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「ハンナ・アーレント」 - 2014.02.09 Sun

考えることの重要さを考えさせられた。

映画の中で、ハンナは考える。タバコをくゆらせて、寝そべって、窓際で、考えつづける。

考える

ネタばれあり(?)

ユダヤ人の強制収容所の問題に関わった人物、アイヒマンの裁判レポートができあがるまでに、長い時間がかかったのも、考えつづけたからゆえだろう。
(哲学者の原稿は時間がかかる、みたいな皮肉を出版側に言われていたけども。)
ユダヤ人自治組織の指導者がナチに協力したこともある、とする記述が反感を呼ぶことも、考えていなかったわけがない。
それでも、彼女は愚直ともいえそうな態度で、自分が考えたことをまげなかった。

裁判

命令に従ったまでです…私は手を下していません…アイヒマンの言葉。
傍聴したハンナが考え至った概念は「悪の凡庸さ」だった。
アイヒマンは思考不能となり、ただ命令に従ったことによって、ホロコーストの巨悪に加担してしまった。
アイヒマンは平凡な小役人だった。最大の悪は、そうした平凡な人間が行う悪であり、動機もなく、信念や邪心や悪魔的な意図もない…。

ただ、戦争という場においては、考えて、倫理的に正しいことをしたら、自分が殺されかねない事態なのは明白で、命を捨ててまで良心に従ってやるのか、命を保つために思考を停止するのか、ということでもあるとは思う。それが「戦争の悪」ではないか。

講義

「考える」ことを止めてしまうことで、人間ではなくなる。
考えずに行動するということは、ある意見を知った場合、その真偽、正誤にかかわらず、乗せられてしまう危険もあるわけだ。
よく考えなければならない。

ハンナ・アーレントという人物を、わかりにくくなく、映画を見た人に知らせるという意味でも、有意義な映画だと思う。

(1月25日 角川シネマ有楽町)

談義

HANNAH ARENDT
2012年 ドイツ・ルクセンブルク・フランス作品
監督 マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演 バルバラ・スコヴァ、アクセル・ミルベルク、ジャネット・マクティア、ユリア・イェンチ、ミヒャエル・デーゲン

参考:ハンナ・アーレント@ぴあ映画生活

好き度☆☆☆☆(4点。満点は5点)


(c) 2012 Heimatfilm GmbH+Co KG, Amour Fou Luxembourg sarl,MACT Productions SA ,Metro Communicationsltd.

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● COMMENT ●

「自分の損になる事にあんなに熱心に取り組んで………変なアーレント!」
ちゃんちゃん

こんばんは

>考える事の重要性を考えさせられた。

おっしゃるとおりの一言だと思います。
1/25にご覧になって、それからじっくり熟成されたのですね。
去年のキネ旬の3位でした。

>ふじき78さん

ヘンナさんというのも、どこかにいるんじゃないかなーと。

>とらねこさん

こんばんは。
キネ旬3位ですか! ちっとも知らなかったです。キネ旬も、なかなかやるもんですね~。

熟成なんて、いやいや、そんな偉いもんじゃないです。単に、遅く書いただけですよう。見た映画は一応書くので、まだまだ書かなきゃいけないものが残っています…。

主張ということ

これは複雑なシチュエーションでしたね。
人道としては悪いことだがそこにいきさつもある、しかしながら同胞への配慮も考えてしまう。
板挟みになりながらもしっかり貫き通すことはなかなかできないことです。

>rose_chocolatさん

ユダヤ人の中にもナチに協力した者がいたということを事実として書いた、その時点で反発を食いますね。
そのあとに、どんな論が続くのかを読んでみなければ、本当は何もいえないでしょうし、ハンナ自身、そのようなことも言っていました。
じっくり考えに考えたあとだからこそ、発表したことを曲げずにいけたのでしょうね。


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