「ウエスト・サイド物語」 - 2014.01.24 Fri
以前、ホームページに載せた文章を、(注)として多少コメントを足して再掲してみる。手抜きじゃないよー。HPのほうには今も掲載しているけど、ブログのほうしか読まない方も多いだろうから。(と言い訳しておく。)
以下、2003年1月26日(日) ル・テアトル銀座で観賞したときの感想。
ニュー・プリント、デジタル・リマスター・バージョンで甦った名作ミュージカル。
音楽とダンスの躍動感と迫力が、荒削りでも圧倒的。(注:当時は「荒削り」と書いたけれど、ダイナミックさがそのように見えるだけではないかと今は思う。)
1957年初演のブロードウェイ・ミュージカルの映画化。
曲目に沿って、感想を書いてみる。
序曲(Overture)
縦の線がスクリーンの中央に数本映る。ソウル・バスのデザイン。これが何かは、曲の最後に分かる。序曲が流れる間、画面は色を変えていく。ソウル・バスが手がけた映画タイトルは、他に「めまい」「七年目の浮気」「黄金の腕」などが有名。
序曲がある映画は、これから見応えのある大作が始まるぞ、という感じがある。聴いているうちに、だんだん本編へ向けて、気分が盛り上がってくる。(注:今回は「マリア」のメロディが流れてきた時点で、もう感激して泣いていました。今の映画では「序曲」は、ほぼ、ないですよね。)
プロローグ(Prologue)
音楽とダンスだけでジェット団とシャーク団の争いを表現していくテンポの良さ。音楽にピタリと合ったダンスと、シャープな編集のつなぎが、いまも斬新でカッコいい。
ロバート・ワイズ監督は、映画編集者から監督になった人。だから、編集が素晴らしいのは当然なのかもしれない。ちなみにワイズ監督は、4年後には「サウンド・オブ・ミュージック」という、同じくミュージカルの大傑作を生み出すことになる。

ジェット・ソング(The Jet Song)
ジェット団が、オレたちは最高なんだ、と歌う。荒削りな歌唱が、いかにも突っ張っているチンピラっぽくていい。
ジェット団のリーダー、リフ役はラス・タンブリン。MGMミュージカルの「略奪された七人の花嫁」(1954)でも見せていたアクロバティックなダンスが、この映画でも随所に見られる。
なにか起こりそう(Something's Coming)
トニーが、この後に起こる何かへの期待に弾む心を歌う。期待感というものが、よく出ている曲調と歌いっぷリ。
トニー役のリチャード・ベイマーは、「終着駅」(1953年)、「アンネの日記」(1959年)などに出演していた。
体育館でのダンス(Dance at the Gym)
マリアとトニーが出会う。画面の左右に2人が立ち、お互いを気づいて見つめ合う。2人の間にはダンスを踊る何人もの人間がいるが、2人の姿以外は、すべてぼやけて映る。お互いのことしか目に入らない2人の気持ちを、鮮烈に表したシーン。
マリア役のナタリー・ウッドは、子役から活躍して、ジェームズ・ディーンと共演した「理由なき反抗」(1955年)、ジョン・フォード監督の「捜索者」(1956年)、エリア・カザン監督の「草原の輝き」(1961年)などに出演、すでにトップスターだった。
マリア(Maria)
トニーが歌うラブソングの名曲。好きな人の名前を知って、その名を連呼して歌い上げる。一途で純粋な恋心と、美しいメロディは胸を打つ。私は泣けます。
去年(注:2002年)の紅白歌合戦でも、オペラ歌手が歌っていて、感動的だった。 (注:このミュージカル映画の中では一番好きな曲かも。)

アメリカ(America)
これも有名。プエルトリコから来た移民にとって、アメリカとはどんなところなのか。シャーク団が男女に分かれての掛け合い。アメリカのいいところ、悪いところを、ユーモアと皮肉を交えて歌い踊る、元気で楽しい曲。リタ・モレノ、ジョージ・チャキリスの見せ場のひとつ。
ミュージカル・シーンの監督はジェローム・ロビンズが担当したが、この曲だけはロバート・ワイズが手がけたという。
アニタ役のリタ・モレノは、「雨に唄えば」(1952年)、「王様と私」(1956年)といったミュージカル映画にも出演していた。
シャーク団のリーダー、ベルナルド役のジョージ・チャキリスは、「紳士は金髪がお好き」(1953年)、「ショウほど素敵な商売はない」(1954年)でマリリン(言うまでもなく、ミス・モンローのことだ)のバックで踊っていたという幸せ者。私が好きな「ブーべの恋人」(1963年)に出演するのは、この後だ。
トゥナイト(Tonight)
マリアとトニーのラブソング。これも名曲。トニーがマリアのアパートへやってくる。マリアが非常階段に出てきて恋の言葉を交わす。「ロミオとジュリエット」のバルコニー・シーンの変型だ。恋し合う2人が、対立するファミリー同士ということなど、物語のところどころのベースは「ロミオとジュリエット」。
恋する者は磁石のように引き合う。恋する気持ちが盛り上がる曲は、聴いているほうも幸せにする。

クラプキ巡査への悪口(Gee, Officer Krupke!)
クラプキ巡査に小言を言われたジェット団。巡査がいなくなってから、どうせオレたちゃ出来損ないなのさ、と歌う。メンバーがクラプキ巡査や判事などの役になり、歌い手がバトンタッチされ、次々にストーリーが展開していく面白さ。(注:この曲は今回、構成の上手さに改めて感心しました。)
アイ・フィール・プリティ(I Feel Pretty)
恋するマリアのウキウキした気分いっぱいの可愛い曲。友達との掛け合いも楽しい。(注:コーラスの入り方も抜群。)
私って可愛いわ!なんて、恋して有頂天な時にしか言えないわ。
ひとつの心(One Hand, One Heart)
結婚式の真似事をする、マリアとトニーの誓いの歌。短いながら宝石のように美しい。
クインテット(Quintet)
ケンカに向かうジェット団の歌とシャーク団の歌、恋人の帰りを待つアニタの歌、そしてマリアとトニーがそれぞれに歌う「トゥナイト」。各自の思いが重なり合い、5重唱になり、曲のラストに向けて突き進む構成の見事さと迫力は、背筋がゾクゾクする。
ランブル(Rumble)
ついに1対1のケンカが始まる。ケンカのシーンもダンスの振り付け。ここで、思いもかけない悲劇が。(注:ケンカをやめさせるようにと、マリアがトニーに頼まなかったら、事態は違っていたかもしれない。そう思うとマリアの気持ちが切なすぎる。)
クール(Cool)
爆発しそうな感情を必死で抑えているピリピリとした空気が充満した、文字通りクールでカッコいい曲。ジェット団ナンバー2、アイス役のタッカー・スミスの見せ場。
あんな男に~私は愛している(A Boy Like That~I Have a Love)
トニーと一緒にいたマリアに対して、どうしてあんなヤツと、と憤るアニタ。リタ・モレノがパワフルな歌唱力を見せつける。それに答えるマリアの歌のつなぎの部分は、私にはメロディ的に少し変かなと思えるところがある。(注:この後のジェット団のアニタに対する態度、それを受けてのアニタの言葉、それらも悲劇の一因になる。小さな出来事が、つながって、やがて大きな事件を生む。それを防ぐためには、根本を正さなければならないのだろう。)
恋は永遠に(Somewhere)
どこかに2人の場所がある、と歌う。泣かせる。
エンド・クレジット(End Credits)
ここでのスタッフ・キャストの名前の出し方は印象的。観ずに帰る人を目にすると悲しくなる。(注:今回も帰る人が結構いましたねー。)
(1月13日 MOVIX さいたま)
WEST SIDE STORY
1961年 アメリカ作品
監督 ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス
出演 ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、リタ・モレノ、ラス・タンブリン、ジョージ・チャキリス
この記事の分類「映画感想(私にとっての永遠の名作)」についての説明は、こちら。
参考:ウエスト・サイド物語〈ニュープリント・デジタルリマスターバージョン〉@ぴあ映画生活
好き度☆☆☆☆☆(5点。満点は5点)
(c) Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
● COMMENT ●
>モペ改め「謎の」ミトンさん
これでいいんですか?
手抜きだーと言わない?
いやー、そんなにたいしたもんでねえど、やめてけろ。ほめられっと恥ずかしいべ。
…と「あまちゃん」風になってますけど。ほんと、それほどでもねえでがす。
モナコの、というと「泥棒成金」ですよね。私は明日「めまい」してきます。
マンマでは東京へいらっしゃるんですか!? いいなー。そう聞くと私もまた観たくなってきます…。
追記は大歓迎!に決まってるでしょー。
ナタリー・ウッドといえば、マリリンの初出演映画「嵐の園」にも子役で出ていたみたいですね。マリリンは出演シーンがカットされちゃいましたけど。
>たけしさん
DVDなどをチェックすれば分かりますよね。一時停止もできますし。
見てみてください!(人まかせ 笑)
えっ、ナタウが「嵐の園」に出てましたっけ。
それは、また…「嵐の園」、より見てみたくなりますねー。
本当にお好きなんですね
>宵乃さん
いつのまにか、それぞれの曲も馴染み深くなっていましたし、名曲揃いとしか思えないんですよね。
恐らく「ニューシネマ・パラダイス」の親父さんのような映写技師が「このままでは映画館がつぶれてしまう!」と、蔵の中から埃をかぶった名作のフイルムを引っ張ってきた…苦肉の策だったのでしょう。他にも「午前10時の…」に出てきた作品が「いきなり」上映予定ラインナップに揃っていました(涙)。「ウエストサイド物語」の結論って「早死に・無駄死にはしないで、命は大切に」だったと思うので(?)出掛けずに我慢しましたよっ。
で、在宅で動画を見ておりましたら、元・ジェット団の兄ちゃんたちが「魔法にかけられて」に、一瞬だけ出演しているということが分かりました。エキストラにしては、ダンスが上手い爺ちゃんたち←何者?という謎が解けました。英文の記事が愉快で「エイミー(・アダムス)実はギャングと踊っていた」みたいな紹介でした。
という訳で(?)開き直って巣篭もり「勝手にヒッチコック上映祭り(時々007)」を楽しむことにしました!何もする気にならないのは、新型(旧型?)の変な病気なんでしょうか。ボーさんの紹介記事も参考にさせて頂いております。いい薬です(^。^)
>モペ改め「謎の」ミトン
映画館…換気がよくて、人が近くにいなければ、だいじょうぶそうですけど、行ってみないと分からないですからねー。
いまは休業が多いですし。
「魔法にかけられて」は好きだった! じいちゃんの記憶は皆無!
エイミーちゃんは、あの映画で知ったようなものでした。
こんなときに、まだ見ぬ昔の良作を見つけるのは、いい機会だと思いますよ。
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ジョジョ、ジョージ・チャキリス!
Get back,Jo Jo♪(←関係ない)
この記事がこっちに顔を出すのを、ずっと待っていましたよ
何度拝読しても、文章の「構成の見事さと迫力は、背筋がゾクゾクする」です。
私事ですが、来週、モナコのお姫様
「マンマ・ミーア!」を観なければならないので、ミッションが落ち着いたら、追記させて頂きます。
↑が、あまりにもキマッているので、ページを汚しちゃ悪いかな…という遠慮もあるのですが。