「荒馬と女」(6回目) - 2005.10.09 Sun
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この映画でのマリリンの印象だ。
黒白映画だから、なおさら彼女の美しさが透き通って見えるのかもしれない。
本作には、人間のさみしさを強く感じてしまう。
マリリンの遺作、そしてクラーク・ゲイブルの遺作、さらにはモンゴメリー・クリフトも飲酒や麻薬のために暗い影を背負っていて、本作の5年後に亡くなっている。
そのような背景を知っているせいで、悲しい印象を強くするのかもしれない。
アレックス・ノースの音楽は切ない。音楽が、映画の雰囲気作りを、強力に助けていた。初めて観たときから、この音楽は忘れられない。
さみしさの雰囲気とともに感じたのは、「散漫」な感じ、だった。
どこか気が抜けているというのか。
今回も、やはりそういう雰囲気は感じた。
撮影当時、マリリンの状態は不安定で、遅刻やすっぽかしが多く、ゲイブルはじめ共演者は、何度も待ちぼうけを食っていたという。
そんな映画製作の悪状況のもとで、もしかしたら映画そのものが集中力を欠いたものになったのかとも考えたことがある。
しかし、この雰囲気が、この映画の正しい形なのかもしれないと、今回は思った。
原題は“The Misfits”。フィットしない、不釣合い、という意味だ。
主要な登場人物の誰もが、何かの心の傷を抱えている。それを抱えながら、他者との関係を探っている。
最後の馬狩りの場面での、男と女の考え方の違いについての説明は明快だが、それとは別に、まず人間としての弱さ、悲しさが映画の芯にある。
散漫に感じるのは、この映画の全編に浮き上がってきている、その人間の弱さ、悲しさのせいかもしれない、と思ったのだ。
だから、これで、いいのではないかと。
もしかしたら、映画製作が遅々として進まなかったがゆえに、一部のスタッフ・キャストに生じた散漫な気持ちが、偶然にも映画のテーマの実現に好影響を与えたのか。
それとも、やはり、すべては演技者の力量、監督の手腕によるものなのか。
私には、その両方があるのではないかと思えてならない。
脚本はアーサー・ミラー。マリリンの当時の夫である。
この脚本には、2人の私生活の反映が濃厚に漂っている。
また、クラーク・ゲイブルは、マリリンが、彼が父親だったらいいのに、と憧れていた男優だった。
マリリンにとっては、他にも、さまざまな葛藤にとらわれた映画でもあったはずで、それが、この映画にそれだけ重いムードを与えてもいるだろう。
だが、マリリンの映画には珍しい、このさみしさ、この重さ、この雰囲気を、これからも、しっかりと受けとめていきたいと思う。
うまく説明できていないけれど、ご容赦のほどを。
(10月2日)
THE MISFITS
1961年 アメリカ作品
監督 ジョン・ヒューストン
出演 マリリン・モンロー、クラーク・ゲイブル、モンゴメリー・クリフト、イーライ・ウォラック、セルマ・リッター
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評価☆☆☆☆☆(5点。満点は5点)
● COMMENT ●
>dora21さん!
やっとこさ、コメントがついて嬉しいです!!!!!!!!!!
つかなかったら、つまらないので、絶筆しようかと思っていたところです。(笑)
マリリンの主演で、悲しげな映画は、他には「ノックは無用」くらいでしょうか。
「荒馬と女」を、いちばん最初に観たときには、俳優の個人的な背景などをあまり知らなかったと思うのですが、やっぱりさみしい感じは、あったと記憶しています。
この作品のマリリンは本当に綺麗ですね。最後の映画までも、こんな美しさを残してくれて、ありがとう、と彼女には言いたいです。
遅ればせながら・・・
この映画はモノクロですが、とても白っぽいと言うか、余計それで物悲しいイメージがつきまといます(この前コメントで書かせてもらった事と共に・・・)
もし当時のテクニカラーで撮られたらまた、イメージも変わっていたのでしょうか?
マリリンの白とサクランボの柄(だったかな?)のドレス姿とか、鮮やかに見えるでしょうね。
この映画、TVの吹き替え版のみしか持ってなかったんですが、この度やっとDVDボックスを購入しました。
プロ野球シーズンが終わったらゆっくり浸りたいと思います。
>続けて、uniko@ニャンくんさん
白黒かカラーか。これ、イメージ変わると思います。
この映画は、どうして白黒だったのか、いま思い出せないのですけど。(というか、理由を知らないかな?)
白黒で、淡い夢のような気もしますね。
ボックス購入されたんですね。おめでとうございます。まだ完売になってないんですねえ。(笑)
販売店では見ないけど、オークションでは、よく見ます…。
TBありがとうございました。
また お邪魔させて下さいね~ 宜しくお願いしまっす。
>rabyrinthさん
どんどん遊びにきてくださいねっ! にゃんことも遊んでねっ。
なんか切なかった
マリリンは好きでしたが(帰らざる河ほかの作品では)
この映画のマリリンは、なんか淋しく切なかったです。
ゲーブルが彼女を見る目つきも、慈味深く、悲しげでした。
その頃からケネデイ兄弟との関係も影響していたのでしょうか。
>cqtanakadesさん
内容も音楽も、悲しさ切なさがいっぱいの映画、という印象をもってしまう作品ですね。主演者2人の遺作ということを知らなくても、そんなムードがあると思います。
脚本、俳優から撮影時の雰囲気まで、すべての事が化学反応のように作用して出来あがったもの、と考えます。
この頃にケネディとの関係が始まっていたのかどうか、いろんな説も憶測に過ぎないでしょうから、どうなのでしょうか。
>suetumubananohimeさん
コメントありがとうございます。
私などはマリリン・ファンということが第一にあって、ハッピーエンドにしてほしいと思ったりしますが、ああいう終わり方にすると、余韻は残ります。
人生や人間について考えさせられる映画ですね。
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そういう点ではマリリンの映画では異質です
でもマリリンらしくも感じてしまいます
マリリンの複雑な過去や色んな情報を知ってしまっているかもしれません(詳しくは知りませんが)
私が印象的なシーンはゲーブルの横で眠る(車中)マリリンの寝顔です。信じられないぐらいの美しさだと思います