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2020-08

「ブロンド」(上)(下) ジョイス・キャロル・オーツ - 2006.03.18 Sat

「ブロンド」のカバー
上下巻合わせて1300ページ近く。1日に50ページほどしか読まないので、読了まで1ヵ月少々かかった。
力作であり、見事な文学作品だと思う。
オーツは、アメリカではノーベル賞に最も近いと言われる女流作家。
この小説は、ノーマ・ジーン(マリリン・モンローさんの本名)(1926~1962)の一生を追っているように読めるが、あくまでも伝記文学であり、作者の創造(想像)した部分が多い。

前書きに、『「ブロンド」はフィクションという形を借りて「人生」を徹底的に蒸留したもの』とあり、『一部で全部を表す「提喩」が本書の基本原理』と言っている。
つまり、ノーマ・ジーンのことを書いてはいるが、じつは、それは「女優」の話なのであり、「女」の話であり、「人間」の話である、ということなのか。

ノーマ・ジーンの一生は波瀾に富んだものであり、そこに作者の奔放で力強い描写力が加わって、ストーリーに迫力と緊迫感を与えていく。
その力量は、ノーマ・ジーンの心のうちを、息苦しいほどに、同じように読者に体験させようとする
いかにもノーマ・ジーンが、このように生きてきたのではないかと思わせる説得力が充分にある。いや、ありすぎる。

序盤の、母親グラディスとの場面は強烈だ。精神を病んでいたグラディスと2人で暮らすノーマ・ジーン。そのことがノーマ・ジーンの心に及ぼす影響は計り知れなかっただろう。幼い頃の体験が大人になったときの性格を決める、とはよく言われるが、本書を読むと、そのことが、うなずけてしまうほど。

ノーマ・ジーンが子どもを生めなかったこと、とくに「劇作家」の子を流産したことが、彼女の人生に大きな影響を与えたように、読んでいて感じられた。
彼女には妊娠中でも、いつも、自分は子どもを持てないのではないかという強迫観念があったのではないか。
母親になることを強く望み、母親になることを同様に強く恐れていたのではないか。
このあたりの彼女の気持ちは想像するしかないが、やはり、とても悲しいものがある。

ノーマ・ジーンが日本に来た時に、群集が、モンチャン、モンチャン、モンチャンと叫んでいたという記述があった。
来日時に日本人が彼女のことを「モンちゃん」と呼んでいたのは知っていたが、改めて、こうやって書かれていると、昔は変な呼び方をしていたんだなあと思ってしまう。
彼女は、ホテルの外に押しかけてきた日本人たち、みんなに向かって言うのだ。『わたしがモンチャンです。ナガサキのことを許してください! ヒロシマのこと、許してください! 愛してます』
ああ、なんという無垢な優しさに満ちた女性であることか!




各章のタイトルには、彼女が映画で演じた役名も使われている。それは、ノーマ・ジーンの人生の中からオーツが選んで書いた部分でもあるわけで、すなわちそれは、オーツがノーマ・ジーンの人生にとって重要であるとした映画なのかもしれない。
つまり、「アンジェラ」は「アスファルト・ジャングル」、「ネル」は「ノックは無用」、「ローズ」は「ナイアガラ」、「シェリー」は「バス停留所」、「踊り子(ショーガール)」は「王子と踊子」、「シュガー・ケーン」は「お熱いのがお好き」、「ロズリン」は「荒馬と女」

登場人物は、実名のものと、名前を変えているものがある。
たとえば、マリリンのエージェントだったジョニー・ハイドは、「I・E・シン」となっているし、マリリンを見出して写真を撮ったカメラマン、ヌードカレンダーを撮ったカメラマンの名前も違う。
プロデューサーや監督の名前は、頭文字のアルファベットで書かれているし、ジョー・ディマジオは「元野球選手」、アーサー・ミラーは「劇作家」となっている。
実名を使った場合と使わない場合の区別は、何だったのだろう。

また、チャールズ・チャップリンの息子とエドワード・G・ロビンソンの息子とノーマ・ジーンの3人で恋愛関係にあり、ノーマ・ジーンは妊娠した、とされているが、これは、まったくの創造なのだろうか。分からないが、興味のあるエピソードだった。

「ブロンド」は2001年に、4時間のテレビドラマになっている。主演はポピー・モンゴメリー(Poppy Montgomery)という人。そして、なんと、アン=マーグレットさんがノーマ・ジーンの祖母デラ・モンローを演じている。他には、エミリー・ブラウニング(「ゴーストシップ」「ケリー・ザ・ギャング」「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」)さんが、ノーマ・ジーンの孤児院時代の友人フリース役。
このドラマ、日本では以前にどこかの局で放送したのだろうか。もしも、まだであれば、NHKあたりで買い付けてほしいものだ。
(ポピー・モンゴメリーのノーマ・ジーンは、下のURLに映像があります。リンクはしていませんので、コピー&ぺーストして、見てください。そんなに似てはいないですね。)
http://us.imdb.com/gallery/hh/0599889/HH/0599889/Poppy2.jpg?path=pgallery&path_key=Montgomery,%20Poppy

普通の人間には滅多に訪れない人生の大波に、否応なく流されていってしまったノーマ・ジーン。
作者は彼女のことを、よく調べていると思う。
とにかく、ノーマ・ジーンが可哀想で可哀想で仕方がなかった
マリリン暗殺に動いた情報提供者の「R・F」。オーツが考えていた、この人物は誰なのか、とても知りたい。

電車の中で読んでいて、泣けてしまい、読むのを中断してしまった個所がある。最後に、その部分を紹介しておこう。
大統領に捨てられたあと(この大統領のことは、マリリンについての、いろいろな本を読むたびに、大嫌いになっていく。)、心も身体もボロボロになったノーマ・ジーンが、何年もの間、誠心誠意、彼女のメイクを担当してきたアラン“ホワイティ”スナイダー(1914~1994)に言う。

『(前略)…そしてノーマ・ジーンは、震えるようなマリリン・モンローの声でこう彼に言った。冗談でもないし、面白半分に言うのでも、ふざけて言うのでもないの。とても真面目な話なの、だから、ここだけの話よ。「ホワイティ、約束してくれる? わたしが」―彼女は死んだらと続けるのを躊躇(ためら)った。ホワイティの繊細な心を考えると、いなくなったらという言葉さえ言えなかった―「そうなったら、マリリンにメイクしてくれる? 最後のおつとめに?」
ホワイティはこう答えた。「ミス・モンロー、約束します」

ここだけ抜き書きしても、どうということはないが、ずっと読んできたあとでは、もはや、泣くのを我慢することはできなかった。

(以上、引用の訳は、古屋美登里さんによる。)
(3月5日読了)

● COMMENT ●

ひゃー!

も、もんちゃん・・・・!!サイコーです、その呼び名。
もんちゃん!!これからマリリンを「もんちゃん」と呼んでもいいですかっ!もんちゃーん!!!

ああ、興奮しちゃった。
ボーさんが泣けたという箇所、記事を読んでるだけでウルウルきてしまいました。可愛くて素直で悲しい人だったのですね。

>紅玉さん

ありがとうございます!
ぜひ、もんちゃんと呼んでください。
昔の日本人は、マリリンと名前を呼び捨てにできなかったのかも。モンローのほうに「ちゃん」付けして親しみを表したのでしょうね。
「おモンちゃん」というのもあったみたいですよ。

ウルウルしてもらえて嬉しいです! 少しでもノーマ・ジーンに興味をもってもらえたら、いいなあと思います。(彼女の映画にもね!?)

わー、大作読んだんですね!
あまりに厚いハードカバーで手を出すことが出来ない私…でしたが、ボーさんの感想を読むと読みたくなっちゃいますね。
そうか、かなり忠実にしっかり小説化されているのですね。
ホワイティへの頼み、聞いた事がありますけど、やっぱりそんな風に書かれてると…
抜き書きだけでもウルウルしてしまいますね(;_;)

ところで演じた方はボビーではなくてポピーPoppyというんですね。初めて聞いた名前!
…と、ボーさんの教えてくれた写真アドレスからiMdbの履歴みたら、
あああ、「Without a Trace(FBI 失踪者を追え)」のサマンサですか!
ミラ・ソルビーノな感じの知的美女のイメージ(私だけ?)の方ですよ~。

>まおさん

ありがとうございます。
読んじゃいましたよ。長かったですねー。海外文学にありがちな読みにくい部分もあるし、かなり手応えがありました。

監督たち、たとえばジョン・ヒューストンが、この本の中で、どんなことをしているか。読んでみると面白いですよ。プロデューサーの、あの大物ザナックのスケベなところとかも。(笑)

テレビ主演の女優さん、「FBI失踪者を追え」というので、ご存知だったのですか。私は、まるで知らない人でした。ミラちゃんに似てるとすれば、私好み…!(好みのレンジが広いヤツ…)


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