「ブラック・スネーク・モーン」 - 2007.09.08 Sat

女を鎖でつないで、家に監禁?
主演は、サミュジャク(サミュエル・L・ジャクソン)と、クリスティーナ・リッチ?(クリリチとは言いません!)
面白そう!
そんな情報のみで、ほいほいと観に行く私であった。
…すっごく良かった!
これ、心の「闇」や「きず」(「傷」「瑕」とするとイメージが固まるので、平がなにしておく)といったものを癒す話だったんだね。私は何度も涙してしまった。
クリスティーナ・リッチが断然良い!
申し訳ないのだが彼女、ふだん見ると可愛いんだか可愛くないんだか、よく分からない顔だと思っていた。
しかし、この映画では、ものすご~く魅力的なのだ。
殴られて顔に傷やアザがあるという、女優としては挑戦的であろう演技も、個性的な彼女ならではの輝きに変わる。
かなり長い間、半Tシャツとパンティだけ、という姿なのも、魅惑的だ。その姿なのには、きちんとした理由があるし、セックス依存症という役柄をも印象づけている。
牧師と話をする場面がある。
たった1回、悔い改めたら、それで救われるの、そんな簡単なことでいいの? などと彼女が牧師に聞いたりする。
その会話をしているときに、彼女が、ふと、涙をこぼすんだよね。
ハッとした。
彼女の心の「闇」や「きず」の深さを知らされた思いで。
それは一例だけど、とにかく、クリスティーナ、素晴らしすぎ!
母親に感情をぶつける場面、サミュジャクの歌を聴きながら彼のひざに抱きつく一連の場面…その他、まあ、あらゆる場面においてですね…。
すごいわ、この女優は。
ちっちゃくて、細くて、サミュジャクと並ぶと、子どもみたいなのに、その存在感ったらない。
「アダムス・ファミリー」(1991年)で、変わった子役だなーと思っていたのが、嘘のような。
ラザラス(サミュジャク)には、こともあろうに妻を弟に寝取られて、独りになった、という心の「きず」が。
そんなとき、殴られて道端に捨てられた女レイ(クリスティーナ・リッチ)と出会い、彼女のセックス依存症を治してやろうとするうちに、彼自身も生きがいを見出し、また、癒されていくわけだ。

全編に流れるブルースが、これまた、いいんです。
サミュジャクがギターを持って弾き語るのが、いい味。
私は、とくにブルースを聴くこともないし、好きでもないと思っていたけど、ジンと染みてくるのだ、聴いてると。いいです。ブルースがこんなにいいと思えるなんて、我ながら奇跡みたいだ。
サミュジャク、かなり練習もしたらしい。ラザラスは以前、バーでブルースをやっていた、という設定だが、ホントにプロみたいなサミュジャク。
映画俳優って、役柄によって何かを練習しなくちゃいけない場合があると、いろんな技術がそれなりに身について、いいよね。
ところで、公式HPを見ていて、マリリン関連の話を発見したので、ここに挙げさせていただきます。
撮影監督アメリア・ヴィンセントの話。
…長椅子に寝そべる女性だったり、ふたりが引っ張り合う鎖やギターをフレームに収めるため、ワイドスクリーンを採用することは必然の結果だったと言えるでしょう。
参考にしたのは西部劇です。中でも「荒馬と女」(1961年)や「捜索者」(1956年)は特に念入りに研究しました。…
マリリン主演の「荒馬と女」には、クラーク・ゲーブルが馬にロープをかけて格闘する場面がある。…鎖で引っ張り合うのと絵的には似ているかな。
ちなみに、この映画のタイトルで、東京コミックショーのヘビ使いのネタでのセリフ「レッド・スネーク・カモーン!」を思い出す人もいるでしょうね…。なんて似てるんだ…。
ブラック・スネークくらいは意味分かるけど、「モーン」は普通分からないでしょ、日本人には。意味が分からない邦題が、またひとつ誕生。
moanは「うめき」。黒いヘビがうめくんです。これは、サミュジャクが歌うなかの歌詞に出てくる。やはり、心の「きず」なのでしょうね。
観ているうちに、彼女の依存症が治ればいいと、本当に心から願っていた。
希望の見える、前向きなラストも文句なし!
見た目は、変わった設定で興味を引きながらも、中身は、ブルースに彩(いろど)られながら、人と人との絆によって心の「闇」や「きず」を癒そうとする物語。ただし、映画でも言っていたように、立ち直るのは最終的には本人しだい、なのだろう。

インパクトのある変わった映画って、基本的に好きなほうだけど、この映画も、そのユニークさも含めて、とても好きな作品だ。
(9月8日)
BLACK SNAKE MOAN
2006年 アメリカ作品
脚本・監督 クレイグ・ブリュワー
出演 クリスティーナ・リッチ、サミュエル・L・ジャクソン、ジャスティン・ティンバーレイク
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評価☆☆☆☆(4点。満点は5点)
● COMMENT ●
クリスティーナ!
>香ん乃さん
ちょうどパソコンの前に座ってたんですね?
私も思い出すと泣けてきたりしてます。
俳優たるもの、かくあるべし、の2人でした。
クリスティーナには参りました。降参です。素晴らしい。他の作品であまり記憶にないのですが、認識を改めます。
鎖でつなぐ、というインパクトで観客を呼ぶ作戦(?)に、やすやすと私は引っ掛かりながら、その深い内容で感動させられました。感謝感謝。
私も、今年の映画の上位、間違いなしです。
ふふーん^^
はい、まさに座ってました(笑)。とても気に入った作品だったので、大切な映画仲間のBJさんのお気に召したともわかって、すごくすごく嬉しくなってしまいましたvv
さて、9月を迎えて、今年も後半に突入ですね。私にとっては2007年中に劇場や試写で観る映画で、この作品の上位に行くものが今後出てくるのかどうか、楽しみやら嬉しい不安なやら、といった感じです(^^;) 最後にもう一度、クリスティーナばんざい! です★
>香ん乃さん!
ありがとうございます、大切なんて、もったいない言葉を。私も同じく香ん乃さんを大切に思ってますよ。
期待以上に良かった映画って、特別に、うれしいですね。
あと3ヵ月、どんな映画に出会えるか。お互い、楽しみましょう!
これ、不思議な映画でしたね~^^
好みは分かれるかもだけど、わたしもなかなか好きです。
ブルースが良かったし、ただの娼婦みたいなエッチ好きな女っていうんじゃなく孤独と
過去の忌まわしい記憶から病気、、、、
クリスティナリッチだからこそ良かったんですよね、
『荒馬と女』も好きです☆
明日からトロント映画祭に行ってきます、
レポするので、またあそびに来て下さいね~☆
>migさん
設定が面白いですね。確かに一般的とはいえないですけど、いいんです、映画だし。映画ならでは、ということもありますよね。
クリスティーナは、ハマってました。役柄になりきってるから、すごいです。
「荒馬と女」にクリスティーナが出演したら…ゲーブルが「君は不思議な女だ」と言いそう。
トロント映画祭! いいですね! 楽しんできてください! レポ、拝見に伺いますね。
クリスティーナ・リッチのアクがいい方向で出ていそうでいいなあ。
>まおさん
でも、あまり期待しないでくださいよ。期待すると、はずしたときにダメージが大きいので。
あ、でも、DVD待ち…ですか。早く観てほしいなー。
こんばんは
すごくお気にいりになったようですね☆
「レッドスネイクカモーン」は似てますよね~。
でも、そのせいで覚えやすかったりして(笑)
クリスティーナ・リッチは、すごく良かったですよね。
バカ映画かと思ったら、いい意味で裏切られました。
>とらねこさん
とらねこさんは、全体としては普通に良かったくらいですか?
私はツボに、はまりました~。
女性を鎖でつないで…なんて、ヘンな映画かと思いますよね。先入観は禁物だと改めて思いました!
こんばんわ。
評判は聞いていましたが、こうもしっくりと終ってくれるとは、といい意味で予想を裏切ってくれた映画でした。『ハッスル&フロウ』も静かでしたがいい映画でしたもんね。
確かに俳優さんはその都度技術が身についていいですよね。私もソレ、よく思います。
それではまたお邪魔しますね。
>minoriさん
コメントありがとうございます。
ユニークで印象的な映画でした。主演2人とも素晴らしくて、たぶん今年のベスト3には入りますね。(まだ今年は2ヵ月ありますから。)
出会えてよかった!という作品です。
はい、また来てください! お待ちしてます!
クリスティーナ・リッチの存在感。スゴイと思います。
でも私は今作では泣けなかったな~
最後も「それで治っちゃったの???」と
ちょっと疑問。
すぐ再発しそう、なんて思ったりして。
>わさぴょんさん
シチュエーションは普通じゃないですけど。
私は、すぐ泣くので、比べないでも大丈夫です!
再発するかどうかは、あまり考えませんでしたが、この先は希望があると思えました。そのへんで、いいんじゃないでしょうか。
こんにちは!
(何位だったか忘れたけど・・・1~3位くらいかな)
だけど、私にはちょっと合わなかったかなあ。。。
見ず知らずのオジサンに身体を洗ってもらったりして、
そんなのキモイとか思っちゃって~~
でも、クリスティーナ・リッチ、あの細さが魅力的だったし、
熱演にもびっくりしました!
ブルースがベースになっているのも渋くて良かったです♪
>YANさん
ええ、1位ですよん。
その件はコメントとリンクしてきましたので。
知らないオジサンに体を…なるほど、そう思っちゃうとダメかもしれないですね。
そんなのを通り越した、つながり、と…思えません…か?
ユニークな映画でしたよねー。
1位にしていたんですね1
ラストがあまりにうまくいきすぎてちょっと納得できなかったけれど、レイの境遇を考えると、あの方法が一番だったかもしれませんね。
ラザラスの歌うブルースが、もちろんわたしも全然知らないだけれど、とても心に沁みるものでした。
2人なら乗り越えていけるという希望もよかったです。
>ミス・マープルさん
そうなんです、1位。ずいぶん前のことなので、ほぼ忘れているのですが!
ラストまで忘れていて、申し訳ないです。(おいっ)
でも、自分が選んだベストテンは、必ず、うそいつわりないものなので、そのときのマイベストだと自信はあります。
そのうち、見てみようかな~。
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いい映画でしたよねぇ、この作品。私もなんの予備知識もないままに観たのですが、終わった頃にはすっかり、そのストーリィと、サミュエルやクリスティーナの演技の素晴らしさにびっくりしてしまっていました。特にクリスティーナ! なんて味わい深い女優さんなんでしょうか。ちっちゃくて地味なんだけど、この映画のことを思い起こすと、彼女ばっかりが脳裏によぎってくるんですね。私はもともと好きな女優さんだったんですけど、この映画で不動になった思いがします。この映画を観られてよかった。私には、今年の拾い物です(*^^*)