「今宵、フィッツジェラルド劇場で」 - 2007.03.25 Sun

ロバート・アルトマン監督の遺作となった作品。
私はアルトマン監督の映画には、実は、あまり興味がない。「ゴスフォード・パーク」(2001年)は面白くなかったし、「ナッシュビル」(1975年)、「三人の女」(1977年)などは、もはや、あまり覚えていない。「ザ・プレイヤー」(1992年)、「Dr.Tと女たち」(2000年)は少し面白かったか。
テレビシリーズ「コンバット!」の製作・監督としてのほうが、彼に一目置きそうな私なのである。
それを、なぜ今回観たのかといえば、メリル・ストリープだ。
先日「ソフィーの選択」を観て、メリル・ストリープという女優を改めて見直したからだ。彼女の演技を見てみたくなったのだ。
お話は、ラジオ放送の音楽ショーにかかわる人々の人間模様。買収によって放送打ち切りとなる最後の一夜のステージと舞台裏、そして後日談少々を描く。
多数の俳優がカントリーを歌うのは「ナッシュビル」を思わせる。それにしても、歌のうまい俳優さんというのは、たくさんいるものです。
メリル・ストリープとリリー・トムリンが姉妹デュオを演じている。(メリルが妹役。)
メリルさん、演技だけでなくて歌もうまいのである。
最近、アバの曲を使ったミュージカル「マンマ・ミーア」の主演に決まったというニュースを聞いたが、それも納得。
メリルとリリーが女性2人組ならば、男の2人組もいる。ウディ・ハレルソンとジョン・C・ライリー。カウボーイ姿でカントリーを。
そう、ジョンはミュージカル映画「シカゴ」で美声を披露済みである。
そんななかで、ひとりハードボイルドな探偵風を気取っているのが、ケヴィン・クライン。劇場の用心棒的な役割なのだろうけど。ムードに浸りきったナレーションが面白い。役名からしてガイ・ノワールだもん、ノワールなヤツなのさ。
私はメリル・ストリープとケヴィン・クラインが共演した「ソフィーの選択」を観たばかりであり、こちらの「今宵、…」にクライン氏が出ていることは知らなかったので、この共演再現は予想外で思わず喜びました。一緒に演技する場面は、それほど多くなかったが。
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さらにメリルの娘役でリンジー・ローハンが。歌手で映画経験もあるけれど、アイドルのイメージが大きい彼女をアルトマン監督が使うのは、ちょっと意外な気もする。
謎の女にヴァージニア・マドセン。劇場に、ふと、やって来る。その目的が何なのか、はじめは分からない。途中でそれが分かってからは映画に不思議な感覚が出てくる。なにしろ彼女は○○なのだから。
このあたりのストーリーは、ガンによって亡くなったアルトマン監督の心情を作品に投影させたのではないかと、いやでも思えてくる。
人生の終焉は運命に任せるよ、というか、最期を受け入れる穏やかさ、覚悟(したい気持ち?)が、ふわんと漂っているのだ。
脚本は映画で司会役を務めているギャリソン・キーラー(このラジオショーは実際にあり、彼が本当に司会をしているのだ!)が書いているが、監督のアイデアも入っているのかもしれない。
どの俳優も力が入ることなく、楽しんで演じているように見える。
全体に淡々とした印象を受けるのは、基本的に日々の人生が、そうしたものだからなのか。
人生の味わいがある…のは分かるが、私には修行が足りないのか、少し食い足りない感触なのである。
カントリー・ミュージックがそれほど好きではないのも、原因のひとつかな?
だけど、心地よい後味が残るのは確かだ。
お目当てのメリルについていえば、演技面は他の俳優たちとの共同作業(コラボレーション)という感じで突出してはいない。うまい俳優が他にも多いし。
でも、そういうコラボができるのが、うまいということなんだよねえ。
(3月11日)
A PRAIRIE HOME COMPANION
2006年 アメリカ作品
監督 ロバート・アルトマン
出演 メリル・ストリープ、リリー・トムリン、ケヴィン・クライン、ギャリソン・キーラー、ヴァージニア・マドセン、ウディ・ハレルソン、ジョン・C・ライリー、リンジー・ローハン、トミー・リー・ジョーンズ
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評価☆☆☆(3点。満点は5点)
● COMMENT ●
TB&コメントありがとうございました
>とらねこさん
ただ、どこかで距離感を置いて観ている自分が…。
作品に、ひかれている部分もあるのですが、これは何なんでしょうねえ。
朝鮮戦争野戦病院
>作品に、ひかれている部分もあるのですが、これは何なんでしょうねえ。
ということでしたら、私の生涯のベスト10入り確実の「M★A★S★H」をご覧いただけば、そのヒ・ミ・ツをご確認いただけるのでは、と存じますので、ひとつお試しアレ。
>lalakiさん
有名です。いつか観てみたいとは思いますが…。惹かれないんですよねえ。
気が向いたら、ということで、ひとつ。
『今宵・・・』見に行きたかったんですが、ちょっと家から遠い場所での上映だったのであきらめました。DVD待ちます。メリル・ストリープ、リンジーの歌が聴きたかったんですけど・・・そうですか、カントリー色強かったですか。誰でもわかりやすいポピュラージャズとかだったらまた作品の色合いも変わったのでしょうか?
>uniko@ニャンくんさん
これ、東京でも単館系で、上映劇場は少ないですからねえ…。
カントリー・ミュージックは、聴いていてイヤではないのですが、積極的に聴きたいほうではないので…。アメリカの演歌みたいな存在でしょうか。
メリル・ストリープ、天は二物を与えた、ということで、演技だけでなくて歌もグッド。「マンマ・ミーア」は楽しみです。
リンジーの歌は最後のほうで1曲だけです。初めて人前で歌う設定ですよ。
コメントありがとうございました。
私も作品によって、高所から眺める場合と、感動し切って“評”にならない場合の二通りがありますが、この場合は後者に当てはまりました。
その主な理由は、故人となられた監督と、私の年齢が比較的近接しているからだろうと思っています。
なお、一応、私のブログ文のURLをリンクさせて頂きました。
Re:グリーン・ディスティニー
ボーさんは、リアルタイムで劇場で観て居られるのですね。私はつい先日のTV放映で観たばかりです。
この差も、評の差異に可成り影響しているかも?。それにプラス“好み”の差異かもしれませんね。丁度、R・アルトマン作品の好みが異なるように。
でも何時もの如く、それはそれでいいですよね。
では、また!
>アスカパパさん
そうなんです。映画を観るときに冷静でいるか、感情が入ってしまうかで、変わりますよね。
私はのめり込む場合のほうが多いと思うのですが、アルトマン作品には、どこか、いまひとつ…。
HPの記事「グリーン・デスティニー」までコメントをいただき恐縮です。確かに「映画館で観る」のは、同じ映画でも、やはりテレビとは違う印象を受けることはあると思います。何が面白いかは個人の価値観ですから、その違いを知って、なんだかんだと楽しめばいいですよね!
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そうですね、私も、実は、カントリーがそんなに得意でないので、ちょっとノリノリ、というほどではなかったのですが、とても心地の良いライブ演奏で、なんとなしにノスタクジックなムードを楽しむことが出来たかな?という、印象でした^^*
とは言え、自分にとってもそれほど詳しくない(見ているのは5つか6つ)アルトマン監督の、最後の作品、ということを考えると、なんだか、ちょっと切ないような、そんな気持ちになれる、なかなかの良作でしたよネ。