「殺しのドレス」 - 2006.12.25 Mon

1981年の10月に観て以来だから、かれこれ…えーと○○年ぶりの再見。てことは、劇場公開されたときに観たのか。覚えてないけど。
デ・パルマ監督の、この頃の一連の作品には、映像の見せ方やサスペンスの面白さなどで映画的な興奮があって、いまだに興味を引かれる。
それは通俗的といってもいいのだけれど、いかにも映画の面白さなのだ。
映画は、のっけからアンジー・ディキンソンのシャワーシーン。シャワールームの外に見える男の体を見ながら、彼女は自分の体を撫で回し、洗う。エッチである。ここはボディ・ダブル(部分的に代役)なのかも。
「キャリー」(1976年)でも聞かせたリリカルなメロディは、ピノ・ドナジオのスコア。どちらの作品もオープニングがシャワーシーン! いいねえ。
欲求不満の人妻である彼女が、美術館で行きずりの男と出会う場面。男と女の駆け引きが面白い。
自分があからさまに誘っているとは取られたくない彼女。彼女の望みを感じながら、遊んでいるように、じらす男。
無言のゲームを映像の力で見せるテクニック。
嬉しいんだろうけど、タクシーに収まった2人、車の中で、いちゃつきすぎ、エロすぎです。(笑)
不倫帰りのアンジー・ディキンソンとエレベーターに乗り合わせる親子。小さな娘が何度も何度もアンジーさんを振り返って見るのが、じつに思わせぶりで不安感をかもしだす。
ショッキングな殺人を目撃するのがナンシー・アレン。彼女はデ・パルマ監督の「キャリー」に出演したあと、監督と1979年に結婚。そして、この作品と「ミッドナイト・クロス」(1981年)とで連続してデ・パルマ作品に登場する。
彼女が、犯人とチンピラたちとに二重で追われる地下鉄の場面もスリルがある。
目撃者として犯人に狙われる彼女は、科学オタクのアンジー・ディキンソンの息子と組んで、犯人を探す。ハリー・ポッターの映画が作られた今だから言える話だが、この息子、ハリー・ポッターに兄がいたら、こんなふう、みたいな風貌。
忘れちゃいけないのが、精神分析医のマイケル・ケイン。
殺人犯が彼の患者の中に…? でも守秘義務があるから、警察には何も言わず。いいのか、それで?
つい先日観た、本作から26年後の「トゥモロー・ワールド」でも元気なケインさん。息が長い名優だ。1956年デビューだから、もう俳優生活50年。
ヒッチコックの「サイコ」や「裏窓」などを思わせるシーンも見もの。当然、意識して作ったんでしょうね。
けれん味たっぷりのエンディングのサスペンスも上々。もしかして、あれか? ああいうことか? とも思ったりするが、楽しめる。それが、この頃のブライアン・デ・パルマなのである。
dressed to kill というタイトルは、インパクトのある響きに思える。殺しのために装う、ということか。そういえば、殺人者はサングラスなどもしてましたが…。
アンジー・ディキンソンさんが、SF・ファンタジー・ホラー・アカデミー賞の主演女優賞を受賞。
(12月16日)
DRESSED TO KILL
1980年 アメリカ作品
脚本・監督 ブライアン・デ・パルマ
出演 マイケル・ケイン、ナンシー・アレン、アンジー・ディキンソン、キース・ゴードン、デニス・フランツ
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紅玉の甘い戯言様
評価☆☆☆★(3.5点。満点は5点)
● COMMENT ●
これは奇遇ですね。
メリークリスマス♪
いやしかし、ナンシー・アレンとデ・パルマ監督が夫婦だったとは知りませんでした。
じゃあナンシーのシャワーシーンは監督の自慢だったんですね。「キミたちにもこれくらいは見せてあげようかね。あとはワシだけのもんだけどね」な~んて(^~^;
>lalakiさん、kiyotayokiさん
下手をするとB級テイストに近寄りながらも、単純に、面白さを持っている魅力のある映画たちが懐かしいです。
謎の金髪女…思い出してみると、あの格好はアヤシすぎます。(笑)
kiyotayokiさん、メリー・クリスマスです!(まだ25日!)
デ・パルマ監督がヒッチコックと関連づけて論じられるようになったのは、この映画の存在も大きいです。
ナンシー・アレンはデ・パルマ監督と数年で離婚しちゃいました…きれいで自慢したくなるのも分かりますが、これは映画監督としての自慢の仕方ですよね!
ようやく観ました。
もちろん「真犯人が誰」というのは忘れるはずもありませんが、ラストシーンでナンシー・アレンが見る夢についてはほとんど忘れかけてましたからね。
いやー改めて思ったけどあのシーンは秀逸です。「白いシューズ」の使い方もナイスだし、ラストで金髪美女(?)が映し出される鏡の用い方も素晴らしいッス。
久々に面白いサスペンスを堪能したぞ!という気持ちになりましたね。
>小夏さん
私も、ぼんやりとしか記憶になかったので、初めて観るのに近い感じで面白かったです。
「キャリー」などに使っている手を、なんのためらいもなく、また使うところもスゴイというか偉いというか。
ハッタリを利かせた味(けれん)がキレイに決まる監督ですねえ。
Dressed to kill
およそ10年前の記事ですか。随分昔にソフトを手に入れましたが、全然見なかったですよ。僕も公開時に映画館で観た作品です。全く陶酔した作品です。でもやたらに高い☆★は進呈しない。それが僕のデ・パルマに対するスタンスでした。
それでもこの頃のデ・パルマは大好きで、「ミッドナイト・クロス」も映画館で観ましたよ。
>dressed to kill
というのは本来「着飾って悩殺する」という意味の慣用句ですが、この作品では洒落て、悩殺ではなく本当に殺してしまうわけです。
>オカピーさん
改めて10年前と言われると、もうそんなに…と感慨深いものがありますね。
デ・パルマ、好きでした。「アンタッチャブル」でしたっけ、そのときは、なんで、そんな方向に行っちゃうんだ?と思ったものです。
あ、悩殺ですか。なるほど!
そうすると、ひねった題で、いいですねー!
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その時一緒に買ったのが「ブラック・ダリア」と「チャイナ・タウン」!
ミステリー週間というわけでもあるまいし、よくこれだけ重なったものです。
「ブラック・ダリア」は「チャイナ・タウン」と同じ。才能ある監督が、一度はハード・ボイルド・ミステリーの定石にのっとて映画を作ってみたいのでしょうか、両方ともその定石映画としては素晴らしい出来ではありますが、どっちもデ・パルマの、ポランスキーの、個性的な完成を持つ独特の映画とはいえないものになってますな。
やっぱりデ・パルマはこうでなくちゃね。
私は、アンジー・ディッキンソンが間男が乗っているTAXIに目をやるカメラ・アイがチラッとだけ、ナゾの金髪女を映し出しているところなど、鳥肌がたちますよ。
「ファム・ファタール」はまだ良かったんですがね。
デ・パルマも年取っちゃったのかな。