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2023-06

「トゥモロー・ワールド」 - 2006.12.10 Sun

なんといっても衝撃的だったのは、主演のクライヴ・オーウェン、ジュリアン・ムーアたちが襲われる場面。(ネタばれになるので詳しくは書かないが。)
多くの観客の意表を突くであろうストーリー進行で、唖然としてしまった。
これまでに、そういう類の映画がなかったわけではないが、私は夢にも思わなかった…。ありがちな映画ではない、非常にリアルな展開とは言える。

ポスター
(c) 2006 Universal Studios.
All rights reserved.

クライヴ・オーウェンとジュリアン・ムーア主演のSFということ以外は何も知らずに観た。
好意的な映画評を目にしたことが、劇場に足を運ばせた理由だ。

原作は、P・D・ジェイムス(フィリス・ドロシー・ジェイムス、女性作家です)の「人類の子供たち」で、映画の原題は、その通り。邦題も、そのままでよかったのに。

時は2027年。すでに18年間も子供が生まれていない世界。女性の不妊の理由は不明。
そして今、世界でいちばん若い子供が殺されたというニュースが流れている。これは、いったい、どんな世界なのかと考える間もなく、いきなり、店が爆発。テロか。セオドール・ファロン(クライヴ・オーウェン)は、爆発した店のすぐそばにいたが危うく難を逃れる。観客は、すさまじい爆音に驚き、このありさまを目のあたりにして、荒涼たる気分になる。
ここで映画のタイトル、CHILDREN OF MEN が画面に入ってきて、瞬間の沈黙。
巧い。
ここで早くも、これから何を見せてくれるのかと期待が持てた。

セオ(クライヴ・オーウェン)とジュリアン(ジュリアン・ムーア)
(c) 2006 Universal Studios. All rights reserved.

ジュリアン(ジュリアン・ムーア)とセオ(セオドールの略称ですね)は、かつては夫婦だった。現在のジュリアンは、反政府組織のリーダー。
セオは彼女から協力を頼まれる。セオの兄のコネを使って、ある人物のための通行証を手に入れてほしい、というのだ。
セオは否応なく、事態に深入りしていく…。

以前のセオは平和活動の闘士だったが、いまでは、その情熱もない。そんな彼が、ジュリアンたちの計画に関わってからの変わりようといったら!
巻きこまれた形とはいえ、いろんな出来事が重なっていき、必死にがんばることになるセオ。直接的には彼女のためであり、最終的にはそのベースには、昔の闘士だった時代の精神があり、それがよみがえったともいえるのだろう。

子供が生まれなくなり、人間の精神は病んでいったのか、世界は崩壊しつつあり、イギリスだけが持ちこたえている状態。海外からの入国者は厳しく制限され、収容所行き、果ては殺される者までいるようだ。人権無視の虐待がある。
この終末的な世界観がリアル。暴動が起きる危険は絶えない。

ジャスパー(マイケル・ケイン)
(c) 2006 Universal Studios. All rights reserved.

そんな世界の中で、セオが立ち寄る、心休まる隠れ家の主、ジャスパーを演じるのがマイケル・ケイン。
70年代ファッション的な長髪で、ある時期のジョン・レノンのよう。
私は、彼がセオと別れの挨拶を交わすところまで、マイケル・ケインだとは分からなかった。ううむ、やられた…。
この、まるでヒッピーなジャスパーの登場シーンで、ローリング・ストーンズの「ルビー・チューズデイ」が流れるのが嬉しい。キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」もあるというが、私は詳しくなくて、どの曲だったのか特定できない。

戦争のような市街戦からエンディングまでは、息をつくヒマもない。
あとでいろいろレビューを読んでみると、ある場面において、撮影をカットせずに長く撮り続けていく、という長回し撮影だったようで、言われてみれば、そうか、と。(笑)
主人公を、途切れることなくカメラで追い、まるで自分が戦場にいるかのような緊迫感とド迫力。このシーンを観るだけでも、かなりの価値があると思う。

(追記:記事を書いたあと、本作のワンカット長回しはワンカットではない、ということをひたすら映画を観まくる日記アルティメット・エディション様の記事で発見しました! それはそれで、すごい!)

ヴェネチア映画祭で、技術貢献の功績に贈られるオゼッラ賞を、撮影監督のエマニュエル・ルベツキが受賞している。

そして、あのシーンには泣けた。そう、あのシーンですよ。
命の大切さを訴える荘厳な瞬間だった!
だが…分かっていても、人類というものは、争いを止められないのだろうか。そのことも、すぐその後に考えさせられる。

映画は、そこで終わらない。まだ、「とどめ」がある。また泣けた。
誰かのために、自分が信じたことのために、精一杯生きることができる、ということが、いかに幸福なのか。そこに人類の未来があるのかもしれない。

(12月2日)

CHILDREN OF MEN
2006年 イギリス・アメリカ作品
監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 クライヴ・オーウェン、クレア=ホープ・アシティ、パム・フェリス、ジュリアン・ムーア、マイケル・ケイン、キウェテル・イジョフォー、チャーリー・ハナム、ダニー・ヒューストン

このブログ内の関連記事:
スティーヴン・キングの2007年映画ベスト10

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評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)

● COMMENT ●

こんばんは

この作品は、ダメな人にはどうやらとことんダメな作品のようですが、ボーさんも気に入っていただいたようで、とっても嬉しいです・・・。なんだか不思議とボーさんと意見が合うと、とっても嬉しいのですよ。
『クリムゾン・キングの宮殿』は、確か、車でキーとジュリアン達を乗せて、出発してすぐかかってたはずです。車のフロントバンパーと、なにより光が印象的なカメラの箇所でした。荘厳な曲で、ほとんど映画でかかったことがないんじゃないかと思います。

>とらねこさん

ありがとうございます。そう言われると私も嬉しいです。
この映画、あまり期待しなかったせいもあって、チェックしてみて良かったなあと思える1本でした。
重いテーマの作品を上手に見せてくれたキュアロン監督の手腕は確かなものだと思います。
ルーブルにあるはずのアレス像が、セオの兄のオフィス(?)にあったりするようなイメージも面白かったです。

ストーンズは分かるのですが、キング・クリムゾンは、まるっきりなんです。

かなり観たくなってきました。

今、仕事優先で映画鑑賞は自粛しているんですが、ボーさんのレビューを読んですご~く観たくなっちゃいました。
タイトルは確かに「トゥモローワールド」だと夢や希望いっぱいの未来をイメージしちゃうから、原題のほうがよさそうですね。

初めまして。小夏さんのところからリンクして来ました。
ものすごく詳しい解説というか感想ですね。そこまで詳しく映画を見ているんですね。v-265

>kiyotayokiさん、溝の口のかねちょんさん

kiyotayokiさん、こんな、つたない感想文なのに、観たくなっていただきまして、ありがとうございます!
私はヒマ人なので…いまのところ映画自粛という事態はなさそうです。

溝の口のかねちょんさん 、いらっしゃいませ!
一応、感じたことで書き留めておきたいことは書いておきたいな、というところで一所懸命にやっております。
今後とも、ごひいきに、遊びにきてくださいね!

うーーむ。

この作品、私の周囲のブロガーさんでもかなり評判良くて意外に思ってました。
個人的には完璧スルーしてたので。
キャスティングがイマイチ私好みじゃなかったことと(ごめんよ、クライヴ・オーウェン)、あと、なんとな~くの偏見で、『トゥモロー・ワールド』のタイトルにそそられなかったのが要因。(^^;
確かに、『人類の子供たち』が邦題だったらめっちゃ惹かれたと思うので、タイトルの力は偉大だわねw

>小夏さん

私もクライヴ・オーウェンには引かれませんでした。(男優はどうでもいいし。)
ジュリアン・ムーアでもスルーしそうなところでしたが…。

こういう見逃しそうな作品をキャッチできたのは嬉しいですね。「トゥモロー・ワールド」なんて、ありがちなタイトルで興味をひかないですもんね。
気が向いたら観てあげてくださいねえ。

コメントありがとうございました

長回し撮影だと思って観ていましたが、ワンカットではなかったと後で知って二度驚きました。しかし、ワンカットで撮ったかのように見せたからこそ、あれだけの臨場感が出せたのだと思います。心に残るいい映画ですね。

>タイプ・あ~るさん

長回しみたいで、そうではない、というのは、ぜったい驚きますよね。
ははあ、そういうことで技術貢献賞をとったのか、と思いました。
映画の雰囲気を支えた、とても意味のある技術だったと感じます。

TB失礼します

TB失礼します。

このリアリティにはのけぞるほどの衝撃を受けました。しかもそれが表面上の痛々しさじゃないんですよね。唸ります。

それとアノ親友のヒト、マ、マイケル・ケインだったんですかっ!?あの…どの辺が…^^;
全然わからなかったです。(苦笑)

>もももさん

コメント&TBありがとうございます!
私も、予想したよりインパクトを受けた映画でした。いろんな意味で。
ハリー・ポッターのシリーズでも、この監督の「アズカバン」がいちばん好きでしたが、さすがというべきですね。
私も下手すると気づかなかったマイケル・ケイン。きっと、こういう役を演じてると楽しいでしょうね!

こんにちわ

ボーさんは映画館でご覧になったんですね^^
たった1週間前に見た映画でも内容を忘れてしまうワタシですが、
ボーさんは記憶力がよくて尊敬します!!

ジュリアンの途中退場は驚きでしたが、ボーさんもおっしゃってるよう
現実味があると思います。
主要人物は軒並みフェイドアウトでしたが、最後の最後は希望残るラストでヨカッタです。
じゃないと犬死(>_<)

音楽が素晴らしかったですね♪

>mia☆miaさん

こんばんは。
な、なにをもって記憶力がよいなどと、ご冗談を! データなんかはチェックしなおしたりしているだけと思われ…。

主要人物フェイドアウト…クライブ・オーウェンはどうだったっけ…ほら、覚えていない。
でも、とにかく面白かったことは忘れません!

こんにちは。

長回しの市街戦のカメラワークは、臨場感あふれる凄いシーンでしたよね。そりゃ、当たっちゃうよ銃弾…と思えるもの。
以前見たときはたいして面白くないなって感じたんですが、
今観ると、割と面白く、ただやはりヒューマン・プロジェクトとトゥモロー号の存在が曖昧過ぎて、そこを救世的に考えるのはどうなのかなとは思うけれど…意外と近未来の世界だったのねと思ったりも。

>makiさん

おはようございます。
ああ、あいまいな部分はあったかもしれません…。(うろおぼえ)
映画館で観て、かなりインパクトを受けたのは確か(な気がします)。(笑)
キュアロン監督、やっぱり注目しておくべきだろうなあと思いますね。


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