「人生模様」(2回目) - 2007.04.30 Mon

マリリンが端役で出演した映画の中の1本。最近DVDが出て、5000円くらいするのだが、ビックカメラで1割引き、ポイント付きで購入。
短編小説の名手O・ヘンリーの作品5編が入ったオムニバス映画で、マリリンは第1話「警官と賛美歌」に、街の女の役で登場。
浮浪者のチャールズ・ロートンが、寒風を避けて楽に暮らしたいために刑務所に入ろうと、わざと警官に捕まる工夫をする。
そのために、警官が見ている前で、街で見かけたマリリンに、私の行きつけの店に行かんか、と声をかけて誘い、怪しまれようとするのだ。
ところがマリリン、おごってくれるなら一緒に行くわ、と答えたので、ロートン氏、こりゃ誤算、ということで彼女に謝る。
じつはお金を持っていないんだ、申し訳ない、魅力的で素敵なお嬢さん(charming and delightful young lady)、と。
マリリンは「私のこと、レディって呼んでくれた(He called me a lady.)」と感激して、くすんとハナをすすりあげる。
わずか1分半ほどの出演である。
だけど、これだけでもファンにとっては価値あり。
しかも、この作品、他の話も面白い。なんたって、O・ヘンリーの原作だ。「最後の一葉」「賢者の贈り物」などは読んだことがある方は多いだろう。その2つの話も入っている。どちらも、人間の性善説を信じたくなるような話で、よほど、ひねくれていない人なら、感動は必至。
第3話「最後の一葉」は、ジーン・ピータース〔「ナイアガラ」(1953年)でマリリンと共演〕、アン・バクスター〔「イヴの総て」(1950年)でマリリンと共演〕が姉妹役。泣きました。話を知っていても、感極まって嗚咽しそうになりました。
第5話「賢者の贈り物」は、先日観た「三人の妻への手紙」にも出ていたジーン・クレインが主演。夫婦がお互いを想う心に泣けます。これ以上ないような象徴的な出来事が起きるのだが、よく、こんな話を思いつくなあと感心してしまう。もしかしたら、実話なのかもしれない。ちなみに私は読書感想文で、この話について書いたことがある。
第2話「クラリオン・コール新聞」のリチャード・ウィドマーク〔「ノックは無用」(1952年)でマリリンと共演〕はチンピラの役で、けたたましい笑い声を上げ、女は引っぱたくし、粗野で横暴な振る舞いばかり。売り出した頃の、冷酷な悪党を演じたときのスタイルが見られて面白い。話のラストは気が利いている。
第4話「赤い酋長の身代金」は、子どもを誘拐して身代金を得ようとする2人組の話。ところが誘拐した子が怖がりもせず…というユーモア編。

左の画像はアメリカ版のDVD。顔写真は、上左から、フレッド・アレン、アン・バクスター、ジーン・クレイン、ファーリー・グレンジャー、中段左から、チャールズ・ロートン、オスカー・レヴァント、マリリン・モンロー、ジーン・ピータース、下段左から、グレゴリー・ラトフ、デイル・ロバートソン、デヴィッド・ウェイン、リチャード・ウィドマーク。
マリリンが出る第1話には、ロートンの浮浪者仲間の役でデヴィッド・ウェインも出ている。マリリンとは「結婚協奏曲」(1952年)、「百万長者と結婚する方法」(1953年)で共演しているが、このように、同じ時期の、同じ20世紀フォックスの映画だからというわけだろう、出演者や監督に同じ人が多く関わっていて、その結果、その人たちはマリリンとも多くの作品で関わってくることになる。
本作の監督を見れば、ヘンリー・ハサウェイは「ナイアガラ」(1953年)、ジーン・ネグレスコは「百万長者と結婚する方法」(1953年)、ハワード・ホークスは「モンキー・ビジネス」(1952年)、「紳士は金髪がお好き」(1953年)でマリリンの映画を監督しているわけだ。
また、なんと、作家のジョン・スタインベックが各話をつなぐナレーションで出演している(声だけではなく!)のも特筆すべきだろう。
とにかく原作はお墨付きなので、普通なら、間違っても駄作とは思われないはずの作品。
(4月22日)
O. HENRY'S FULL HOUSE
1952年 アメリカ作品
監督 ヘンリー・コスター、ヘンリー・ハサウェイ、ジーン・ネグレスコ、ハワード・ホークス、ヘンリー・キング
出演 チャールズ・ロートン、マリリン・モンロー、デヴィッド・ウェイン、リチャード・ウィドマーク、ジーン・ピータース、アン・バクスター、ジーン・クレイン
ナレーション ジョン・スタインベック
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人生模様@映画生活様、goo映画様、映像全般を楽しもう(ブログペットのグループ)
評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
やっぱり買っちゃいましたか!
映像版も佳作なのですね。
好きなんですよ、O・ヘンリの短編小説。だからといって、現在、リアル・タイムで読み耽っているというわけではないのですけれど、学生時代に読んで涙したり、私も読書感想文でお世話になったりしました。邦訳でしか読んだことはないのですけれど、それでも、文章と情景の美しさ・味わい深さ・展開の妙が伝わってきて、やられまくりで印象深くて。
映像化されていることは知っていたのですけれど、観たことはないのです。『最後の一葉』と『賢者の贈り物』は、小説を読んだときに当然泣きましたが、この映像版でも泣けるのですね……。そう思うと、興味が募ります。いつかこの映像作品でも接してみたくなりました。
>たけしさん、香ん乃さん
ほんの1分半でも印象的ですよね! ファンだから、かもしれないですけど。
絵の「あのスタイル」とは、どういうスタイルのことですか? 疑問は感じなかったんですけど…。
香ん乃さん、O・ヘンリー、お好きだったんですか! 学生時代は必須でおすすめされる作家のひとりでもありますね。本当に話が上手いです。
これは、ぜひ観てもらいたいですねえ。でも、発売元がマイナーなので、レンタルは大きな店でないと出てこないかも…。
お貸ししてもよろしいですよ!
きょう、オスカー
>ノーマ・ジーン
賢者っぽい誤算…奥が深いなあ。
絵のスタイルというのは、老画家が画廊に(って言葉遊びみたいだな)絵を売りにいくシーン。「言われた通り、リンゴと梨とバナナを器に入れて描いたぞ。これなら気に入る。」と言って見せた絵が、見事な抽象画、というか、絵の具を飛び散らせただけの絵。時代背景としては具象画こそが芸術とされていた頃のはず。そして、画廊主のコメントが「こんな絵は1950年代にならなきゃ認められない。まだ早すぎるから買えない。」って、未来を予測しているんですよ!そこにちょっと芸術への皮肉を感じて楽しんでいたわけです。私も絵を描くので、ちょっと気になっただけなんですけどね。
>たけしさん
O・ヘンリーが小説を書いていたのは1900年あたりのようですから、実際に「1950年代にならなきゃ…」と書かれていたなら、O・ヘンリーが予測したわけですね。
映画での脚色のような気はしますが、それは読み直してみないと分からない…。
あの2人のシーンは、結局、絵を買ったりして、面白いやり取りでしたね!
最近、
先日、サライ3・15号をパラパラとめくっていたら「マリリン」の文字が。読んでみると大竹省二さんというカメラマンのインタビュー記事で、この方マリリンがディマジオと来日した際、記者会見の最前列で写真を撮ろうとしたところ、後ろからおされて結局撮れず仕舞い。ダメもとでマリリンに写真撮影をお願いしたら翌日10時の約束をしてくれたのだそうです。
10分間の撮影後、マリリンは彼に対し「あなたは一生懸命に私を撮ってくれた。その情熱に深く感謝します。」といってくれたのだそうです。彼女の繊細な心遣いが感じられて嬉しくなりました。残念ながらその時撮った写真は雑誌にでていなかったけれど。
>紅ナナカマドさん
さっそく、その雑誌、見られるように手配します。
大竹省二という方の名前、聞いたことありますね。
マリリンの思いやりある言葉も素晴らしい! そういう人なんですよお! ううう…。(感涙)
お宝情報、ありがとうございました!
また、何かありましたら、よろしくお願いしますっっ!
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他の話も当然ながら面白いものですし、マリリンの見れる文芸作品というのも珍しいですよね。マリリンの最後のすすり泣くあの顔が可愛くて…
それから気になったのが、「最後の一葉」の、画家の描いた絵。あの時代にあのスタイルは普通無いですよね。なんだか20世紀の絵画への皮肉も入っているようで、なんとなく面白かったです。