「あなただけ今晩は」 - 2014.09.10 Wed
ルー・ジャコビ演じるバーのマスターの口癖だが、ビリー・ワイルダー監督のファンである三谷幸喜さんが、いろいろなところで使っているので有名になっているセリフかもしれない。
今回上映の字幕では、「余談」うんぬんと訳されていたのが、ちょっと残念。

はじめて見たのがテレビの洋画劇場で、今度で8回目の観賞となる。
なにがそんなにいいのかって考えてみると、やっぱり、まずは、シャーリー・マクレーンさんの可愛さ。もう、存在が絶妙というべきか!?

「娼婦」というのも好きですね。いや、説明すると、映画に出てくる、「気のいい娼婦」は「可愛いなー」と思っちゃうんですねえ。シャーリーさんの役のイルマは、「可愛いイルマ」(これが原題でもある)と呼ばれているくらいだし、これで可愛くなくてどうする!ってことですが。
グリーンの衣装、とくにストッキングが、すごく可愛くて印象的。リボンもグリーン。
犬を連れていて、客の気を引くのにも役立っているが、このワンちゃん、お酒好きなのが笑える。
ただし、たばこを吸ってばかりなのは、玉にキズのイルマ。ジャック・レモン扮する「彼氏」にも、タバコは健康によくないといわれている。

ワイルダー監督は、イルマの役を、マリリン・モンローさんで考えていたという話がある。
すでに「七年目の浮気」と「お熱いのがお好き」で主演女優に起用しているから、彼女の魅力をわかったうえでの考えなのは間違いない。
でも、本作の製作前年に亡くなってしまった…。
そんなこともあって、この映画を見ると、マリリンだったら、ここはこんな演技なのかなあ、と考えてしまったりするのだった。

イルマは犬を連れている役柄なので、犬好きで自分でも飼っていたマリリンには、演じるうえでも、ぴったりじゃないか!
ただ、娼婦という役は嫌がったかもしれない。マリリンは、肉体だけの、お馬鹿に見える役は、もうやりたくないはずだから。
イルマは決してそうじゃないと思うけれどね。
シャーリーとマリリンで、どのくらい映画のイメージが変わったか、見てみたかったものだ。

私のホームページのほうには、過去に見たときの感想が記録してあるが、そこから、本作の音楽について書いた部分を引用しておく。
『…この映画を思うとき、私には、自然に、淀川長治さんのラジオ番組が連想されるのです。
1973年から、TBSラジオで「淀川長治ラジオ名画劇場」が始まりました。淀川さん64歳です!
月曜の午後8時ころの放送だった気がしますが、日時ははっきり覚えていません。
淀川さんが、好きな映画のことを自由にしゃべりまくる番組で、映画を見はじめたころの私には、楽しく、また、刺激的な番組でした。
この番組のジングル(おしゃべりとCMが切り替わるときの合図みたいな、短いメロディ、とでもいうのか)に使われていたのが、「ボルサリーノ」と「あなただけ今晩は」の音楽だったのです。番組のスタート時からそうだったかどうかは、はっきりしませんが、短いジングルなので、1回の放送で何回も流れるわけです。そうするとメロディが脳裏に焼き付きます。
だから、「あなただけ今晩は」をテレビではじめて観て、音楽を聴いたときも、「あっ、あの曲だ!」と懐かしく思ったほどで、最初から、とても親密に感じる映画だったのです。』

引用をもう少し。
『もちろん、映画がつまらなければ、そんな親密さも吹っ飛んでしまったのでしょうが、内容も、ジャック・レモンとシャーリー・マクレーンの「アパートの鍵貸します」のコンビによる、最高に素敵な映画、ユーモラスなのはもちろん、いじましいほどの男の純情が心に染みる作品でした。…』
そうなんです! 役者、監督、音楽、(美術なども、そうですが、)ぜんぶOKなんだから、好きに決まってる!

ちなみに邦題の意味、「あなただけに『今晩は』って言う」のか、「今晩はあなただけよ」なのか、わからないなあという気も以前はしていましたが、今はわかります。大人だから。(笑)
話の展開において、なぜ〇〇に気づかないのか、とか、なぜ、そんなことができるのか、とか気にしたらダメ。
元も子もなくなるから。そういうのは置いといて楽しむのである。そういう映画なんである。

「第二回 新・午前十時の映画祭」での上映、日曜日なのもあって、席の3分の2ほどは埋まっていただろうか。
正直、これほど入るとは驚いた。若い人も多くて、感心かつ嬉しくなる。
面白いかどうか分からないけれど、この映画祭で上映する映画は、とにかく観に来る、と決めている方もいるのかもしれないが。
シャーリー・マクレーンさんが、ゴールデングローブ賞女優賞(コメディ/ミュージカル部門)を、アンドレ・プレヴィンがアカデミー賞編曲賞を、それぞれ受賞している。
(9月7日 TOHOシネマズ 日本橋)

IRMA LA DOUCE
1963年 アメリカ作品
監督 ビリー・ワイルダー
出演 シャーリー・マクレーン、ジャック・レモン、ルー・ジャコビ、ブルース・ヤーネル、ホープ・ホリデイ
好き度☆☆☆☆★(4.5点。満点は5点)
この記事の分類「映画感想(私にとっての永遠の名作)」についての説明は、こちら。
参考:あなただけ今晩は@ぴあ映画生活

(c)Metro-Goldwin-Mayer Studios Inc.All Rights Reserved.
● COMMENT ●
>officeroaderさん
訪れるなら、誰が眠るのか前もって調査が必要ですね!
シャーリーさん、最近なら「LIFE!」に出ていましたよ! 長い芸歴でうれしいです。
ウォーレン・ビーティ(昔はこう言っていた)は、どうでもいいです。(笑)
レモンとマクレーン
ジャック・レモンとシャーリー・マクレーンといえば、やっぱり「アパートの鍵貸します」を最初に思い出します。テニスラケットでスパゲティを茹で上げる場面とか。
最近亡くなったアッテンボロー監督の遺作「あの日の指輪を待つ君へ」にシャーリーが出てたんですよ。近々観る予定です。
>又左衛門さん
私は「アパート~」よりも、この「あなただけ~」が好きで、やはり、最初の出会いなど、印象の深さが「好き度」には影響しますね。
シャーリーさん、いまだに現役の作品、機会があれば見てみたいです。
鮮やかなグリーン
なんと言っても、画面にあふれるグリーンが鮮やか!シャーリーの衣装は勿論のこと、アイシャドウやクレジットの文字までと徹底してます。ワンちゃんのリボンもそうなんですね。
多分セットだと思いますが、シトロエン2CVがかっこいい!
そして本編の冒頭、シャーリーが「終わった後」で、自分の経歴を「口から出まかせ」みたいに、色んな客に「同情を誘うように」喋って、チップを弾ませる場面が面白い。こういう風にビリー・ワイルダーって引っ張り込むのが上手いから、ついつい見入ってしまうんですよ(笑)
>又左衛門さん
クレジットの文字も上の画像に載せていますが、統一していますね。
我が家のベースカラーも、じつはグリーンなので、うれしいというオマケつきです。
パリの街も、オールセットで組んだようです。
お客に嘘を言ってチップをせしめるのは、オープニングの音楽にのせて、テンポよく見せていきますね。もう、ここから、見ているほうは楽しくなってしまいます。
ストーリーは自分の感想を読んでやっと思い出した感じですが、楽しい作品でした。
馴染みの音楽がこの映画のもので、さらにボーさんの大好きなマリリンを主演に考えていたなんて聞いたら、好きにならないわけがないですよね。
マリリンだったらどんなイルマになっていたのか、想像するだけでも楽しいです♪
>宵乃さん
ミスターXが川の中から現われるというのが、ちょっと無理があるなあ、と思いますが、まあいいかと。
そうなんです、この音楽が大好きで、マリリンがらみなのもあって、特別な映画のひとつになりました。
マリリンも、うまく演じたことだろうと思いますよ。彼女は演技派ですからね!
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