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2020-04

「それでもボクはやってない」 - 2007.03.10 Sat

電車の中で痴漢をした犯人とされて捕まった男。
彼が捕まるところから始まり、最初の裁判が終わるまでの様子を克明に追う映画。

ボクはやってない、というが、ほんとにやってないのだろうか、と、観ている間じゅう、ずっと思っていた。
痴漢があったと考えられる現場のシーンは、映画には出てこない。
だから、やっているかもしれないではないか。
そう思ったら、この映画、いけないのだろうか?
監督の狙いは、そこには、ないのか。

やってないんだ!
(c)2006 フジテレビジョン アルタミラピクチャーズ

疑わしきは罰せず、というのが原則。もしも無実なのに有罪にされたら、たいへんである。
だが、有罪だったとしたら? 確かな証拠がない限り無罪、ということで、本当は痴漢なのに無罪になったら、それは女性にとっては許しがたいことに違いないのだ。
そのあたりが難しい。

それは置いても、問題なのは、警察の対処のしかたである。
確かな証拠がないのに、「自分がやりました」といえば、罰金を払って、すぐに釈放、「やってない」といえば、そのまま拘留。それは、おかしいでしょう。
声を荒らげての暴力的な刑事の取り調べに遭ったら、普通の人なら怖くてしょうがない。
権力をかさにきての横暴といわれても、しかたがないではないか。
(ちなみに、この映画で横暴な刑事に扮した大森南朋<おおもりなお>、いいですね。NHKのドラマ「ハゲタカ」にも主演していて、ちらっと見ただけだけど、なかなかいい感じ。)

無罪を出すのに慎重な裁判官の姿も、よく分かった。
小日向文世演じる裁判官の事務的ともいえる冷たさ。考えさせられた。
しかし、最後の判決文を聞いていると、なんだか納得できてしまうのだね、これが。

先日、鹿児島県議選において投票依頼に絡み現金を授受したとして、12人が公職選挙法違反の罪に問われた事件に、無罪判決が出た。
この事件では、被告たちは自白を強要されたという。
取調官から、追及的・強圧的な取り調べがあったことがうかがわれる、というのだ。
そもそも事件というものはなかったと、一部の刑事は分かっていたとか。
強権を得た人間が、それを、どう使うべきなのか。それを当事者は考えてもらいたい。

この映画が公開されたからといって、警察や司法が劇的に変わるとは思わないが、こうした実態を映画にすることで、少しでも納得の行く社会に近づいていってほしいと思う。そうした意味では、価値のある映画なのだろう。

それに、そうしたことを抜きにしても、観ていて飽きない社会派エンターテインメントといえる。
役所広司さん、売れっ子ですよねえ。瀬戸朝香さんが弁護士かと思ってたら、役所さんも弁護士で、しかも上司。彼のほうが目立ってるじゃないですか。

裁判を描いた映画は、洋画でも面白いものが多いけれども、こちらも負けず劣らず。
公判の後に、弁護士と被告の関係者たちが、お茶しながら裁判のことを語り合う形にしているのが、うまい構成で、裁判の進展やポイントを分かりやすくしている。

「Shall We ダンス?」の周防正行監督が11年ぶりに放つ新作として、過不足のない、じゅうぶんに手応えのある一作でした。
しかし監督、11年も何してたんでしょう。
それでも彼は、食っていけるんですねえ。

(2月24日)

やってないってば!
(c)2006 フジテレビジョン アルタミラピクチャーズ

2007年作品
監督 周防正行
出演 加瀬亮、役所広司、瀬戸朝香、もたいまさこ、山本耕史、鈴木蘭々、柳生みゆ

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評価☆☆☆★(3.5点。満点は5点)

● COMMENT ●

TBとコメントありがとうございました。

そのうえ、私の恥ずかしいような鑑賞記もご紹介いただき、ありがとうございます。
さて、ボーさんの鑑賞記を拝読しました。
ボーさんの冷静な鑑賞眼に脱帽です。
そう言われれば、痴漢の現場シーンはありませんでしたね。
私は、怪しい男の不審な態度。傍らの女性の「この人はやってない」という証言。弁護士の論理的な説明。などから「徹平は犯人ではない」と思い込みました。
何れにしても「人を裁くことの難しさ」を、この映画は訴えていることには変わりありませんよね。

>アスカパパさん

いえいえ、とんでもないです。
無罪と分かる描写があるのに見逃しているのではないか、と思ったりもしています。
自分がこんなハメに陥ったらどうしよう、とコワイ話ですね。
エロビデオを持ってたら、やっぱり痴漢をするようなヤツなんだ、と短絡的につながってしまうのもコワイです。(笑)
問題提起とエンタメが上手に噛み合った良作だと思いました。

加瀬亮クン

この人、最近売れっ子ですよねぇ。
確か、『硫黄島からの手紙』にも出演してませんでしたっけ?

彼の情けなくも同情票を集めそうな風貌がウケるのでしょうか。
いかにも冤罪のターゲットになりそうな、でも、別の視点から見れば、
「ひょっとしてやってたりして?」を匂わせる風貌でもあり・・・。(あ、失言?)

ま、私は大森南朋さんの方が断然好みですけど。

>小夏さん

そう、私が彼を初めて認識したのが「硫黄島からの手紙」でした。
その後観た「スクラップ・ヘブン」でも見たし、よく出てます。
ひょっとして…というふうに見えますよね。疑えば誰でもそうとも言えますが。
大森南朋…好みのタイプが、また判明いたしましたねえ。データに加えておこう!(笑)

TBさせていただきました。

映画でも裁判のおかしな点を取り上げていましたが、この本ではもっと深く犯罪捜査や取調べなど多くの場面での矛盾点を、もと検事の弁護士にぶつけています。問題の掘り下げ方とその方向の鋭さにこの監督の能力を感じました。

>タウムさん

コメント、ありがとうございます。
本では、映画で表現できなかった以上の、監督の考え方が出ているようですね。
もしも手に取ることがあれば、チェックしてみようかなとも思います。

TBお願いします^^

私もやっと観たのでお邪魔します^^

「実はやってるんじゃ」とは私は思いませんでしたよ。
もしやってたとして、なおかつあそこまで「やってないんだ!」と言い張れるなら
一種の精神異常なのでは。
まあ「引っ込みがつかなくなった」と考えられなくもありませんが・・・★

昔こういう痴漢冤罪のTV特集を観ていた時
「駅員室に行ったら最後」なので「とにかく走って逃げろ」という結論になって
それでいいのか?!と強く思ったんですが
まさにこういうケースの事を言ってたんでしょうね~
でもそれで本当の痴漢が逃げたら悔しいので、こっちとしては死に物狂いで追いかけますが☆

>わさぴょんさん

コメント&リンクつきTBありがとうございます!
私の、やってるんじゃないのか~?という意見は、まさに刑事や検事の思いと一緒みたいですね。(笑)
やってても、あくまで否定する人っているような気がするので。

証拠というのは難しいもので、目撃者だって、それが勘違いという場合だってあるかもしれないし…。
巻きこまれないことが、いちばん、ということになるのでしょうか。

私もやっと

見ました。
最初の痴漢の現場シーンは、あえて明確にしてなかったですね。
それは、主人公の主張だけじゃなく、
いろんな立場の人の、主人公を不利にさせる主張にも、
無理はないなあと思わせるためでしょうね。
第三者的立場としたら、彼はグレー。
でも本当にやってない者にしたら、こんな絶望的状況はないです。
絶対に巻き込まれたくないですよね!
ボーさんも気をつけてくださいね。エロビデオを持っているなら、なおさら(≧ε≦)

周防監督が丁寧に丁寧に作り上げたんだなあと分かる作品でした。

>YANさん

あ、はい、持ってるビデオで判断されちゃ憤慨しますけど…・。ビデオを見るのと実行とは違うでしょーって。
もしも何もやってないのに、あんなふうなことになったらと思うと、怖すぎます。疑わしきは罰せず、という言葉もあるのに。

私もテレビ放映のとき、最後だけ偶然見ました。
裁判官、小日向さんですねえ。おなじみすぎ。


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