「ゆれる」 - 2007.02.03 Sat
最近は小泉今日子さんの懐かしのメロディを聴いていたりするので、「ゆれる」というと「ひとり街角」の♪揺れ~る揺れ~る揺れ~る街角♪というフレーズ(歌詞:三浦徳子)を思い出すのであるが、それはまた別の話。
ミステリー仕立ての愛憎劇、という感じでしょうか。
兄(香川照之)と弟(オダギリジョー)の関係を描いた映画。
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(c) 2006「ゆれる」製作委員会 |
都会に出てカメラマンとして活躍している弟と、田舎に留まって家業のガソリンスタンドで働いている兄。
兄にとっては、自由気ままに人生を楽しんでいるような弟に対して、口にはしないが、鬱屈(うっくつ)した思いがある。
弟が、葬式のために田舎に戻ってくる。
幼馴染みの女性(真木よう子)と兄弟の三角関係。
3人で遊びに行った渓谷の吊り橋で、その出来事は起きた。
ゆれるのは、吊り橋であり、人の気持ち。
真実は何なのか、という興味が、好奇心を持続させる。そのテクニックは巧い。
そして、その真実は、はたして真実なのかと、いまも不確かな思いがある。
そのあたりは、もう1回観たら感じ方が変わってくるのかもしれない。
2人の兄弟の関係の変化が、心の変化が、裁判の行方を変えていく。誰も分かっていないかもしれない、ただひとつの真実とは無縁に。
屈折した感情を心に秘めた兄を演じた香川照之の演技が光るが、それを軽々と受けて立つオダギリジョーもいい。
香川照之という俳優を見たのは、彼がNHK大河ドラマ「利家とまつ」(2002年)で豊臣秀吉を演じたとき。映画「鬼が来た!」(2000年)で名前はすでに知っていたけれども、実際の演技は見たことがなかった。
調べてみると、父がスーパー歌舞伎で有名な三代目市川猿之助、母が浜木綿子。
うわ! 素晴らしい血統じゃないですかあ!!
最近のテレビコマーシャル「ヘルシア」では、わざとらしい演技で好きでなかったりするのだが。
この「ゆれる」は、演技のしがいがある、おいしい役どころ。
オダギリジョー(本名は「小田切譲」らしい)も調べてみた。「仮面ライダークウガ」(2000年)で知名度が上がったんですね。「金融腐蝕列島 呪縛」(2000年)に出たらしいが、覚えていない。テレビの大河ドラマ「新選組!」(2004年)と映画「オペレッタ狸御殿」(2005年)くらいでしか見ていないが、自由で柔軟なタイプの俳優に思える。個性的で、おもしろい。
他にも、ガソリンスタンドの従業員を演じた新井浩文は、顔つきも演技も尖っていて、若さがいいと思ったし、蟹江敬三のベテランの味は文句なし。
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(c) 2006「ゆれる」製作委員会 |
とはいえ、不満な面もある。
木村祐一が検事を演じていたのが、いまひとつ気にいらない。この人は、バラエティ系のイメージが強すぎる。
「フラガール」の山崎静代(しずちゃん)の場合でも少し感じたが、普通の映画に、わざわざ、お笑い・バラエティ系で強烈な個性を放つ出演者を使わなくてもいいのではないか。監督が使ってみたいと思うのだろうか。
それから、伊武雅刀のオヤジのキャラクター。すぐ怒鳴るのが類型的で、つまらない。
いちばん引っ掛かるのは、兄弟間の確執の大きな原因のひとつとなった女性の存在感が薄いこと。
早々に映画の表舞台から消えてしまうのだが、いなくなったあとでも彼女が兄弟の中に、もっと強烈にその存在感を感じられるようになっていれば、さらに深いドラマが生まれたのではないか。彼女が、物語進行の道具のような存在でしかない印象なのが、少々惜しい。
もうちょっと、彼女の内面が分かる、彼女に感情移入ができるエピソードを、たとえ事後であっても、欲しかったと思う。
それにしても、あのラストは…これまた、受け取り方が、いろいろとあるのでは?
(1月13日)
2006年作品
脚本・監督 西川美和
出演 オダギリジョー、香川照之、真木よう子、伊武雅刀、蟹江敬三、新井浩文、木村祐一、田口トモロヲ、ピエール瀧
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評価☆☆☆★(3.5点。満点は5点)
● COMMENT ●
こんにちは☆
>とらねこさん
精力的に新作を観ているとらねこさんは、すごいなあと思っています。
「鬼が来た!」も興味は持ったのですが、観に行くには至りませんでした。
日本映画も、おもしろいなあと思える最近、アンテナは広く張っておきたいものです!
ブラボー!
あ、「ゆれる」は観てません。ははは。(^~^;
いやね、私が「オダジョー!オダジョー!」連呼してるのは周知の事実でしょうけど、実は、香川さんもひそかに好きだったりするんですよ。ドラマでしか知らないけど、「救命病棟24時」の地味~なドクター役で一気にハマリました。
でも、ビミョーに「好き好き」宣言できないタイプの男優さんなのが切ないッス。いや、なんとなく・・・。(笑)
この役どころのオダジョーはかなり評判いいみたいですね。他の作品であれば「メゾン・ド・ヒミコ」の彼もかなりいいですよ。
ゲイの役どころですが、これで彼にハマる方も多いみたいですから。既にご覧になってるかもですがw
>小夏さん
オダジョー? 小田原城のことでしょうか?
だったら、香川照之は、カガテル?(笑)
じつは…オダジョー、最近よく観ます。最近の邦画を観てると、すぐ出てくるんですね。
「めぞん一刻」あいや、「ヒミコ」も、そのうちに…。
あ、私も
邦画はセリフが聞き取りにくいから苦手なんだけど、これは見たいなー。
ラストは、単純明快ではなく受け取り方がそれぞれ違うのですね。余計にそそられますな。
「白い貝殻ブローチ 落とした私♪」歌えるもんねー。でも「ひとり街角」っていうタイトルだとは知りませんでした。
すっかり「ゆれる街角」だと思っていたーーー!!!
>紅玉さん!
うっれしいなー! もう大好きです! デュエットしませう!
当時は振りも覚えてましたが、いまは忘れました…。
ふつう「ゆれる街角」だと思いますよね、歌詞からしたら。
…ん、「ゆれる」の話でしたっけ。そう、ゆれてるんですよ~。しかし、セリフはゆれてません。聞き取れますっ。
見応えありました
本年もどうそ宜しくお願いします。
可哀想だけど、あの女性は「きっかけ」というだけの存在ではないかと思いました。
クレームを受けて笑顔で対応する兄の顔が一瞬にしてドロドロとした怨念を潜ませる表情になり、香川照之さん、凄い俳優さんになりました。
>紅ナナカマドさん
はい、こちらこそ、よろしくお願いします。
そうですね、彼女は、きっかけ程度の存在にしかなっていませんでした。それでもいいのかもしれませんけどねえ。そこまで膨らませる必要を感じなかったのでしょうか。
役柄上、香川さんのほうが得ではありますが、それにしても、うまくて感心してしまいます。
ゆれています。
>アスカパパさん
そうですね、相続で骨肉の争い、なんて言いますからねえ。
私自身は、相続などで、きょうだいと争う気は、さらさらないので部外者みたいな感じなのですが。
「ゆれる」という題は、うまいですよね。いろんな意味が重なってきて。
No title
ほんとにこの「ゆれる」とは上手いタイトルで、
感情も真実もみんなゆれて、観る側もゆれましたよ。
私は兄側に感情移入して観てしまいました。
↑の画像の法廷シーン、弟が兄の過失を証言しているのに、
兄が冷静な表情で見ているじゃないですか。
ここの心理とかあれこれ考えを巡らせました。
ボーさんは、ラストは、兄がバスに乗ったかどうか
どう思いますか?もう忘れました?
>YANさん
いまさら…でしょう。いまのところは。
香川さんは最近は「トウキョウソナタ」でも観て、印象に残っていますが、いろんな映画で見ていると、またか、と飽きちゃうんですよね。(失礼な話!)
うまいんですけど。
こんにちは~♪
そろそろお正月気分も薄れてきましたね。
この映画、今頃やっと観ましたがスゴク良かったです!
やっぱりオダギリ君と香川さんが上手いのよねぇ~
あと脚本も良かった!!微妙な心の動きの見せ方がツボだったなぁ~
>木村祐一が検事を演じていたのが、いまひとつ気にいらない
私もそうでした、実は。
妙にわざとらしくて、、、違う人が良かったのになぁ~
>由香さん
仕事してきたので、もはや、お正月気分は無くなりましたっ。(きりっ!)
これは、おもしろい脚本、いい主演者、監督でしたよね。
気にいらないでしょ! 検事。なんで起用するかなあと思いますよ。ファンなら問題ない、どころか、大喜びなんでしょうけれど。
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ボーさんがまだこれをご覧になっていらっしゃらなかったとは、なんだか意外でした☆
この作品は、本当映画ブロガーの間で評判高かったな~、という作品でした。
私も、初めて、いろんな方にTBをしたのがこの作品でした。(それまでは、あんまりたくさんTBを出したことがありませんでした)
『鬼が来た!』の香川照之も、かなりのインパクトを放っていました。この映画自体も、忘れられないんですよ、私。