「毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト」 - 2007.05.27 Sun
ニコールなのに、なんで、こんなに縮小(?)公開?
それでも行きましたとも。
実在した写真家のお話、という知識だけしかない状態で。
まずカメラは、バスに乗って撮影取材に出かけているらしいダイアン(ニコール)を映す。ときは1958年。
彼女が向かったのは、ヌーディストのコミュニティ。
対応に出た中年のカップルもオールヌード。撮影するなら、あなたも脱いでください、といわれるダイアン。
ダイアンが脱ぐ前に、画面は切り替わり時間をさかのぼるが、しょっぱなからヌードというので、日本で18歳未満お断り(アメリカは17歳以下は保護者同伴のR指定)&単館系で上映映画館が少ない理由の一端が分かった。
映画の始めにヌードで目をひくのが、狙ってやったことなら、少し、あざといとも思うが。
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ダイアン・アーバン(映画では正しくは「ディアン」と言っていた)は、1923年生まれで、写真家の夫とともにファッション雑誌や広告の分野で活躍、やがて彼女独自の視点をもった写真を撮り始める。
「わたしが最初にたくさん撮ったのはフリークスだった」という言葉もあるように、特徴的なのは、フリークス(異形、奇形)の写真のようだ。
1969年に離婚、1971年に自殺。
映画は、彼女の伝記ではなく、オマージュを捧げたものだと、まず断っている。つまり彼女が、いかにして異形の写真家へと生まれ変わったのか、その瞬間を、多くのイマジネーションとともに描いている。
夫のアシスタント的な人生を送っていたダイアンは、アパートの上階に越してきたライオネル(ロバート・ダウニー・Jr)の、かぶり物をした異様な姿を見かけ、興味をひかれる。
それが、彼女の中に息づいていた、奇妙なものへの興味を呼び覚ます、きっかけだった…。
写真を撮りたいという理由で、上階のライオネルの部屋に足しげく通うようになるダイアン。
ライオネルは、ダイアンの心の奥の欲望を見抜いているかのように、刺激的な言葉をかけたり、2人でお風呂に入ったり。不思議な、しかし、深い交流が展開していく。
やがてフリークスたちがアーバン家に遊びにくるようにもなり、下の娘は屈託なく付き合うが、夫は、いい気持ちはしない。ライオネルに対する嫉妬もある。
ダイアンが天井のネジ止めをはずして階段を下ろし、自分の家の部屋とライオネルの家の部屋をつなげるところは、まるでマリリンの「七年目の浮気」の一場面。
下りてきたのはマリリンではなく、フリークスたちだったが。
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ダイアンとライオネルの触れ合いが印象的なラブストーリーだった。
ニコールは相変わらず、きれいです。後ろ姿のヌードまでは見せてくれます。スリムだけど、おなかあたりとか、意外に「ふっくら感」もありそうで、熟れてるなあ…。。。(あとで考えたけど、そのシーンだけボディ・ダブル〔別人〕という可能性は…あったかなあ?)
スティーヴン・シャインバーグは「セクレタリー」(2002年)の監督。私は「セクレタリー」は観ていないのだが、秘書が尻をたたかれるようなビザール系(奇妙な、とっぴな、変わってる)らしいから、この「毛皮のエロス」とも奇妙な題材を扱う傾向としては似ているのかもしれない。
また、シャインバーグ監督のおじさんが、ダイアンの友人だったという。彼にはダイアンの映画を作る縁があったのかも?
ニコールの女優魂は素晴らしい。
大スターなのに(だから?)、映画のヒットは度外視して、こういう芸術作品系を選んで出演することが多いのも、いいところ。
自分のやりたい役をやる。そういう状況にある彼女は幸せなのだろうし、それが演技者としての、ひとつのあり方に違いない。
これからも応援します。
…あんな毛皮に包まれたら、どんな気持ちになることか。
(5月26日)
FUR : AN IMAGINARY PORTRAIT OF DIANE ARBUS
2006年 アメリカ作品
監督 スティーヴン・シャインバーグ
出演 ニコール・キッドマン、ロバート・ダウニー・Jr、タイ・バーレル、エミー・クラーク、ジュヌヴィエーヴ・マッカーシー
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旧作をねらえ!in TSUTAYA わさぴょんの映画鑑賞日記様
評価☆☆☆(3点。満点は5点)
● COMMENT ●
ニコールって
TB有難うございます。
素晴らしいです。
もちろん押しも押されぬ大女優ですが、意外と規模の小さい作品にも出てますね。
「記憶の棘」も日比谷シャンテシネの単館上映だったと思いますが、良い作品でした。
「バースデー・ガール」でも結構凄い役だったです。晩餐・カッセルも共演しているのに
新宿ジョイシネマ3のみだった記憶があります。
内容もヘヴィだったな。。。
個人的に彼女の映像で一番好きなのは「ステップフォード・ワイフ」の予告編ですが(笑)
http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail/tymv/id240029/
>紅玉さん、yes90125さん
この映画は、フリークスを被写体にするようになる経緯に焦点をしぼっていますし、映画自体、伝記ではなくオマージュといっていることからも、実際とは違う面はあると思います。
ダウニーJr.は…じつは、素顔がなかなか出てこない役なのですよ。やりたくない俳優が多いかも。
yes90125さん、いらっしゃいませ。ありがとうございます。
挙げておられるニコールの作品は、すべて映画館で観ていますが、小品といえる映画も多いですね。
いろいろなジャンルの作品に出ているのも、観るほうとしては興味深くて楽しめたりします。
どうぞ、また遊びに来てください!
アーバスの写真集
いやいや、かなり刺激的な写真ばかりですねぇ。
この人の半生を描く映画だとしたら、いくら主演がニコールでも
やっぱり単館ロードショーになっちゃうかなぁ(^~^;。
>kiyotayokiさん
さすがプロファイラーですねー。
私はダイアンさんを調べる途中で偶然見た写真は見てますが。
じつは美しいラブストーリーなんですけどねえ。
ヌードとセクシャルな内容や言葉によって、R指定、日本は18禁というのも、もしかして映画館には敬遠されちゃう要素になりえますね。
こちらにも~♪
ただ、二ヵ月後にDVDが出ると聞いて、ちょっと迷ってます・・・。
ニコール好きなボーさんの点数が低いのも、少し不安材料なんですよね。うーん、どうしましょ。
ボーさんは、これ、おススメですか??
>とらねこさん♪
私の考えは、映画館で観るのとDVD(テレビ)で見るのは同じではない、ということです。画面、音、雰囲気、気分などで、印象は違うものではないかと。
私なら、迷ったら、できるだけ観に行きます。
変わった恋愛ドラマなので、ツボにハマれば来ると思いますが、私には、それほどグッと来なかったので。でも、採点は気にしないでよいですよ。
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>○○さん
「あー、そうそう!」な内容のレビューです~♪
「不思議で、深い交流」ですよね~
体だけつながって終わりではなく、もっと心の深いところでの交流。
でかなり後年になってから離婚したんですね。
やっぱりというか、意外と遅かったというか。
そして2年後に自殺なんて・・・
「セクレタリー」面白そう^^;見てみたい!
剃り剃り、とか…。(それかい! 笑)
これが伝記映画として出されたら、本人、気にいるのかな…。映画は、オマージュだとして、ちゃんと逃げましたけど。
「セクレタリー」は、私もぜひ観たいです。公開時も気になってたんですよ。
こんばんは~
ニコールはこういう作品に出てくれるところが、またいいんですよね。
ニコールって、大人の女性なのに、少女のような面影もあって、こういう役が似合っているんですよね。
>とらねこさん
上映している劇場が少なかったですが、ニコールは見逃せないと思って行きましたよー。
ニコールはいいですよね、お金目当てで映画に出ない(出なくてもすむ)ので、好きなものに出る感じで。しかも、ちゃんと役柄を、こなしてるし。
思い返すと、じつにユニークな映画でした!
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この作品も、一体どういう内容なんだろうと気になっていました。
実際のダイアン・アーバンさんは、この映画で描かれるほどフリークス写真に傾倒していたわけではない、という記事をチラッと見ましたが、本当のところはどうだったのでしょうね?
ロバート・ダウニーJr、完全復活したのかな?頑張ってほしいです。