「ブルックリン」 - 2016.07.30 Sat
いやな人だと思っていたオバちゃんのおかげで、ようやく先に踏み出したヒロイン。
いやな人どころか、これでは、恩人みたいなものじゃないか。
おもしろいというのか、皮肉というのか。

人生は判断の繰り返しで、重要なポイント、きっかけ、転機、気づき…のようなものが訪れることがあり、うまく捉えるかどうかで成功・失敗につながったりする。
といっても、何が成功で何が失敗かわからない場合もありそう。
…なんて真面目な話は置いといて(置いとくのかよ!)、これは、また上質なドラマだった。
映画「静かなる男」「雨に唄えば」が出てきたので、1952年のアメリカだとわかる。
同僚が話題にする「静かなる男」は、アイルランド系の人間が主役の映画だから、そうした遊び心も気がきいていて、にやにやしてしまう。
アイルランドからアメリカに渡る人々。
移民にとっての新天地アメリカが、彼らの目にどう映るのか、この映画のおかげで感覚的に少しわかる気がした。

下宿先では、ひとりの夫人と下宿人の娘たちが、ひとつテーブルで食事をする。
そこでの会話がおもしろい。
あとでキャストを見たら、夫人役は、ジュリー・ウォルターズさん!
いわれてみれば。
私の大好きな「マンマ・ミーア!」での3人娘?のひとりじゃないですか! …気づけよ自分。
家族のいる家を離れて暮らす。
この気持ちは、経験したことがなければ、わからないかもしれない。
自分は母親と地元に残り、妹を送り出す、おねえちゃんの優しさ…。
別れの悲しさや、離れた場所からお互いを想う気持ちが、ぐいぐい迫ってきて、泣かせる。
イギリス系の映画は、こういう端正さ、丁寧さが好みにハマると、感じがいいんですよねー。
シアーシャ・ローナンさんの今後の作品にも注目したい。
以下、ネタばれで。

これからは、ネタばれだそうだ。見ちゃいけないよ。
アイルランドに里帰りしたエイリシュ(シアーシャ・ローナン)が、アメリカで結婚したことを母親にも親友にも話さずにいたことには、なぜ? と考えてしまう。
彼女に好意を寄せているジム(ドーナル・グリーソン)に、むだな期待を持たせてしまうことになる。
結婚前ならば、いまからジムを選んでも問題ないけど、もう結婚しているんだからダメでしょー、と思いながら見ていた。
彼女が結婚したのはイタリア系移民。アイルランド系移民(彼女自身)よりも、もしかしたら世間的には下に見られていたのかなあ、と考えたり。そういう描写は、なかったけど。
イタリア系の男性と結婚したと言うのが恥ずかしかったのか、と。でも、そういうことでもなさそうな…。
飛び出していった故郷だが、いま戻ってきてみると、仕事もあるし、男にも出会った。
居心地もいいし、少しだけ、黙ったまま、楽しみたい。…と思うこともあるんじゃないの!? と一応、解釈。
以前の船旅で、同室の女性に教わった「心得」を、今度は教える立場になる、というのも、エイリシュが前に踏み出した印象を生んでいて、うまい。
ちなみに、エイリシュは Eilis と書く。アイルランド語なんでしょうね。英語読みなら、エイリス となりそう。
シアーシャ本人もアイルランド人の両親をもつ。シアーシャのつづりは Saoirse だ。サオース? 読めない。本人は「サーシャ」と読むのよ、と言ったらしい(「ウィキペディア」による)。
(7月24日 TOHOシネマズ シャンテ)
BROOKLYN
2015年 イギリス・カナダ・アイルランド作品
監督 ジョン・クローリー
出演 シアーシャ・ローナン、ノラ=ジェーン・ヌーン、イヴ・マックリン、エミリー・ベット・リッカーズ、アイリーン・オヒギンズ
参考:ブルックリン|映画情報のぴあ映画生活
好き度☆☆☆☆(4点。満点は5点)
(c) 2015 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
● COMMENT ●
>pu-koさん
新しい地、不安、希望、生活、故国…。
よい映画でした。
先日は、リツイートしていただいて、うれしかったです!
何で結婚を言わなかったのかは、今まさに姉が死んで意気消沈している母を前にしてタイミングを逸してしまったんじゃないですかね。後から言い出すのもバツが悪い話題だし。
>ふじき78さん
はじめに言わなかったら、言い出しにくい、ついつい、そのままに、というのは分かります。
「バックドラフト」見ていますが、まったく、その記憶がにゃいです!
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移民者たちの多くは故郷に思いを残しながら、新しい土地で新しい家族を作って生きることを選んだんでしょうね。
迷いながらも前を向こうとするヒロインが愛おしかったし、ほろ苦さもよい味付けでした。