のほうがより近い表現と言えるのでは。ユニバーサル版のほうは「意訳」というか「誤訳」に近い。
>ヴェロニカ・カートライト嬢。
「エイリアン」の人とは知りませんでした!確認してみます。
>ロッド・テイラー
まだ現役ですか? 彼を見ると反射的に「タイム・マシン」を連想してしまいます(笑)
>ジェシカ・タンディ
「ドライビングMissデイジー」をつい最近観たばかりです。モーガン・フリーマンが良かったなぁ。
ヒッチ先生の作品には「ブラック・ユーモア」がちりばめられている点が面白い。町中が鳥で大騒ぎしているのに、レストランでフライド・チキンを注文する客がいる(笑) 「フレンジー」でも刑事の奥さんが自慢の手料理をご主人にふるまう場面があります。肉の骨がポキッと折れる音がするシーンでは、被害者の殺害された場面の詳細を尋ねるので、とてもブラック(笑)
それと以前も触れたと思いますが、「ロケ撮影とスタジオ撮影のつなぎ」が絶妙。
冒頭の、ティッピがペット店に入る場面。「サンフランシスコ」と描かれた看板を介してスタジオ場面になる。あとボデガベイの学校の丘の上を登ると、そこはスタジオ。
この作品はその後、数々の亜流を産み、動物パニック映画というジャンルまで作りました。でもこの作品を超えたものはまずありませんね。
そもそもこの作品が凄いのは、鳥は鳥でも、鷹や鷲などの「猛禽類」でなく、「小鳥」が怖くなるという演出の上手さにあるわけで。まぁ、小鳥も先祖は恐竜らしいですからね。
>BJさん
>又左衛門さん
なるほど、その訳はNHKのほうがいいですね。大小とは違うでしょう。誤訳は怖いですね。字幕担当者の仕事は大変です。
カートライトさん、本作は子ども時代なので、あ、「エイリアン」に出たのと同じ人だ、とはパッと分からないかもしれません。
レストランでフライドチキン…気づいてなかったです。(苦笑) カモメを食ってたなら気づいたかもしれません。(爆)
学校の丘を上ったところの背景、絵だ!と分かりました。絵だと知らずに見て、ですよ。
大きい画面だと分かりやすいのでしょうね。ただ、注意してみなければ気づかないとは思います。
鳥が恐竜から進化したものとは、最近知ったことですが、そう思うと多少恐ろしいものがあります。もし、意思を持って襲ってきたら、イヤですね。
カートライト姉妹
IMDbで検索すると....なんと妹さんが、あの『サウンド・オブ・ミュージック』に出ていたとか! しかもトラップ・ファミリーの娘役で。知らなかった。ヴェロニカさん、IMDbの写真では、しわだらけのおばあちゃん!びっくりというか、がっかり。
私の好きな「ウルトラQ」のエピソードに「鳥を見た」というのがあります。ある日少年が小鳥を見つけて飼いはじめる。しかしその鳥は、巨大化する伝説の鳥だった....
>又左衛門さん
私は初めは「鳥」に出てた子って「サウンド・オブ・ミュージック」の人か、と思ってしまいました。
「ウルトラQ」、何本か見たはずですが、ほとんど記憶はないです。カネゴンくらいは、うっすらと…。
「日常に潜む恐怖…」
↑あらすじの「見てらっしゃい」という表現が、笑えます。
こういうところが、グレイス・ケリーとの違いかも…。
本来、頼れる存在であるべき、保安官や、鳥類学者のおばあさんとかが、全く当てにならないところが、一番の「恐怖」

これが「猫」

「虫」だったら、正視できなかっただろうな…。
メイキングに因ると、カラスたちは、卵からお世話して、調教したそうですね。
名演技でした

ど~でもいいことですが、TV

>モペ改め「謎の」ミトンさん
ちょっとプライドが高いのです。でも、どんどん(鳥の)被害者になっていって、様子も変わりますね。
猫が襲ってくる!? トラ科だし、おっかないかも。
ねずみが襲う映画はありましたね。「ウイラード」「ベン」でしたっけ。
タマゴから世話したカラスですか! 至れり尽くせりな…(そういうことではない、ですね。)
私は、食洗なんてものは、今でも、ぜいたく品だと思っていますよ。でも、食器の量が多かったら便利かもしれないな~。
エキストラに混ざっていたかどうかは…?(←教育上、よろしくないような…)
現在、ヴァン吉っつぁん(=アントニオ・ヴァンデラス氏)の姑さんということにもなります

新作の「ヒッチコック」の予習も兼ねて“わざわざ”「鳥」をみて、準備万端

しかも、今のところ、レビュー評価が、あらら…?
こちらでアップされるのを密かに期待しています(って、書いてしまったら“密か”ではありませんが)。
>モペ改め「謎の」ミトンさん
評価、あらら状態ですか? ヒッチに興味があれば、悪くないと思いますけどねえ。
で、予習だったら「サイコ」を見たほうがよくないですかっ?
ティッピ・ヘドレンさん、以前はティッピーと表記してましたが、名前を知ったときに「ティッピー? へんな名前」と失礼なことを思いました。
そんなに美人じゃないけれど。って思ったり。(また失礼な)
そうかー、メラニー・グリフィスさんやヴァンデラス君へと、脈々とつながっているんですねえ。
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