「Q&A」 恩田陸 - 2007.07.16 Mon

それでは、これからあなたに幾つかの質問をします。まず、この本を読まれた動機をお聞かせいただけますか?
「はい、恩田陸さんには以前から興味を持っていて、読んでみたいと思っていました。ネット上のお友達の紅玉さんがこの「Q&A」の本の記事を書いていたのですが、図書館に行ったときに偶然見つけて、借りて読んだのです」
読んでみて、感想はどうでしたか?
「ちょうど、いま聞かれているように、質問と答えなどの形、つまり、いくつかの対話形式で書かれているので、読みやすいと思いました。会話文というのは、わかりやすいですからね。すぐに話に引きこまれました。郊外型ショッピングセンターでの事故は恐ろしかったです。はっきりした原因がわからずに人々が逃げまどいパニックになり死者がでてしまう。ありえないことではないことに恐怖しました」
物語全体の展開については、どう思われます?
「事故をきっかけとして、その関係者たちのさまざまな人生を取り上げていて、現代の世相というか病巣というか、それが浮き彫りにされていく構造が面白いと思います。浮気や、子どもに対するセクハラ、精神の崩壊、生き残った子を教祖にする話、事故現場の現地ツアー、陰謀抹殺、果ては輪廻のようなものまであって、バラエティにとんでいます。ただ、テレビドラマ作家の話は、全体において、どういった意味があるのか、よくわかりませんでした」
あなたが最も印象に残ったところは?
「まず、混雑した場所でパニックが起きるのが、いかに簡単なことか。これは恐ろしいことです。事故関係者の話のほうでは、家に帰るのが怖いという消防隊員の話。精神を病むと、あんなことになってしまう可能性もあるんだ、と最後は怖くて悲しかったです。事故の被害者の影が揺れたり薄くなったり、というのも怖かったですね。それと、なるほどと思ったのが、高い建物を作れば墜落や倒壊が起こり、船を作れば沈没があり、飛行機を作れば墜落がある。都市化や機械化によって新しい種類の事故や災害が生まれている。つまり、人間が、みずから、死ぬための方法を新しく生みだしていること。これは本当にそうだなと思いました。便利さと引き換えに危険も生んでいるわけですよね」
また恩田さんの本を読みたいと思われますか?
「ええ、この話は、とにかく怖かったですが面白くもありました。他にどんなものを書かれているのか、また、いずれ読んでみたいと思います。ところで、この聞き取り調査は極秘とおっしゃいましたが、どうしても私には、そうは思えません。なんだか、いましもネット上で誰かに知られているような気がするのですが…」
(7月12日読了)
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● COMMENT ●
はじめまして
すごいすごい!
しかも読解力が私より数倍上だわ。さすがです。
事故そのものの怖さとか陰謀なのか?ということよりも、人間ってこんなに簡単に壊れてしまうんだな、病んじゃうんだな、という部分がゾッとしますよね。
しかも、事故が起こる前からとっくに病んでるし(--;
TBなんですが、エキサイトは未だに完全に復活してないみたいなんです、すみません。
>うなぎさん、紅玉さん
コメントありがとうございます。
タクシー運転手のエピソードも怖いですよね。口は災いのもと。
彼の場合、どれだけ危険なことをしているかを認識できていないし、それを追い詰めていく組織力の怖さもあります。
自分が秘密を知っている、というのを自慢したくなるのが人間なんでしょうかねえ。
紅玉さん、いやー、尊敬したあとに照れて(笑)をつけなくても、よろしゅうござんすよ。
会話形式のレビューは、映画感想でも、よくやってるので、難しいことはありませんし、誰でもできますよ。
「Q&A」の他の感想をいくつか見ましたが、逆に、なんで同じ形で遊ばないんだろうと思いました。
読んでいて、書かれているのと同じようなことが実際に起きているんじゃないか、と思ってしまうのが怖いですね。
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ずいぶん前に読んだことを思い出したのでコメントしました。
一番印象に残ったのはタクシー運転手のエピソードです。
言ってはいけないと言われたのに、人に言ってしまうのはどうしてなんでしょうね。
「秘密の話なんだけど・・」と前置きされて聞かされた話を別の友人から聞いたことを思い出しました。