「日曜日には鼠を殺せ」 - 2017.11.02 Thu
三度(みたび)、宵乃さんちの第3回 秋の夜長のミステリー企画参加作品でございます。
本作、原題は“Behold a Pale Horse”で、ヨハネ黙字録の「見よ、蒼ざめたる馬あり、これに乗る者の名を死といひ、陰府(よみ)、 これに随(したが)ふ」から。
邦題は原作のタイトルどおりらしく、安息日の日曜日に鼠を殺した猫は、月曜日に処刑されるんだよ、という格言みたいなもの。

スペイン内乱から20年後、ゲリラの闘士だったグレゴリー・ペックは遠く離れたフランスの地で暮らす。
かつての宿敵、アンソニー・クインは警察署長。ペックの母が危篤でスペインの病院にいることを知り、ペックをおびき出そうと考える。
神父オマー・シャリフはペックの母に会い、罠だから来てはいけない、との伝言をことづかる。
神父の逡巡。伝言を受けた子ども(親の仇の署長をペックに殺してほしいと思っている)の迷い。
母の危篤を知らせに来たペックの親友は、罠だとは言っていない。神父の話を聞いたペックは、親友と神父の伝言のどちらを信じるのか。
それぞれの心のうちのドラマが面白い。
ペックの決断は。
最後の選択は人間くさくて良い。
悪いことすると、自分がやられちゃうよ、という原作タイトルではなく、死を伴った馬という原題を付けた映画であることを考えれば、本作、ペックを否定はしていないと思われる。
モーリス・ジャールの音楽は奇妙に聞こえるところもあり、2年前の「アラビアのロレンス」的な風味が見えてしまう。
そういえば、アンソニー・クインもオマー・シャリフも、「アラビアのロレンス」に出演していたねえ。
ジンネマン、硬派ぽくてピシッとしていて甘くないのが映画としていいよな~と思える監督。
(10月30日)
BEHOLD A PALE HORSE
1964年 アメリカ作品
監督 フレッド・ジンネマン
出演 グレゴリー・ペック、アンソニー・クイン、オマー・シャリフ、パオロ・ストッパ、マリエット・アンジェレッティ
好き度☆☆☆★(3.5点。満点は5点)

こういうシーンはない。3人そろってのスチル写真。
(c) Columbia Pictures
● COMMENT ●
蒼ざめた馬
補足
16本というのは、あくまでも某サイトのデータです。
>又左衛門さん
「熱いトタン屋根の猫」みたいなイメージで、戦争とは関係ない人間ドラマなのかと考えていましたが、内戦がらみとは予想もせず、でした。
ジンネマンなら「真昼の決闘」を思い出しますが、もはや確固たるポジションにいる監督に思えます。
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これもやっぱり、「録画したまま」です(笑)
このタイトルだけ聞くと、まるでチンプンカンプンです。原題を教えてもらって、ようやく少しだけ分かったような、分からないような....
そもそも「黙示録」そのものが日本人には馴染みがない。でもキリスト教社会では、一般常識みたいに浸透しているのでしょう。「黙示録」にちなんだ映画も多いですね。
クリスティのミステリーにもありますし、クリント・イーストウッドの作品にも「ペール・ライダー(Pale Rider)」というのがあります。こちらも「録画したまま」だったんですが、冒頭だけ少し観ました。イーストウッドは「蒼ざめた」というよりも「蒼白い」斑点のはいった馬に乗って登場します。ここでこういう馬に乗っているという意味は「死神」みたいな暗示でしょうか。冒頭の悪党どもを成敗するのでしょう、多分。
ジンネマン、好きな監督のひとりですね。
遺作の「氷壁の女」に関しては何回も触れてますが、「ジュリア」も昔から好きな作品。特に音楽がいいです。
しかし意外にも、ジンネマンって生涯で16本くらいしか撮ってないんですか?
完璧主義なのかも。